低速でハンドルをきった時、ポルシェのタイヤがゴリゴリ音がするのは不具合?

タイヤの「ゴリゴリ」音

冬の寒い日に低速でハンドルを切った時、タイヤから「ゴリゴリ」「ボリボリ」という音がすることがある。(例えば、駐車場から右左折して出る時など)「これって不具合じゃない?」と、ディーラーに問い合わせるオーナーもおられるようだが、結論から言うと、これは不具合ではない。

そのあたりの理由を先日夫が説明してくれたのだが、例のごとく私はあまり理解できず…「私は物理は苦手やから、そういう理論は分からん(-_-)」というと、「これは物理の問題じゃなくて一般常識やw」と言われ、ラジコンを使ったレクチャーが始まった(*_*)

タイヤの「ゴリゴリ」音の原因

ポルシェは、ステアリング機構に関して「アッカーマンステアリングジオメトリーではなく、パラレルステアリングジオメトリーを採用」している。

アッカーマンステアリングジオメトリーとは、一般的な乗用車に多く採用されているものだ。超低速走行時、ハンドルを大きく切って曲がろうとすると、左右のタイヤが通る回転半径は異なるため、フロントタイヤの左右の切れ角が同じだと曲がりにくくなる。それを防ぐために、フロントタイヤの切れ角が異なるようにセッティングされているのが、アッカーマンステアリングジオメトリーだ。

ただ、アッカーマンステアリングジオメトリーを採用すると、中高速走行時にハンドルを切った時、遠心力の特性を活かしたスムーズな旋回ができなくなってしまう。例えば右コーナーを曲がるときは、遠心力により左側のタイヤへの荷重が大きくなり、右側のタイヤへの荷重は小さくなる。内側のタイヤの荷重が軽くなることで、より旋回性能が上がりスムーズに曲がることができるが、アッカーマンステアリングジオメトリーを採用すると、その特性が失われてしまう。

そこでスポーツカーやレーシングカーは、あえてアッカーマンステアリングジオメトリーを採用せず、パラレルステアリングジオメトリー(フロントタイヤの内側外側の切れ角が、ほぼ等しく平行に設定されたステアリングリンク機構)を採用し、中高速走行時に、よりスムーズに旋回できるように設計がしてある。

そのため、超低速時にハンドルを大きく切って曲がると、フロントタイヤの内側外側の切れ角がほぼ同じなので、前輪が横滑りし、「ゴリゴリ」「ボリボリ」という異音が発生するのだ。

また、ポルシェのタイヤは、高性能で熱に強いものが使われているため(ポルシェ認定タイヤの「N(数字)」の意味と、承認タイヤ開発の舞台裏)、逆に冬場の気温が低い時には、固く冷えたタイヤブロックとアスファルトとの摩擦で、あのような音がする。

つまりこの音は「ポルシェがスポーツカーである証」「高性能タイヤである証」なのだ。

ポルシェである証

ポルシェがパラレルステアリングジオメトリーを採用している理由を推測すると、

①中高速でカーブを曲がる時にスムーズに旋回できるようにする
②走行中にハンドルを切った時の応答性が向上する
③サーキットなどで内側のタイヤへの余計な負荷や熱を抑える

ということではなかろうか。そんなこんなで気づけば夫は、紙に書き出して解説してくれていた。(っていうか字が汚すぎて読めないw)

私も運転中、たまにこの「ゴリゴリ音」を聞いたことがあったが「自分の運転が下手くそで、タイヤに負担をかけているからこんな音がするのだ」と思っていた。でもそうではないと知り、少し安心した(笑)

ちなみに夫は、

このゴリゴリ、ボリボリという音は、ポルシェの証なんや。もしこの音が嫌なんやったら、ポルシェなんて乗ったらあかん。高級国産車や、一般乗用車に乗るべきやわ!むしろ、この音を自慢してほしい!」

と言っていたw

いやはやースポーツカーって本当に奥が深いなぁ。

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