「レースは人生の最高の舞台であり、生きている証」ーポルシェレーサーズfile.1 T.Tさん

インタビュー

皆さんこんにちは。「ポルシェがわが家にやってきた」ブログ管理人のMinaです。この度、ポルシェカレラカップジェントルマンクラスで優勝経験を持つT.Tさんに「レースの魅力」「ポルシェの魅力」について語っていただきました。「これをきっかけにレーサーの輪が広がるといいなぁ」と思いつつ…ぜひ、御覧ください。

Chapter1.カレラカップと出逢って

1-1:耐久レースで優勝

早速ですが、つい先日「耐久レース」で優勝されたとか?

そうなんです。先日開催された「ピレリ スーパー耐久シリーズ2018第5戦「もてぎスーパー耐久レース 5 Hours Race」にて、ST-Xという上位クラスカテゴリーのGT-Rで優勝しました。プロのドライバー2名と、僕のようなジェントルマンドライバーの計3名(もしくは4名)で5時間レースをするのですが、僕はそのうち1時間15分を走らせて頂きました。


*画像出典:Super Taikyu NEXAUS《フォトギャラリー・パート2》2018/9/22~23 第5戦 もてぎスーパー耐久 5Hours Race

そのような場に参加のお声がかかるなんて、すごい!

いつもレギュラーで乗っているジェントルマンドライバーの方が、その時は海外の別のレースに出ることになり、急遽もてぎラウンドに出られなくなったんです。監督もチームも「今回は出場を諦めようか」と考えていたそうなのですが、僕がポルシェカレラカップのレース経験があり、それなりに実績を出していることを知っていた監督が「今回、出てみないか?」と声をかけてくださいました。(このレース規定は、必ず1名のジェントルマンドライバーを含めなければなりません)

とはいえ、レーシングカーは車ごとに特性が違いますし、ましてや日産GT-R(GT3規定のレーシングカー)は一度も乗った経験もなくて、練習なしに簡単に乗りこなせるような車ではありません。それなのに、急なことで全く練習の時間が取れず、なんとか1日だけ短期集中で練習走行し、ほぼぶっつけ本番で当日を迎えました。茂木のコース自体は何度も走ったことはありましたが、GT-Rで完全なドライ走行したのは本番が初めてという…(笑)

僕はこのレースに関しては他のジェントルマンドライバーより経験が浅いので、チームメンバーとも「完走すら難しいかもしれないから、完走できたら万々歳だね」といった話をしていました。ところが蓋を開けてみるとなんと優勝してしまったので、チームも周囲も本当に驚いていましたね。

今回の勝利のポイントは?

それは、監督、エンジニア、メンバーのプロドライバー、チームスタッフみんなの「総合力」だと思います。またいい意味でプレッシャーが無く「勝てなくても仕方がないけど、楽しんで走ってください!」と監督に言われ、それが逆に開きなおれて、リラックスして集中できたのかもしれません。

1-2:バイクレースから車レースへ

昔から車が好きだったの?

10代の頃からバイクが好きで、当時は峠やワインディングロードをよく走っていました。サーキットで開催される二輪オートバイレースにもたまに出場していましたね。カレラカップに初参戦した当時、「全然緊張してないね」「なんでそんなリラックスしてるの?」とよく言われましたが、僕がサーキットそのものに臆することが無いのは、若い頃にバイクレースを少し経験していたからもしれません。

とはいえ、10代の頃に参加していたバイクレースでその後食べていくつもりはなかったので、しばらくその世界からは遠ざかっていました。

ポルシェとの出会いは?

スーパーカー世代なので、“ポルシェ”というブランドはもちろん知ってました。今から9年ほど前、集中していた仕事もひと段落し、ふと「人生、一度はポルシェに乗ってみようかな」と思い、中古の996カレラを購入しました。その後「せっかくポルシェを買ったんだから、サーキットで飛ばしてみたい!」と思って、富士スピードウェイで行われた走行会に参加し走ってみたところ、これがめちゃくちゃ楽しくて。その後も引き続きサーキットで走るようになりました。

ところが、ノーマルのカレラでサーキットを走っていると、毎回横から上位モデルのGT3などにサーッと追い抜かれるんですよ。なんか悔しくて「だったら俺もGT3だ!」と、GT3を買って走行するようになり、さらに速く走れるように改造したりして、草レースにも出始めたのですが、今度はまた上位クラスのカップカーに抜かれるわけです。まあ純粋なレーシングカーなので仕方ないのですが…(笑)

で、また「ちくしょー!!」って。

一方で周囲には「GT3をそれだけ改造して金かけてりゃ、速いに決まってるよ」という人もいて、その言葉を聞いて僕の負けず嫌いにさらに火がつきました。ただこれについては、僕の妻のほうが悔しがって、「もう市販車改造なんてやめて、イコールコンディションのカップカー(レーシングカー)で走りなよ!」と僕に言い放ったんです。彼女、僕よりずっと負けず嫌いなんで(笑)

その後、いつかはカレラカップに出たい!と考えてはいたものの、その前に少し下のカテゴリーから参戦し徐々にステップアップするつもりでした。ただ当時カレラカップに出場していた知り合いから「そんなこと言わず、すぐにカレラカップに出ればいいよ!」と言われ、2012年に初めて出場し、以来参戦し続けています。気づけば今では、現参加者の中で一番の年長者になってしまいました。(笑)

1-3:カレラカップ参戦

初出場のカレラカップレースのこと、覚えてる?

はい、よ〜く覚えています。なんと岡山国際サーキットの開幕戦、初出場で、ジェントルマンクラス3位になって表彰台に乗ってしまったんです。

「初めて参加したレースで表彰台に乗っちゃった!」って、自分でも驚きました(笑)

当時は、カップカーに乗って普通に走れても、全く乗りこなせてはいませんでした。なんせ本格的なレーシングカーでレースに出るのは初めてですからね。で、レース当日。天候はあいにくの雨で、サーキットは「ウェット宣言」していたので、多くのチームがレインタイヤを履いていました。ところが、開始直前に晴れてきたんです。

どのチームも「どちらのタイヤで行くか」の決断を迫られましたが、まだ路面も濡れていたので、ほぼ全てのチームがレインタイヤを装着していました。
ただ、当時 僕をサポートしてくれていたプロの方は「今回は初めてのレース。完走できればOK、真ん中の順位までいけたら御の字。どうせ負けるなら、一か八か、ドライタイヤで勝負してみよう!」と言ったんです。無謀にもね(笑)

その時、僕らのチームを含めドライを選んだのは3台のみで、あとは全員レインタイヤでしたが、僕はフォーメーションラップでスピンしてしまい、最後尾からのスタートでした。

チームのみんなも半ば諦めていたと思うのですが、5,6ラップあたりから、空がどんどん晴れてきたんです。すると路面がみるみるうちに乾きはじめて…その後は、何台抜いたか分からないほど抜きまくり、15周終えて、クラス3位でフィニッシュ。
以来毎年レースに出続けていますが、シリーズクラスランキング3位以下になったことはありません。まぁ、運も良いんだと思います。
(2018、今シーズン初めてクラス4位となってしまいました…涙)

おぉ…鳥肌がたちました…!もし逆に初戦で負けてたら、レースは続けてなかった?

いえ、負けず嫌いな性格なので、その時負けていたとしても続けていたでしょうね。レースって、道具と経験のスポーツなんですよ。野球やサッカーのように「同じボール」でプレイするのではなく、自分自身の感覚やチームの戦略にそったセッティングによって、マシンの状態は全く変化します。あとは、ドライバーがそれをきちんと操れればいいわけです。

もちろん若い人は身体能力も高く、動体視力もありますが、それが勝つための全ての要素ではありません。僕はいつも「レースのスタートからチェッカーまでは人生の縮図」だと思っているんですね。情熱は大事だけど、それだけでは勝てない。セルフコントロールや戦略も必要です。一か八かのかけに出る時もあれば、虎視眈々とレース展開をすることもある。

基本的にレースをやる人たちは負けず嫌いですが、その人の性格によってレースの戦略は様々なので、そんな人間同士が駆け引きしながら戦うのはとても面白いですね。

1-4:レースの醍醐味

まさにガチンコ勝負な世界…

ただサーキットレースはジェントルマンなスポーツなので、みんな同じトラック上で競う相手には敬意を持って接しています。コーナーで強引に仕掛けて進入したりすると、大事故になり兼ねませんし、後方から凄いペースで追い上げられて「お、あいつ来てるな」と思ったら必要以上にブロックせずに譲ることもあります。

逆にお互いをよく知るドライバーと横に並んだ時は、「お前、下がれよ!」「お前こそ譲れよ!」って手で合図しあうこともあります。レース真っ最中ですよ(笑)

観客の方からは「ただ1位を目指して15周走っているだけ」のように見えると思いますが、見えないところでドライバー同士のやり取りが結構あるんですよね。

だから長いことやっていると「あいつの性格からしたら、今こう出てくるはずだ」というように、ライバルの動きが感覚でわかってくるので、その上で競い合うのも本当に面白いですよ。

そういった駆け引きもレースの醍醐味?

そうですね。タイムを競うのも楽しいですが、レースにはさらにその上の楽しさがあります。セルフコントロール、情熱と冷静さ、絶対に負けないという強い気持ち、駆け引き…それらを踏まえた上で、あらゆる局面で瞬時に判断していかなければならない。「判断し、決断し、行動し、結果を出す」という意味で、まさにレースは人生の縮図そのものです。

また、レース仲間から学べることは本当に果てしない。レース、人間として、仕事においても、尊敬できる先輩や仲間の中に身をおくことが、自分が仕事を頑張るモチベーションに繋がっていると思います。

1-5:レース車輌の買い替えについて

大怪我とかは無いの?

2014年に大クラッシュしました。その年は前半戦には出ておらず、宮城県の菅生サーキットで開催されたレースが初参戦でした。レースウィークに入った日の練習走行、その日の天候は雨だったんですね。でも僕は「雨だから…」と特に気にすることはなく「雨だろうがなんだろうが、状況関係なくアクセル踏めるやつが勝つだろ」という気持ちで常に走るので、その日もそんな気持ちで臨みました。

練習走行とはいえ予選をイメージしながら走り、前半のコーナーはタイムも縮め調子良かったのですが・・・中盤、裏のストレートから、雨に加え薄ら霧もかかっている中、前方に2台が走っているのが見えました。その2台は理想的なレコードライン上を走っていたので「彼らもアタック走行してるんだな・・・」と思ったのですが、実際は僕が思っていたより全然遅いスピードで走っていました。
気づいてフルブレーキしたときには既に遅くて、前の2台を絡めた多重クラッシュに。

後から確認された話では、僕は計測ポイントで204km、前の2台は僕のスピードの約半分の100km弱で走っていたとのことでした…。
未だにその時の怪我の傷が痛む時があります。

では、しばらくはレースに出ずに?

そんなわけありませんよ(笑)その約1ヶ月後には鈴鹿サーキットラウンドのレース開催日だったので、そのためにはボディを新調するか、修理するかしかないと。ただ修理するにもかなりお金がかかるので、結局ボディを新しく購入したところ、1週間もしないうちに空輸で手元に届きました。空輸は速いですね!(笑)
ただ、空輸代もボディ代も高いので、かなり高く付きましたけど。

そういえばレース車輌はどんなタイミングで買い換えるの?

レースに出続けるには、ポルシェの規定に沿って、マシンも数年ごとにモデルチェンジしていかないといけません。ですから、まあまあな頻度で買い替えする必要があります。
ただ「公式レースには出ないけれど、サーキット走行だけを楽しむためにレーシングカーが欲しい」という人も結構いるんですよ。
ですから、もちろん車の程度にもよりますが、丁寧に乗っていれば、ポルシェカップカーのリセールは案外良い方だと思います。ポルシェというバリューもありますしね。

→【次のページへ】ポルシェの考え方のベースにあるものとは、僕にとってレースとは?

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