ポルシェに乗ってると言うと『911?』と聞かれるも、『ボクスター』と答えると微妙な空気になる問題。

981ボクスターに乗って

最近空冷911で出勤することの多かった夫が、先日久しぶりにボクスターで出勤した。そして帰宅後、開口一番こう言った。

いや〜やっぱボクスターはええクルマやわ〜。

と。私は「その台詞、もう1000回以上聞いたで」と思わず突っ込んでしまったが(関西人は話を盛って言う癖があるので、実際は30回くらいだと思う)夫は、

今度来るGT3ツーリングが、このボクスターの走りを超えてくるんやろか??と、要らぬ心配をしてしまうくらい、ボクスターはええクルマや。

と大絶賛していた。

その後はいつものように「やっぱりNAの音はええ」「乗り味がしなやか」「自分の操作とクルマの息がぴったり合った時は最高やー、涙が出る…」などと、独り言のようにぶつぶつ言っていた。

911の影で…

水平対向エンジンを表す「Boxer」と、オープンモデルを表す「Speedster」、双方の意味を掛け合わせて命名された、ポルシェボクスター。

実に良いクルマであるにも関わらず、世間では「ポルシェといえば911」というイメージが強い。事実911は素晴らしいルマなので、ボクスターが911の影に隠れてしまっているように感じることもある。また、

ポルシェに乗っている」と友人に話すと、「何乗ってるの?911?」と聞かれ、「いや、ボクスター。」と答えると、微妙な空気が流れてしまう

といった話も聞く。夫もその経験があるようだ。でも、911に負けず劣らず、ボクスターもとても素晴らしいクルマであることを、今日ここに記しておきたい。

ワインディング走行

夫とボクスターに乗り、サンダブルクリンクや気持ちの良いワインディングロードを走る時、夫はよくこんな風に言う。

ボクスターは、ワインディングを走ってなんぼのクルマや。クルマの中心を軸に、回るように曲がるし、タイトコーナーであればあるほど、この感覚が強くなる。ヒラヒラ舞う軽快感というよりも、カーブに沿ってコンパスで円を連続で描くように曲がってくれる。RRの911とはまた違った気持ちよさを持ったクルマや。

と。

確かに、ボクスターでコーナーを曲がるのと、911でコーナーを曲がるのとでは、クルマの曲がり方が全然違う。双方に良さはあるが、私個人的には「芦有ドライブウェイを走るなら、911よりもボクスターの方が好き」だ。

オープンカーの魅力

芦有ドライブウェイやワインディングロードを、ひとたびボクスターの幌を全開にして走ったときのあの気持ちよさと言ったら…。

春になれば桜並木を、夏は新緑の中を、秋は真っ赤な紅葉の元を(冬はちょっと寒い)風を感じ、風と一体になりながら走り抜けるあの感覚は、オープンカーでしか味わえない醍醐味だ。

通常のクルマのサンルーフとも全然違うので「一度でもこれを経験してしまったら、二度とオープンカーから離れられなくなるなぁ」とさえ思う。

実は以前の夫は、「オープンカーなんて、意味がわからん!クーペより剛性が低いし、しかも周りからはシャシャッてる(調子に乗っている)ように思われるから絶対に自分は買わない」と常々思っていたらしい。

しかし、知り合いの方にR171のSLK350を安く譲ってもらえる機会があり、それに乗ってからは、考え方が180度変わった。そして、

「一家に一台、オープンカーは必要や。あると無いとでは、人生の豊かさが全然違う。」

とまで言うようになった。「まぁまぁ、落ち着いて。ところで、オープンカーの何がそんなに良いの?」とある時聞いたところ、

そやなー、とにかくどんな場面でも屋根を開ければ、すぐに非日常を味あわせてくれるところやな。いくら速くて、格好いいスポーツカーに乗っても、渋滞中やストップ・アンド・ゴーの多い道での車内は、エコカーやファミリーカーに乗ってるのと大して変わらん。
一方のオープンカーは、そんな時でさえ屋根を開ければ、その空間がたちまち非日常に変わる。気分がまるで違う。空を見上げれば、渋滞や街中さえも楽しくなる。
もちろん、ワインディングや景色の良いところでは、音や光、空気感、匂い、気温まで全てを感じられる。まさにバイクと同じや。そこが魅力なんや。

と力説していた。

とはいえ911の中にも、屋根があくモデルとして911カブリオレがあるが、911カレラカブリオレの価格をポルシェ ジャパンのサイトで確認すると、今現在1,510,000円〜(税込)とかなり高額。一方で、夫のボクスターGTSはオプションをつけても、1000万弱。かなり、お得だ。(まぁ、普通に考えたらボクスターでも十二分にお高いのだけど…)

トランク容量

ボクスターは「車体の真ん中にエンジンを置くミッドシップ・レイアウト」が採用されているので、前後二箇所にトランクがある。しかも、前のトランクはかなり深めに設計されているので、Mサイズのスーツケースが余裕で入る。

また、後ろのトランクには、洗車道具やパンク修理キットなどを余裕で入れておくことができる。

なので、ボクスターの場合「Sサイズのスーツケースを2個積みこんで、夫婦で1泊2日のツーリングに行く」なんていうことも余裕でできてしまう。911の場合、後部座席があるのでそこに荷物はつめるけれど、トランクは小さめなので、トランク容量に関してはボクスターに軍配があがる。

NAエンジン

これは911とボクスターの比較ではないかもしれないけれど…夫はボクスターを購入する時、

「何がなんでも、滑り込みでも、最後のNA6気筒モデルである”981″ボクスターを買う」

と言っていた。その結果、981ボクスターは確かにNAだけあって、加速がしなやかで、「パーン!」とはじける乾いた高めのエンジン音は、本当に気持ちがいい。また夫のボクスターはGTSで、ノーマルより排気音も大きく迫力もある。このGTSを、MTでエンジン音を操りながら走るなんて、最高に気持ちがいいだろうなぁ…と、助手席に乗る度に思う。(だから私もMT運転練習頑張ろうw)

サーキット走行

先日夫は、ボクスターで鈴鹿サーキットの走行会に参加した。行く前は「オープンボディのボクスターで、果たしてどの程度走れるだろう」と言っていたが、帰宅後は興奮気味にこんな風に話していた。

鈴鹿の130Rを走る時、スピードを上げれば上げるほど、ボクスターが安定していくように感じた。ステアリングを切り込んでコーナーに侵入した途端に、グッと車体が沈み込んで、まさに路面に吸い付くように曲がるんや。「あれ!?ボクスターってこんなに安定してたっけ?」って思った。不思議な感覚やったわ。

と。

本気でタイムを刻もうと思えば、GT3やGT4といったサーキット向きのクルマで走る方が当然良いのだとは思う。でも、ボクスターでサーキット走行した夫は「まだまだボクスターには知られざる底力がある」ことを痛感したようだ。

986ボクスターSのオーナーが

実はつい先日、夫から「このボクスターの記事は、よう核心をついた良記事や。読んでみ。」という文面とともに、あるWEB記事のURLが送られてきた。早速読んでみると、夫が感じていたのと同じく、ボクスターの魅力が語られていた。

その記事は、ライターの方が「2001年式初代ボクスターS(986型 MT)のオーナーに取材したものをまとめた記事」。記事を読む限りでは、このボクスターのオーナーは整備工場を経営されているよう。356やナローポルシェといった初期型911オーナーの主治医としてよく知られている方だそうだ。

またつい最近までのご自身の愛車は「1974年式ポルシェ・914 2.0」だったのだが「そんなポルシェに精通したスペシャリストが、なぜ986ボクスターSを愛車に選んだのか」について紐解かれた内容だった。

そこには、こう書かれていた。

ボクスターというと、特に911オーナーさんは食わず嫌いな方が多いんです。(中略)お客さんにも試乗してもらったり、助手席に乗ってもらったりしてボクスターの魅力を味わってもらっています。皆さん一様に『これが20年近くも前のクルマとは信じられない!』と驚かれていますよ(笑)」

またこの記事を書いた編集部の方も、

数値には決して表せないもの。それがボクスター体験
背後からエンジンのメカニカルノイズと排気音がダイレクトに五感を刺激する。この楽しさを街中で体感できるのも魅力的だ。そして、ワインディングロードや高速道路であれば、さらにこのクルマの楽しさを享受できるだろう。

と書いておられた。
*記事出典:「18年前のクルマと侮るなかれ。ポルシェのスペシャリストが2001年式ポルシェ・ボクスターS(986型)を手に入れた理由」

ボクスターの魅力

こうしたボクスターの魅力をうけて、夫は改めてこんな風に言っていた。

ボクスターやケイマンに乗っていると残念ながら、「安いポルシェに乗っている」と思われることが時々ある。確かに911よりは安いけど、ボクスターやケイマンの素のグレードは、最低でも約700万円はする。しかもほとんどの人はオプションを付けて買うから、そこからさらに100万〜300万円ほど高くなる。
だから、「最終的に見積もりすると、素の911が買える値段になった」ということもよくある。
でも、世間では車両本体価格のイメージが先行してしまっているから、あんまりそういう事は知られてないんやろうなぁ。
また実際にボクスターで走ってみると、「911を超えている」と感じることもよくあるし、価格差ほどの差は全く感じない。ボクスターやケイマンは、911とは違う味付けがされているとはいえ、しっかりとポルシェやし、乗り味のアイデンティティも確立している。だから、値段こそ違うけれど、どちらが上か下かではなく「好みの乗り味かどうか」で選ぶべきだと思う。
まぁお菓子でいうと、同じポテトチップスでも、「うすしお味」が好きなのか「コンソメ味」が好きなのかというのと同じやな(笑)
素材は同じ、あくまで味付けの違いだけやから、ボクスターやケイマン乗りの人も負い目を感じず、堂々と乗ったらええと思う。

と。

なるほどなぁー。最近、ポルシェの中にもまだまだ名車はたくさんあると感じる機会が多い。食わず嫌いするのは本当にもったいないし、試乗も含めて、これからも色んなポルシェを味わう機会があるといいなと改めて思った。

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