レビュー・試乗記

マツダ ロードスター(ND)に試乗。ボクスター乗りが運転するとどう感じるのか?

ポルシェ乗りの夫のロードスター試乗の感想

第一印象

ユルユルと走り出してみると、まず最初にエンジン音がいたって普通に感じた。普通の乗用車っぽい音で、ロードスターの開発秘話などを読むと、よく『音には徹底的にコダワリました。チューニングしました。』的なことが書いてあるのに、『うーん、こんなに大人しくて、普通っぽい音なのか』と感じてしまった。

ギアを2速から3速へと上げ、加速してみる。『あれ、進まない。というか、回転上昇が遅い。』そんな風に感じる。無理もない。ついさっきまで500psのGT3をMTで操っていた身体は、完全に基準がおかしくなってしまっている。

コーナリング

気持ちを落ち着かせ、先入観を捨て、正面からクルマと向き合う。

パワーの感触やエンジンの回り方を感じつつ、コーナーをまずはゆっくりと曲がってみる。すると、今までネガティブに感じていた印象が嘘のように無くなる。タイヤの接地感はしっかりとステアリングとシャシーに伝わり、ボディの弱さなど微塵も感じない。シャシーは前後バランス良く適度にロールし、外側のタイヤにしっかりと荷重がかかる。

そして、非常に滑らかに、かつ安定してコーナーを曲がってくれるのだ。

かなり昔、NBとNCに少し乗ったことはあったが、ここまでちゃんと走るクルマだとは思っていなかったというのが正直なところだ。

ボクスターなどと比べるとロールは大きいが、そのロール感に不安定さは全く無い。しかもロールはいつまでもダラダラと傾くわけではなく、ある程度のところでピタッと止まり、そのロールを使って左右の荷重で曲がる、そんなコーナーリングをしてくれるのだ。この個体はスタビライザーを替えられているので、ノーマル仕様だとどうなのかは分からないが、とてもバランスの良い仕上がりだった。

ちなみに、ボクスターと比較すると、ボクスターはもっとフラットな姿勢で走り、どちらかと言うと左右と言うより前後の荷重で曲がる印象が強い。そして、ミッドシップなので、コマのようにクルマの中心を軸に曲がる感じだが、「ロードスターは回転軸がもう少し前よりで運転席あたりに近いのかな」と思う。

走っていると、本当にめちゃくちゃ楽しい。運転が上手くなったかのようにスイスイとワインディングを駆け抜けていく。あまりにも楽しくて、運転しながら『このクルマ、めっちゃええやん!!』と何度も連呼して一人で騒いでしまった(汗)

3速、4速で走っていると、最初に感じたエンジン音の印象と随分違う。決して派手な音ではないのだが、聞いていて『心地良い』のだ。擬音で表現すると『ブーン、ブーン』という文字でしか表現できないが、もっとそこにはリズム感、鼓動感が相まっていて、気持ちの良い、いい音だな〜、と感じる音色だった。

「田舎のカントリーロードを1段、2段低めのギアでクルージングでもすれば、これは気持ちいいだろうな」と思わせてくれるような、そんな音色だ。

エンジンパワー

エンジンパワーについてもそうだ。走り出しの最初の印象とはうって変わり、わずか1トンほどの軽量ボディとのバランスが非常に良く感じる。0km/hからの加速性能という意味では確かにアンダーパワーかもしれないが、ワインディングを流している時は、そんな風には感じず、ちょうど手の内で扱える、扱いきれるパワー感という印象で、この使い切れる感が非常に楽しい。

そのため、走っていれば必要にして十分なパワー感といった印象だ。やはり、クルマはパワーだけで語ってはいけないと改めて感じる。

ブレーキ

次にブレーキに関していうと、踏力で調整するというより、ストロークで調整するタイプなのかな、と感じた。ここは個人的にはもう少しストッピングパワーがあっても良いと思う。私が今回、短時間の試乗で感じたボクスターとの大きな違いはここだ。もちろん、他にも違いはあるが、一番、印象深い点だ。

ポルシェの場合、どの車種もブレーキを踏むことで感じる”面白さ、気持ちよさ”のようなものがあるのだ。アクセルで加速する気持ちよさはどのクルマでも感じられるとは思うが、その逆の動作による気持ちよさがポルシェにはある。ブレーキを踏むことで、思ったとおりに減速する気持ちよさ、がそこには存在する。

ロードスターのブレーキではそこまでの面白さ、楽しさを感じることは出来なかったが、それでも危険や不安を感じるようなことは無かったことは付け加えておく。

総評

以上、短評ではあるが、ここまでが私のインプレッションになる。もし、私が国産車の中で選ぶとしたら、絶対にロードスターは候補に挙がる。正直、ボクスターを持っていなければ、今すぐにもでもマツダのディーラーに駆け込んでいるだろう。

初代から比べればロードスターも値段は高くはなったが、それでもこの性能なら妥当、いや、むしろお得だと思う。もちろん、ボクスターとは価格帯がかなり違うので、パワーやブレーキといったハード面の数値や絶対性能を比較すれば、当然ながらボクスターに軍配が上がる。

しかし、方向性や目指す方向は違うにしろ、ソフト面での楽しさはボクスターに勝るとも劣らないレベルだと思う。特に芦有のようなコンパクトなワインディングロードでの面白さ、気持ちよさは本当に素晴らしい。そこには個人の好みによる優劣はあれど、価格差ほどの差は無いと断言できる。

”Fun to Drive”という某社のキャッチフレーズがあるが、そのフレーズは本来、ロードスターが使うべきだ。そんな風に思うほど、”Fun”なクルマだった。

オーナーさん、有難うございました!

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