クルマにも慣れてきたところで、少しペースを上げてコーナーを曲がってみる。なるほど、切り始めはグッと切り込んでいってくれ、やはり普通の乗用車とは動きは全然違う。
ノーズがしっかりと入る感じで、しっかりと踏ん張った感じはあるが、さらに切り込んでいくと、グラっとロールが強めに出る。ここではもう少しスタビライザーを強化したいなぁ、というのが感想だ。そしてほんの一瞬、タイヤが鳴き、アンダーが出る。
装着タイヤはADVAN Sport V105だ。このくらいで悲鳴を上げるような、そんなヤワなタイヤではないはずなので、もしかしたら空気圧が適正でなかったのかもしれない。
グッと外側にロールして沈み込んだ車体は、そこからは非常に安定してコーナーを曲がっていくのだ。ある程度のGがかかり負荷がかかった状態ではしっかりとタイヤを接地させてくれるように思う。
四駆の制御をつかさどるDCCD(ドライバーズコントロールセンターデフ)はAUTOだったが、いずれにせよ、途中で四駆の何らかのトルク配分の制御が入っているのか、ESPが介入したのかわからないが、コーナーの始まりから終わりにかけて、クルマの挙動が少し変わる点は少し慣れが必要なように感じた。
後にオーナーさんに聞くと、以下のSTIパーツを装着されているらしく、その影響も少なからずあるのかもしれない。
こう書くと扱いにくいクルマのように思われるかもしれないが、扱いにくいというより上級者向けという感じがする。クルマの特性、動き、エンジンのトルクの出方などをよく理解した上で、運転すべきクルマだろう。パフォーマンスが高いのは間違いなく、そのクルマの意思を対話しながら汲み取り、それに応じて操作してやる必要がある。そんな風に感じた。
もしこのクルマを荷重も何も意識せず、遅れ気味なハンドル操作で、カーブに来てからハンドルを急に切るというような下手な運転をすれば、結構、怖い運転になるに違いない。手前からジワッとハンドル操作し、カーブが深くなるに従いグッと切り込んでいくという基本に忠実な運転が求められるクルマだ。
水平対向エンジンということで、ポルシェ(特に718など)と比較されやすいので、比較検討する人もいるかもしれないが、かなり違うテイストのクルマだと思う。
あくまで比較論だが、718などはもっとガッチリ感、剛性感、接地感が強く、そして一時も路面を離さず、ドライバーの操作に忠実に走っていくというフィーリングに対し、WRXの場合は、もっと軽快感や車体の軽さみたいなものを感じる。軽やかに曲がり、グッと押し出されるかのようなターボの効きと加速感で、ドライバーを楽しませるという感じだ。
やはり本籍はラリーのクルマなのだろう。もはや車名も違うので、20年以上前のSTIと比べるのもおかしいのかもしれないが、このクルマで以前のようにスキー場までの雪道を走ったらさぞ楽しいだろうなと思う。
ターボの効きや、ハンドリングの味付けにはその面影があり、最近のクルマが失った”やんちゃさ”を持っている数少ない車種だろう。
貴重なクルマを貸してくださったオーナーさん、有難うございました。
Page: 1 2