さて、このGT4RS、皆さんが想像されている通り、音はかなり刺激的である。
特に本来リアウィンドウがある場所に設置されている吸気口から流れ入る吸気音は凄まじく、エンジンが呼吸をしていることがよく分かる。おそらく、多くの人にとって、エンジンの吸気音をこれだけハッキリ聞いたことがある経験はないのではないだろうか。私もその一人であり、今回、このクルマで初めてハッキリと聞くことができた。
私の持つ991.1のGTSもGTS用にチューニングされたサウンドシンポーザーによりエンジンの吸気音をコックピット内に聞かせてくれるが、それのさらに大音量版であり、窓を閉めている方が音に迫力がある点は共通している。
718ケイマンGT4RSの吸気ダクト
吸気ダクトはそのまま車内のエンジンに繋がっている
エンジンの回転が上がると「シュオー」という空気の流れる音が聞こえ、それが車内のエンジンのノイズと車外のエグゾーストノートと混ざりあい、とてもレーシーなサウンドとなる。GT3よりエンジン搭載位置が近く、車内でそのまま聴けるので、まさにGT3エンジンの『生演奏』である。
さらにシフトダウン時は、回転合わせのための空ぶかし時に「シュポッ!」という短い吸気音が響き、経験したことがないような快音が響き渡る。
直線でグッとアクセルペダルを踏み込むと、一気にタコメーターの針は躍り上がる。その勢いたるや凄まじく、9000rpmに近づく程、さらにその回転に勢いがついていくところはまさにGT3と同じである。高回転で伸びるエンジンというのは、いくつも知っているが、ポルシェのGT3エンジン程、ドラマチックさも演出しながら、加速度的に回転の上昇速度が盛り上がるエンジンを知らない。本当に素晴らしい回転フィールである。
パワー感は、圧倒的であることは言うまでもない。強いていうなら、GT4RSはミッドシップのため、RRの911ほど強烈なトラクションで無駄なく前に進む感じは少ないが、それでも顔が引きつるような加速感は健在である。これに関しても皆さんの想像どおりと思ってもらっていいだろう。
今まで私は過去に「911のGT3というモデルはレギュラーモデルのカレラ系とは別物であり、カレラ系の最高峰であるGTSとGT3は全く違う。そこには大きな隔たりがある」と、何度も言ってきた。これについては、今も同じように思っている。
しかし、ケイマンのGT4や今回のGT4RSについて言うと、運転フィーリングについては「レギュラーモデルのケイマンの延長線上にある」と表現したい。つまりGT4RSは、あくまでもケイマンの最高峰モデルであり、911のGT3のようにカレラとは別物という感じはあまりしない。
もちろん、パフォーマンスに関しては別物であるというのは疑いのない事実であるが、私が言っているのは『運転フィーリング』の話である。
それゆえ、GT4RSは意外と普通に使えそうだ、というのが感想である。とはいえほぼレーシングカーのようなクルマなので、通勤やデート、長距離ツーリングにも使える、とは言わない。むしろ、そのような用途には全然向いていない。しかし、GT3よりは日常域で使える(楽しめる)守備範囲が広いと思う。
それはエンジン音であったり、足回りのセッティングであったり、ギア比などでそう思うのだ。GT3などは街中を走っていると、エンジンを回せないことにフラストレーションを感じたりすることがあるが、GT4RSではそれがやや少ないように思う。低回転域でも音は楽しめるし、極端にローギアでもないのでストップ・アンド・ゴーもそれほどストレスがかからない。
乗り心地は荒れた路面での揺れは強いが、不快感は少なく、ステアリング特性も適度なマイルドさがある。
このクルマのオーナーさんは他にもGT3などのハイパフォーマンスカーの所有経験も多い方だが、GT4RSの感想を聞いてみると、やはり「GT3などよりは使いやすく乗りやすい。とても気に入ったのでこれは長く置いておきたいクルマだ」とのことだったので、私の感想はあながち間違ってはないようだ。
今回の試乗で個人的にもGT4RSは益々好きになった。個人的な好みでいうと、GT3よりも私はGT4RSを選ぶだろう。そのくらい惹かれたクルマだった。
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