BMW

BMW3シリーズ(F30)ファーストインプレッション

320iの夫の感想

BMW320iの納車からしばらくたち、ようやく夫にある程度乗ってもらうことができたので、320iのファーストインプレッションのレポートを書いてもらった。夫は以前からBMWが好きで思い入れがあるようなので、320iに乗ってどんなふうに感じたのか、私自身もとても興味深く読ませてもらった。

320iの納車直後にGT3が来たため、十分に乗れていなかったが、今回、約200kmほど走ったので、その中で感じた感想をレビューしてみたいと思う。

とのことで、以下、夫のレポートをご覧ください。

BMWとの出会い

今から約13~14年くらい前。
当時、起業したての私はお金が無く、その時に所有していたAUDI TT 1.8T(8N)のローン返済が苦しくなったため、泣く泣く手放した。それでもクルマだけは何としてでも所有したいと思い、ヤフオクでBMW 318is(E36)を36万円で購入したのがBMWとの初めての出会いである。

318isを購入するに際して、全くクルマに期待はしておらず「どノーマルのAT車だし、古いし、パワーもないし、とりあえず足代わりになればいい」というつもりだった。

ところが、いざ乗ってみると、高速道路ではたった140psとは思えないほどよく走るし、ワインディングに持ち込めば、軽い鼻先と想像以上にガッチリしたボディで非常に素直なハンドリングを見せてくれた。

当時、雨の芦有の下りでリアが滑り始め、ヤバイ!と一瞬思ったが、そこから唐突に滑ることはなく、非常にコントローラブルだったことを思い出す。手に取るようにリアの挙動が分かり、恐怖感よりも、むしろ楽しさすら感じた。

なんて良い足回りなんだ」と感動したことを思い出す。4気筒ながらエンジンの吹けもよく、高回転まで引っ張れば気持ちの良い快音で楽しませてくれた。

あー、これが『駆けぬける喜び』ってやつなのかな、当時、そんな風に感じた。

F30型 320i

時は経ち、今、E36型から数えて3世代後のF30型の320iが目の前にある。

外観はもはや私が知っている3シリーズとは思えないほど立派で、ドアも内装の立て付けもしっかりしている。エンジンをかけると、車外ではBMWらしいカチャカチャとしたメカニカルノイズは聞こえるが、車内は非常に静かだ。

クラッチはとても軽く、シフトも変なクセはなく、小気味よく操作できる。1速につないで発進する際、タコメータの針が一瞬上がり、発進をクルマが手助けしてくれるので、非常にやりやすい。

今でこそ、トヨタのカローラスポーツに同じようなiMTと呼ばれる機構があるが、BMWは当時からそういう制御をMTに入れていたことに驚いた。

街中では非常に乗り心地が良い。この個体はMスポーツではなく、ノーマルサスペンションに17インチホイール、そしてタイヤはレグノ・GR-Xiを履いている。

エンジン音もロードノイズもかなり遮音がしっかりしており、いたって静か。さすがにこの辺りの遮音性はクラスが上なだけあり、ゴルフより一枚上手だ。

路面の凹凸やうねりも滑らかにいなしていき、とにかくマイルドというのが印象。まるで国産高級セダンのように感じる。

『駆けぬける喜び』はどこへ行った?!

郊外に出て、山坂道を走る。ギアを3速、4速あたりで引っ張ってみるが、エンジン音は思った以上に静かだ。後で気づいたのだが、コンフォートモードだと、エンジンもハンドリングもかなり大人しい。途中でスポーツモードに入れてみると、エンジンのレスポンスは少し早くなり、ハンドリングもダイレクト感が少し増す。

この個体は可変ダンパーではないが、ABSによるスタビライジング制御でサスの味付けが変わるらしい。

低中速コーナーでは、やはりFRらしく、どんどん内側に切れ込むように曲がろうとしてくる。これは久しぶりの感覚だ。たしか、E36もそんな感じだったかな、とおぼろげな記憶を思い起こしながらワインディングを楽しむ。

しかし、どうもシャキッとしない。サスペンションがそもそもコンフォート傾向な味付けなのに加え、タイヤがコンフォートタイヤであることの相乗効果で、私が思う『駆けぬける喜び』を感じ無いのだ。

もちろん、悪くはない。しかし、BMWに求めるのはこれではない。以前、5シリーズのF10を借りて乗っていた時に感じた印象に近いのだ。

ちなみに、現行5シリーズ(G30)を試乗した時は、すごくしっかりした味付けになって、昔のBMWに近くなった印象を受けたし、まだ乗っていないが新型3シリーズ(G20)も走りに主眼を置いていると聞く。どうもF型の世代は全体的にマイルド傾向なのかもしれない。

高速道路に向かい、エンジンを引っ張ってみるが、正直、184PSほどのパワー感は感じない。6速からの加速感はまずまずだが、4速にシフトダウンして元気よく加速しようとするも、その回転域のトルクの薄さ、いや、トルクの盛り上がり感が希薄で、伸びやかさを感じにくい。

ターボらしさを感じさせない味付けといえばそれまでだが、それにしてはトルク感が薄い。あわせてエンジンも静かで、車体も安定しているため、余計にそう感じるのだと思う。ゴルフ7は105PSだったが、体感的な加速感、楽しさはゴルフの方が上に感じる。

高速域での安定性に関しては、素性は良いと思う。ただし、この個体の場合、タイヤが悪い。直進安定性が欧州タイヤに比べると、やはり少し希薄で、かつ、高速域のコーナーでハンドルに修正を加えた際などに、サイドウォールの柔らかさからくる揺り戻しを僅かに感じる。

非常にコンフォートでロードノイズもかなり低い優れたタイヤなので、そういうのが好みの方には最高だと思うが、個人的にはもっとしっかりした味付けが好みだ。

総評

街中、ワインディング、そして高速と走ってみたが、もしこのクルマのエンブレムにスリーポインテッドスターが付いていれば、もっと評価は変わったかもしれない。マイルドで快適、しかもスポーティーさも残しているという意味で、良いクルマだ。

なので、BMWに快適性やコンフォートな味付けを求めている人には、ドンピシャなクルマだと思うし、その点では非常によく出来ていると思う。

しかし、多くのBMWファンが求めるのは、そこではないはずだ。もちろん、コアなファンは最初からMモデルやMスポーツモデルを選択されると思うが、ノーマルモデルであっても、もう少し『駆けぬける喜び』を残していおいてほしかった。

このクルマは、もし妻が手放さずにしばらく乗るのなら、ゆくゆくはサスペンションやタイヤ、ホイール等を変えて自分好みのBMWに仕上げてみたいと思っている。


…以上が、夫によるBMW320i(F30)のファーストインプレッションだ。最後の一文に書かれていた「妻が手放さずに乗るなら、サスペンション、タイヤ、ホイール等を変えて…」というところは、夫がお金を出してやってくれるということだろうか…w

だとしたら、遠慮せず大いにやっていただきたいところである(笑)

 

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