ポルシェ・ボクスター

ポルシェ ボクスターで行く東北3000kmツーリング【後編】

東北ツーリング最終編

前回の、ポルシェ ボクスターで行く東北3000kmツーリング【前編】【中編】に引き続き、

今回は後編(最終編)をお送りいたします。夫はGW中、東北の道をとにかく走りまくって来ましたが、それでもまだまだ走れていない素晴らしい道がたくさんあるそうです。

東北ボクスターツーリング Day5

今日は、いよいよ”龍飛崎“へ向かう。龍飛崎に特に思い入れがあるわけではないのだが、小さい頃に紅白歌合戦で「津軽海峡・冬景色」を聞き、よく口ずさんでいたので、「津軽海峡を実際に自分の目で見てみたい」と単に思っていたのだ(笑)

青森市内のホテルを出て、津軽半島へ向かう。
R280で半島の東側を北上し、「津軽半島を東西に貫く3本の道のうち、最も走りやすい」と言われるK12を選択。

確かにこの道は、絵に描いたような快走路だ。適度なアップダウンに緩やかなカーブ、そして広い道幅によって、ハイペースを維持したまま走ることができる。ボクスターも深呼吸をしているかのような伸びやかな加速で走り続ける。

半島の西側に出ると、十三湖が見え、そこから雄大な岩木山を拝むことができる。途中の休憩スペースにボクスターを停めるやいなや、近くに居た若者達が「ポーシェ!ポーシェ!」と言って近寄ってきた。そして、片言の英語で「Take photo OK?」と聞いてきたので、私がすかさず「Sure!」と答えると、彼らは怒涛の勢いでバシャバシャと写真を撮り始めた。

彼らはベトナムからの観光客だったが、ベトナムではポルシェが珍しいのか、彼らは「ドアを開けていいか?」と聞いては、ドアに手をかけて写真を撮るなど、しばらくは「ポルシェとの記念撮影大会」のような雰囲気になっていた。

ひとしきり撮影したあと若者たちは、「アリガトウゴザイマス!」と何度もお礼を言ってくれて、こちらも「いい旅を!」と伝え、別れの挨拶を交わした。

「この若者の中から将来、ポルシェオーナーになる人がいれば良いなぁ」と思いを馳せつつ、龍泊ラインへとボクスターを走らせる。

龍泊ラインに近づくにつれ、海沿いの快走路は、丘を駆け上がるヒルクライムコースへと変貌する。眼下には日本海、素晴らしいタイトコーナーとストレートの連続。

もうボクスターの咆哮は止まらない

2速、3速、そして、2速へとブリッピングをし、バックファイヤーのバリバリ音を轟かせながら、贅沢極まりない極上のドライビングを堪能する。

もはや、ここは日本の”ステルヴィオ峠“と言っても過言ではない。それくらい、素晴らしい道だ。

ひとしきりドライビングを楽しんだ後、ようやく龍飛崎へ到着。津軽海峡を挟んだ前方には、北海道とその山々が見える。素晴らしい絶景だ。こんなことならもっと早く来ておくべきだった…そんな少しの後悔をいだきつつ、次は盛岡へとボクスターを走らせる。

青森ICから東北道に乗る。なんとも素晴らしい高速道路だ。クルマが少なく、長いストレートが延々と続く。ただ、南下するに従ってクルマが多少増えてきたので、安全を確保するため、できるだけ集団の中で一緒に走らず、かつ、できるだけ他車と並走しないよう心がけて走る。

高速での事故は、他車を巻き込んだり、逆に巻き込まれたりするケースが多いので、日頃からできるだけ集団からは離れて走ることを心がけている

それにしても、盛岡までがやけに遠い。関西人の感覚だと、神戸、大阪、京都、和歌山といった隣の県の街に行くなら、一時間もあれば十分なのに、なかなか着かない。落ち着いて地図を見れば分かることだが、東北地方は一つの県がデカい。「ちょっと目論見が甘かったなぁ」と思いながらクルマを走らせるも、無事に盛岡市内のホテルに到着し、大浴場で旅の疲れを癒やし、一日を終えた。

東北ボクスターツーリング Day6

盛岡市内のホテルで目覚め、早速、今日のルートを考える。最終目的地は会津若松だ。ところが、相変わらず東北地方の距離感や位置関係が正しく把握できていないため、地図で「盛岡~会津若松間の距離の遠さ」を知って唖然とした。

海沿いを走ろうか、はたまた高速で一気に南下しようか」といろいろと悩んでしまったので、困った時はwata師匠とばかりに、wataさんのブログを拝見。するとwataさんが「未走の方は、是非とも一度走りに行くべき」と絶賛されている「八戸川内大規模林道」なる存在を知る。

師匠が言うならば、ぜひとも走りに行くべきだ!」と思い、R455を東へ、そして途中から始まる八戸川内大規模林道へとボクスターを進めていく。道はよく整備されており、かつ誰も走っていない。すれ違ったクルマは4台だけで、前を行く車は皆無。完全貸切状態だ。

タイトコーナーもあり、ストレートも、緩いコーナーも、アップダウンも、あらゆる要素が包含され、かつ交通量が少なく、舗装状態も道幅も良い。

間違いなくここはAAAクラスのワインディングだ。

スポーツプラスモードでエグゾーストバルブは全開。タコメーターの針はほぼ垂直を指したまま、ボクスターは快音を響かせながら、一つ、二つとコーナーを駆け抜けていく。右へ左へと連続するコーナーでは、最新の718と比べると、多少リアが揺れ残る感こそあるが、それでも一級のハンドリングだと思う。

ドライバーの感覚とのズレが少なく、必要以上にクイックな演出が無いのでハンドリングが自然だ。そこが運転していて気持ちが良く感じる点ではないだろうか。

あまりにも気持ちが良い道だったので「もう一度、今来た道を引き返して走ってやろうか」とも考えたが、時間もあまり無いことなので、後ろ髪引かれる思いで盛岡を後にした。

ここからは東北自動車道を使って一気に南下する。気候も良いので、高速でもルーフを開け、オープンドライビングを楽しむことに。

個人的な見解にはなるが、981ボクスターの短所を一つ挙げさせて頂くとすれば「オープン時の風の巻き込みの多さ」だ。今までに、何台かオープンカーを所有したり、運転したりしているが、「ウィンドディフレクターがあるとはいえ、キャビンに入る風の量は現代のオープンカーの中では多い方」だと思う。

風のない日はまだマシだが、風が強い日は、後ろや斜め後ろからの風の巻き込みがとても多くなる。

そういえば納車された当時、妻が助手席に乗り、すぐに「(R171 SLKと比べて)風が強い」ともらしていた。なので、高速でのオープン時は、帽子を被るか、逆にそれなりの速い速度で巡航する方が風が少ない気がする。

矢吹ICで高速を降り、R294を経て猪苗代湖を目指す。もう少し早い時期であれば、桜が見頃で綺麗だったんだろうなぁ、と思いつつ、湖畔の舟津公園で小休憩。湖面の向こうには、雄大な磐梯山がそびえ立っていた。

湖畔を反時計回りにK9を北上し、上戸浜の駐車場にて夕暮れを待ちながら佇んでいると、 幼い子ども連れのご夫婦が丁寧な口調で声をかけて来られた。

「ポルシェを見せてもらってもいいですか?」

もちろん、どうぞ!良かったら、お子さんも座らせてあげてください」と私が答えると、ご主人はお子さんを運転席に座らせて写真を撮られる等され、その後ご主人とはボクスターやポルシェ談義に花が咲いた。実にクルマに詳しい方だった。

一通り写真を撮られたあと、お礼を伝えられ、そのご家族は自分のクルマの方に歩いていかれた。

しばらくして「そろそろ行こうか」とボクスターのエンジンをかけ、駐車場内を走らせたところ、奥の方に綺麗な黄色のマクラーレン650Sが停まっているのが見えた。そして、ちょうど乗り込もうとされているドライバーの方の顔をよくよく見ると、先程のあのご主人ではないか!

マクラーレンで来られていたのですか?!」まさか家族連れでマクラーレンとは思いもよらず、ビックリしてそう訪ねてみると、

ご主人:「そうなんです!」
私:「いいですねぇ!実は僕も、以前650Sに乗ってたんですよ」
ご主人:「えー、そうだったんですか!!」

とクルマ越しに、再び会話の花が咲く。なんと、奥様たちと2台でこられていたとのことだ。ひとしきり会話をした後、「またどこかでご一緒したいですね!」と伝え、猪苗代湖を後にした。

が、帰りの道中、マクラーレンのオーナーさんの連絡先を聞きそびれたことをとても後悔した。「類は友を呼ぶ」という言葉があるけれど「やはり同じような感覚を持つ人とは、自然と出会うようになっているんだなぁ」と、偶然の不思議さに思いを巡らせながら、またどこかでお会いできることを信じて、会津若松のホテルに向かった。

東北ボクスターツーリング Day7

今日は東北ツーリング最終日。翌日から仕事のため、今日には自宅に戻らなければならない。会津若松から自宅までは約700kmと少し。今日は一気に高速で帰るグランドツアーの始まりだ。

時間が許すなら、鶴ケ城も見たいし、磐梯山方面にも走りに行きたいのはやまやまだが、その気持ちをグッとこらえ、「また近い内に必ず来るぞ」と心に誓って、ガラガラの磐越自動車に乗り新潟方面へ向かう。ボクスターは6速のまま、一定の巡航速度で北陸自動車道へ。

途中までは快晴だったが、金沢あたりからは、まるで洗車機に入ったような土砂降りにみまわれた。ウォータースクリーンで前も見えず、強風で進路も乱される。ボクスターはリアフォグを点けて、後続車へ注意を促しながら慎重に進んでいく。道路上はかなりの水量だったが、新調したミシュラン・パイロットスポーツ4Sの排水性は素晴らしい。

ミッドシップだというのに、全く水たまりに舵を取られることもなく、安心して走ることができた。

ちなみに、今回のロングツーリングで感じたのが、以前のタイヤ「グッドイヤー・イーグルF1 アシンメトリック2」と比べると「パイロットスポーツ4S」の方が、かなり直進安定性が高いということだ。グッドイヤーも決して悪くはないが、ミシュランと比べると、どうしてもその差を感じてしまう。

そして、特筆すべきはタイヤの真円度の高さだ。特に舗装の綺麗な高速道路ではよく分かるのだが、すごく丸いものが転がっている感がある。グッドイヤーの場合は、同じような舗装でも極わずかなザラつきや振動を感じていたが、ミシュランの場合はそれが無い。これだけ長距離を走ると、タイヤの違いによって体の疲れ方にも差が出てくる。

米原を過ぎ、名神高速道路へ進む頃には雨もやみ、見慣れた風景が多くなっていく。
夕方には自宅に着きガレージにクルマを収め、一息おいてから、ボクスターへの感謝の気持ちとともに旅の疲れを労いながらゆっくりとキーを回し、2019年GWの東北ツーリングを終えた。

総走行距離:3067km
総運転時間:50時間24分
総燃費:8.9L/100km(約11.2km/L)
平均速度:61km/h

次回はGT3で再度、東北へ!