ちなみに、エンジン特性について、同じボア・ストロークを持つNA4リッターのGT3のエンジンと比べて、どうなのかという話をしてみたい。結論から言うとフィーリングは『かなり違う』。
まず、低回転域の力強さは、GTS4.0の方が上だ。街中では圧倒的に走りやすいし、扱いやすい。エンジン音も、GT3のエンジンのメカニカルノイズと力強い音圧でコーン!と抜けるような音に対し、GTS4.0の方は、エンジンのノイズよりも排気音の割合が高く、そして、多少のビート感を感じる音だ。
そして何より違うのは高回転域だ。GTS4.0のエンジンもかなり、いや相当よく回るが、GT3のエンジンの方が、高回転になればなるほど加速度的に回転上昇のスピードが上がり、むしろ恐怖心すら感じる。
ここはさすがにGT3の面目躍如だ。
ハンドリングについては、今回はあまり試せていないが、基本的には今までの718を踏襲しているように思う。981より接地感が強く、特にリアがしっかり踏ん張ったように感じる点は同じだ。
他に強いてあげるなら、このGTS4.0はかなり乗り心地がよく感じられた点は付け加えておきたい。走り出しからして、しっとり、かつ芯のある乗り心地で、街中でもコツコツした感じは全くない。
ここ最近、私が経験したポルシェの中でもこの乗り心地の良さは1位、2位のレベルではないかと思う。サスペンションはそれなりに締め上げられているとは思うが、上質なゴムブッシュの上に乗っているような感覚。でも、かといって、グニャグニャした弱い感じは全くないので不安感は皆無の素晴らしい足だ。
『GTS』という名称から想像するともっとスポーティーでハードな印象をもたれる方もいらっしゃるかもしれないが、先代981もGTSはとても乗り心地が良いのだ。それに加えて、このGTS4.0の場合、エンジンやトランスミッションもとても扱いやすいので、乗り味だけで言うと『GTS』というより『Sプラス』みたいなグレード表現の方が的確に表現していると思う。
今回、GTS4.0を試乗して思ったことは、もし読者の方が初めてポルシェを購入するなら、絶対にオススメしたい。最近のポルシェの良いところがギュッと詰まったモデルだと思う。
高級レストランでいうと、季節限定の特別メニューとでも表現したら良いかもしれない。普段人気の素材をふんだんに使った万人受けしやすい味付けに仕上げてある。
もちろん、もう少しスパイスの効いた料理をお求めの方にはスパイダーとGT4も用意されている。
今回、ポルシェは、ユーザーがここにボールを投げてきてくれ、とキャッチャーミットを構えているど真ん中にボールを投げてきた。NA6気筒、ミッドシップ、ハイパワー、魅力的なサウンド、素直なハンドリング、万人受けする扱いやすさ、全てを兼ね備えたスポーツカーだ。GTS4.0、良いと思う。
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