先日、GT3の1年点検の代車として、718ケイマンを1日お借りすることができた。夫婦でそれぞれ乗ってみたので、私は「奥さんがケイマンを普段遣いするなら、どう感じるか」という女性目線で、夫は「クルマ好きのポルシェ乗り」目線で、感想を書いてみたい。
今回の代車、718ケイマンは、ほぼオプションのついていない素のケイマンだった。PASM無し、スポーツエグゾースト無し、スポーツクロノパッケージ無し、18インチの標準タイヤという、本当にベースモデルの718ケイマンだ。
結論から言うと「奥さんが普段遣いするなら、この素のケイマンは十二分だなぁ!」と感じた。
足回りはすごくしっかりしていて、変な揺れ残りも無く、かたい割にはとても良かった。とはいえ、普段からメルセデス・ベンツ、レクサス、BMWといったメーカーのラグジュアリーセダンに乗り慣れている奥さんだと、最初は「なめらかさが無くて乗り心地が良くない」と思われると思う。
ただ、乗っているうちにそれには慣れてくると思うし、何よりこの正確なハンドリングや思ったとおりに運転できる感覚をひとたび味わえば「運転しやすい、乗りやすい」という印象の方が上回り、乗り心地はそこまで気にならなくなるのではないかと思う。
先日試乗させて頂いた911 カレラ 4S(992)は、やはり進化がすごくて、ハンドリングのクイックさには驚いたし、エンジン音も調和の取れた良い音がしていた。
それに比べると、718ケイマンは992ほどのハンドリグのクイックさは無かった。それでも、ハンドリング、ブレーキング、アクセルワーク含め、この思ったとおりに運転ができる感覚は、紛れもなくポルシェであり、素のケイマンであっても、しっかりポルシェを感じられることを実感できた。
「ケイマンは、ポルシェの入門編のクルマである」と、以前何かの記事で読んだことがあるが、言われてみれば確かにそうかもしれないと思った。
ケイマンは、パナメーラやカイエンのようにボディが大きくなくてコンパクトなので、普通の道や駐車場であれば問題なく行けるし、運転も気を使わない。
またボクスターは幌の色がアクセントになる分、街なかでは少し目立ってしまうが、それに比べるとケイマンのデザインはボクスターほど目立たない。そういった意味でも、気を遣わずに使えるので良いと思った。
このブログにも何度も書いているが、ボクスター・ケイマンは2シータースポーツカーにしては積載量がかなりあるので(前後にトランクがある)、普段スーパーへ買い物に行っても困ることは無いと思う。
ただ、2シーターなので少し閉塞感は感じるかもしれない。実は718ケイマンに乗った後に、911カレラGTS(991.2)を運転させて頂く機会があったのだが、やはり2+2シートの911は開放感があるなぁと感じた。(GTSの感想も追って記事にしたい)
とはいえ、素の718ケイマンは十二分に素晴らしいクルマだった。正直、以前試乗させてもらった BMW M2 Competitionよりも好印象だった。
もちろん、M2コンペティションも良いクルマだったが、当時の試乗車の価格がオプション込みで1000万ちょっとしていたので…それと比べて「今回の試乗車の718ケイマンは、M2コンペティションより300万円ほどお安くてこの性能だ」と考えると、費用対効果的には断然718ケイマンの方が買いだなぁと感じた次第だ。
生意気に色々書いてしまったが、では次に、夫の感想をご紹介したい。
夫は、数年前に初めてポルシェ ボクスターGTSを買ってから、自分でもポルシェを何台か買い、知り合いに乗せてもらうことも多く、最近では毎月、何らかの新たなポルシェに乗っている。
おかげで、ポルシェの各モデルの特徴や、グレードの差異、オプションの差異が何となく分かるようになり、また、より正確なレビューのためにドライビングスクールに行ったり、シミュレーターで練習したりとスキル面での向上にも努力しているそうだ(ほんま何者なん…w)
そんな中、ほぼオプションが付いていない718ケイマンと1日過ごしてみて感じたことを、今回忖度無しに教えてもらうことにした。
夫は、718ケイマンに関して、
ポルシェを購入する際は素のモデル(ベースモデル、スタンダードモデル、ベーシックモデルとも言う)にしようか、SやGTSなどの上級モデルにしようか悩まれる方は多いと思う。
特に予算を考えると、「本当はSが欲しいけど、素のモデルで妥協しようかな。。いや、ここは思い切ってSで・・・」と毎晩、毎晩悩み、頭の中で思考の堂々巡りをしながら、寝付けない夜を過ごされている読者の方も多いと思う。
そんな方に自信を持って言いたいわ、結論から言うと、「絶対に素モデルはオススメ」や。いろんなポルシェに乗り、GT3などのハイパワーモデルにも乗ってる立場で自信を持って言える。
と言っていた。「確かに、すごく良くできていたしバランスも良かったけど、Sよりも素の方がいいっていこと?」と聞いてみたところ、
決して”S”が悪いと言っているんじゃないで。当然Sは、そりゃ素のモデルよりパワーもあるし、そういう意味で良いと思う。SはSの良さがあるのは間違いないし、Sを買って失望するわけない。絶対に満足する。それもよく分かっているつもりや。
でも「じゃあ、この素のケイマンはSに比べて劣っていて、不満があるか?」と言われたら、全然そうは思わへんということや。
と。
続けて夫は、
以前にも718の素のケイマンには乗ったことがあったけど、今回改めて乗って感じたのは「全然これで良いやん」ということやった。コストパフォーマンスが最強なんや。
街中では十分以上の機動力やし、ワインディングに持ち込めば、丁度いいパワー感でエンジンを回していける。エンジンパワーもターボが効いてトルクが立ち上がってしまえば、かなり速い。
アウトバーンの追越車線を常に250km/hで走るなら不満かもしれんけど、日本の高速の追越車線をリードするのにパワー不足を感じることなど、まず無いと思うわ。
と言っていた。確かに、素のモデルはコストパフォーマンスが最強だということは私もよく分かった。また夫は、
718の方が、981ボクスターGTSより体感的には速いと感じるし、18インチの標準ホイールの足回りがヤワだなんて、全く思わへん。むしろ、エンジンパワーとタイヤのバランスが丁度良く、つくづくクルマはバランスが大事だと思わせられた。
これでサーキットに行けば、タイムこそSには負けるけど、自分の手の中で扱える感覚でむしろこっちの方が楽しいし練習になるだろうなとさえ思ったわ。
と。
確かに…私も以前は「クルマはパワーが大事、速いのがいいんだ」と思っていたけれど、最近色々なクルマに乗らせてもらう中で「クルマは、バランスが大事だ。その方が、運転に違和感が無くて楽しい」ということが、少し分かるようになってきた。
私が「確かに718ケイマンはバランスが良いと感じたわ。だから満足度がすごく高かった。そしてしっかりポルシェを感じられた。なんでかはよく分からんけど…」というと夫は、
足回りも硬めのサスペンションと、とても品質の良い柔らかめのブッシュ類でしなやかさと強さを絶妙のバランスで出しているような感覚は、ポルシェらしいよな。
PDKの変速も早く、スポーツモードでアグレッシブに走れば、パドルシフトを操作しなくとも、絶妙のタイミングでシフトダウン、アップを繰り返してくれ、その素晴らしいハンドリングの良さを味わうことに専念できる。
もし、グレードのヒエラルキーさえ気にしないのであれば、素モデルで十分や。もし、僕が718ケイマンを買うなら、素モデルか、GTS4.0が欲しいと思うやろなぁ。
と言っていた。
では次回は、PASM無しのサスペンションの乗り心地、981との違い等について書いていきたいと思う。