ポルシェ・カイエン

ポルシェ 新型カイエン 試乗レビュー

新型カイエンを試乗してきた

先日ようやく新型カイエンを試乗した。特に購入予定はなかったのだが(ディーラー担当のHさんすみません…)モーター誌の評価も良く、以前新型カイエンがどのように作られているかをディスカバリーチャンネルで詳しく知ったこともあって、興味はあった。

ただ「スポーツカーメーカーが作ったとはいえ、SUVやからなぁ」と思っていた。

また夫も、以前カイエンより一回り小さいコンパクトSUVのマカンを運転した時「めっちゃ良い車やったわ!」とは言いつつも「でもやっぱりSUVは要らんかなぁ」という感想だったので、お互いそこまで期待はせずに試乗に行ったのだが…

試乗してわずか2分の段階で夫が「なんなんこれ!めっちゃええ!欲しい!」と言い出したのだ( ̄ー ̄)長年「SUVは要らない」と言っていた夫の心をいとも簡単に変えてしまうとは…新型カイエン恐るべし。というわけで、今日は1時間ほど試乗した新型カイエンのレビュー(夫のレビューメイン)を紹介したいと思う。

さすがはポルシェ

私は15分ほどだけ運転させてもらったが、一番最初に驚いたのはその「軽快感」。パナメーラよりも大きく重たいのに、アクセルを踏んだ時の滑り出しは軽快でとても気持ちよかった。

また、乗り心地のなめらかさも素晴らしかった。固くてしっかりした足回りで地面の凹凸や衝撃をほぼ感じることがなく、とても乗り心地が良かった。また、SUVとはいえさすがはポルシェ。カーブでもぐいぐい曲がるしアクセルを踏んだ時の加速も十分、また後部座席の乗り心地も良く「カイエンで家族でロングツーリングに行くのも全然ありだ!」と思った。

では、以下、夫が書いた試乗レビューを紹介することにする。

以下、夫の試乗レビュー

運転席に座り、イグニッションキーを回しエンジンをかける。しかし、他のポルシェと違いいたって静か。タコメーターが跳ね上がり勇ましい排気音を期待していたが、エンジンがかかったかどうかが分からないほど静かにポルシェ製3リッターのV6ターボエンジンは目覚める。

実際に窓を開けて担当のHさんに「こんなに静かなんですか?!」と聞いてしまったほど。

アクセルに足を乗せ、踏み込み始めると、ここでもパナメーラとの大きな違いを発見する。アクセルが軽いのだ。最近の車はアクセルが軽い車が多いが、カイエンも軽い。とはいえ、最近のアウディなどと比べると、そこまでではないように感じる。

ステアリングを握り、ディーラーから車道に出る。この瞬間にポルシェか、それ以外の車かは分かる。ステアリングを切り増すことも、切り戻すこともなく、頭の中で想像している通りの動きをしてくれる。よく他車にある大げさなクイックな味付けのギミックもなければ、かといって鈍重な感じもない。

そして、新型カイエンは軽快感を強く感じる。これは単に安っぽく軽い感じというより、適度な重さの中にある軽快感と思ってもらえればよい。ステアリングの回転軸には抵抗や雑味は感じず、しっかりとした剛性感と工作精度の高さを感じる。国産車もこんなステアリングのフィーリングなら買いたいのに、と思ってしまう。

操作は重すぎず軽すぎずスムーズで、女性の力でも特に不便は無いと思う。むしろ、適度な重さが安心感を与えてくれるので、スピードが出ても安心してステアリングを握っていられる。

車内はいたって静か。わが家のパナメーラターボより明らかに静かだ。ティプトロニックを一段、二段と下のギアに落とし、少し引っ張ってみるがそれでもエンジン音はそれほど聞こえない。もう少し回してみると、V6らしい粒の揃った子気味の良い排気音が感じられる。

ポルシェらしいエンジン音、排気音かと言われると、正直そうは思わないが気持ちの良いスポーティーなエンジン音だ。

ここで私が気に入ったポイントとしてはティプトロニックの操作感を挙げたい。ポルシェはデュアルクラッチトランスミッションのPDKが主流だが、カイエンは代々トルコン式ATのティプトロニックを採用している。このティプトロニックが実に良い。変速ショックを感じさせないにもかかわらず、ちゃんとギアが変わっている感じを演出し、かつ、操作から反応までの時間が短い。

パナメーラのPDKだと、操作 ー>反応ー>ギアチェンジ完了までの間で、反応ー>ギアチェンジの速度はさすがPDKだけあって早いが、操作ー>反応までは回転数によっては一拍おいて感じることがある。特にパナメーラターボのような高出力車では街中では2000回転も回さずとも十分に走るので、どうしても低回転域を使ってのPDK操作になることが多い。

そのためか、不要なショックや回転が落ちすぎるのを防ぐため、車の方が一瞬制御をいれてしまうのだと思われる。

一方、今回のカイエンのティプトロニックはパドルを操作してからの反応が実に早い。早いというより、変に車の方でタイミングを図らないので思ったとおりのタイミングで変速するのが非常に気持ちが良かった。

また今回は素のカイエンということもあり圧倒的なパワーは無い。そのため中回転域を使いながら小気味よくシフトを繰り返し街中の国道を走ることができた。これはパナメーラターボなどにはスピードが出すぎてできない芸当だと思う。

エンジンは日本で走るには十分なパワーとトルクを持っている。特に低回転からしっかりターボが効くので非常に運転しやすい。今回は家族を乗せての試乗だったが、山道や坂道も何ら不満は無い。常識的な運転をしている限り素のカイエンでパワー不足を感じることは無いはず。

強いてあげれば、街中で3速や4速に入っている時、少し強めの加速で先行車を抜きに出たい時などは一段下のギアにキックダウンしてしまうことがあり、このあたりはパナメーラターボの圧倒的なパワーとの違いは感じるが、ほぼ問題にならないだろう。

グレードのヒエラルキーや高速での圧倒的な加速にこだわらない方であれば、日本では素のカイエンで十分だと断言する。日常、大パワーのパナメーラターボに乗っている私が言うのだから安心してほしい。

今回の試乗車はサスペンションがエアサスで20インチの仕様だが、想像以上に乗り心地が良かった。正直、わが家のパナメーラよりも乗り心地は良い。これは元々車の性格や、シートの厚みや硬さ、タイヤサイズと扁平率も違うので単純には比較できないが、多くの人はカイエンの方が良いと感じると思う。

前席も後席も乗ったが、全くと言っていいほど路面の不快な振動を感じないし、揺れない。以前、アメリカでメルセデスのGLSに乗ったが、10人いれば8-9人は新型カイエンの方が乗り心地は良いと思う筈だ。

GLSももちろん悪くは無い。非常に良い部類だとは思うが前席よりも後部座席での振動や揺れの感じやすさ、ノーマルモードの設定での左右の揺れ残りなどはどうしても感じてしまう。一方、カイエンは本当にそんなことを感じない。

試乗が終わった後、乗り心地が良いと思っていたわが家のゴルフ7に乗ると明らかな差を感じてしまった。「あれ?こんなにゴルフってガタガタしてたっけ??」と妻と会話をしてしまうほどだった。ゴルフ7の乗り心地は他車と比べるとかなり良い方だが、さすがにカイエンと比べるのは酷かもしれない。

さて、当初、山道に行く予定は無かったがあまりにも素晴らしい車なので芦有へ場所を移し、スポーツモード、スポーツプラスモードに切り替えてみる。スポーツエグゾーストが無いので、ハッキリと分かるような演出は無いが、脚は締まりグッとロールが抑えられる。タイトなコーナーもグイグイ回りこむ。パナメーラターボよりも、明らかに鼻先は軽い。

つくづく日本ではV6エンジンの方が楽しめると思う。しかも、適度に回転を維持してもスピードが出過ぎないので、エンジンを回す楽しみがある。

後で分かった事だが、この試乗車にはPDCCが付いていた。スポーツプラスで走ると本当にロールがしない。実際はある程度しているが乗っているとほとんど感じない。グッと四輪が地面を掴み、姿勢を乱さずコーナーを舐めるように何事もなくキレイに回り込みクリアしていく。PDCCの効果は絶大だ。もし予算に余裕があるなら付けて損はしないはずだ。

ブレーキは言うまでもなく紛れもなくポルシェ。ストロークで調整するというより、踏む強さで調整するブレーキは低速から高速まで実にコントロールしやすく、よく効く。スーパーカーから高級セダンまでいろいろ乗るが、ブレーキを踏むのが楽しい、気持ち良い、とさえ思えるクルマはポルシェ以外には無い。

今回は1時間ほどの試乗だったので高速などは体験出来ていないが、この足まわりで高速安定性が悪いはずが無いと思う。もともと私はSUVの形があまり好きでなく、何よりも車高の高さが嫌いだった。そのため、カイエンに関しては今まであまり興味は無かったが、今回の試乗で私の中でのカイエンに対する印象は大きく変わった。

単なるラグジュアリーなSUVなら他にもあるし、とにかく安楽に安全、確実に移動するなら他メーカーで良いと思う。もちろん、カイエンも安楽なのだが何かが違う。それは何かと考えると、言い古された表現だが、やはりポルシェはどの車種も純粋なドライバーズカーなのだ。常にクルマがドライバーの指示を待っている。

それは加速中でも、ブレーキング中でも、コーナーの途中でも。他のクルマにはその感覚が無い、もしくは薄いのだ。

そして、ポルシェはそのドライバーからの指示に確実に応えてくれる。しかも、限りなくズレなく思った通りに動いてくれる。まさに人とクルマがチームとなり、阿吽の呼吸で走る感覚だ。

気になる点を挙げれば、エンジン音がポルシェにしては大人しすぎるところや、アクセルの軽さなどは個人的にはやや気になるが、それを差し置いても良いクルマだ。もし予算が許すなら、正直、欲しい。SUV嫌いだった私が「欲しい」とさえ思ってしまっている。ここまで私を変えてしまう新型カイエン。

おそらく、わが家の次の家族用クルマの最有力候補になることは間違いないだろう。

以上。

…妻としては、このレビューのどの内容よりも、最後の一文がとてもとても気になるところだ…