ポルシェ・911

ポルシェ911(空冷964型)の足回り全般を純正部品で交換!

まるで新車のような911(964型)

鍵を受け取り、帰路につく。お店の前の国道43号線を数十メートル走って、『うわ、全然違う!!』。思わず口に出してしまった。もう、タイヤの丸さがよく分かる。こんなにタイヤの転がり感をこのクルマから感じたのは初めてだ。

新品のフロントショック

スッーと進むというか、滑らかだ。感覚的には以前と比べて2-3割増しといったところだろうか。荒れた箇所やマンホールの上でも、「ゴト、ガタ」という音がほとんどしないようになっている。

以前は、衝撃自体はそれほど感じないものの、不整地では航空機が気流の悪いところを通過した時のような音がしていたのが、かなり静かになっている。意識すればリアからは聞こえるが、フロントからはほぼ皆無だ。とにかくフロントの接地感、滑らかさが際立つ。ピッチングが相当減り、運転していて目線の上下動もかなり少なくなった。

NVHは全般的にかなり抑えられており、一気に964は快適車になった。

信号待ちからのスタート、そして、追い抜きの加速時にここでも効果を実感する。アクセル操作に対するレスポンスの遅れがかなり改善され、良くなっているのだ。おそらくはエンジンマウント、ティプトロマウントなどを交換したお陰ではないだろうか。

最新の水冷ポルシェはPADM(ポルシェダイナミックエンジンマウント)という機能があり、走行モードに応じてマウントが固くなったり、柔らかくなったりする。これによりスポーツモードなどにすると、クルマがシャキッとして筋肉質になったかのような印象を受けるが、それと同じような感じだ。

クルマが身軽になって体脂肪が減ったかのような動きだ。

お察しの通り、家には真っ直ぐ帰らず、早速、芦有に行き、その後はサンダブルクリンクでテスト走行だ。街中では分からなかった点が徐々に明らかになっていく。

まず、コーナーが走りやすい!かなり走りやすい。今まではアクセルを抜き、フロントに荷重をかけて曲がり、アクセルを早めに開けてトラクションをかけることで曲げるというRRの基本に忠実なドライビングをしないと曲がってくれなかったが、それが少々手を抜いても、全然曲がる。

しかも滑らかに曲がる。もちろん、最新の水冷ポルシェほどのイージードライブではないが、それでもこれならもっと気楽に運転できそうだ。

コーナーの途中の挙動にも変化を感じた。フロントの接地が強くなったせいか、コーナー途中でもグッ、グッと中に入ろうとする。これはGT3でよく感じる感覚だが、それに近いものを964で感じるようになったのだ。

ティプトロニックの変速も小気味よい。今までは2速ホールドの高回転からアクセルを抜くと、ややバックラッシュしたような感じになり、カクンと急にエンジンブレーキがかかったような感覚が少しあったが、それがかなり減った。ティプトロニックマウントの交換のお陰なのか、明確にはわからないが、ATも良い感じになっていることは間違いないようだ。

フロントは結構、車高があがった。これでも一番低くしてる設定らしい。

芦有隧道の直線では、直進安定性が向上しているのがハッキリと分かる。真っ直ぐ、ビシッと走る。今までもそんなに悪くはなかったが、ここでも1〜2割、安定感が増したような印象だ。思わず、長距離クルージングを試してみたくなる安定感だ。

有馬側から登る芦有エッセスでは、ここはRR、特に空冷ポルシェの苦手なところ。狭いタイトコーナーが続く、急勾配のワインディング。この964を買った当初、ここを何気なく走って、なんて曲がらないんだ!と驚いた記憶がある。そこを、生まれ変わった964で走ってみると、今までの苦労が嘘のようだ。

当然ながらRRなので、荷重移動は大事だが、それでも走りやすさが全然違う。もっとリラックスして、走ることができるようになっていた。

サンダブルクリンクでは少し荒れた路面や中速コーナーを中心に走ってみる。やはりフロントの上下動が少ない。当然、今の水冷ポルシェから比べるとさすがに乗り心地では負けるが、それでもかなり足がよく動いていることがよく分かり、走っていてフラットで気持ちがいい。

もともと911はリアが重いため、リアは固めだが、フロントは軽いので柔らかめの足になっている。そのため、本格的なスポーツカーにしては比較的、乗り心地が良いとされるが、そのことが今回のリフレッシュで良く分かった。

帰路につき、自宅までの慣れた道でもあらためて検証する。すると、その違いがよく分かる。やはり乗り心地の改善と、運転のしやすさが相当に違う。今から28年前の1992年、この911はこんな感じで走っていたのかな、と想像すると、なんだかタイムマシンで過去を体験しているかのようだった。

今回、それなりにコストもかかったが、本当にやって良かったと思っている。もしやっていなかったら、危うく本当の964の姿を知らずに過ごすところだった。クラシックポルシェのオーナーさんで予算が許すなら、足回りのリフレッシュはオススメだ。ドライバー本人の満足度も高いが、何よりもクルマ自身が生き生きとして、喜んでいるように思うからだ。

次はボディのリフレッシュ計画を立てている。限りなく新車に近づけるための道のりはまだ遠い。

 

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