レビュー・試乗記

ポルシェ カイエンクーペに試乗(後編)|エンジン、走りの評価やいかに?

カイエンクーペ、エンジン、ハンドリング

エンジンは走行中もとても静かだ。ロードノイズもエンジン音もかなり遮音がされており、とても快適な移動空間が手に入る。スポーツエグゾースト装着車なので、それをONにしてみるが、それでも静かな方だ。ここまで静かだと、スポーツエグゾーストはあまり要らないかもしれない。少なくとも車内で窓を閉めた状態ではそう感じた。

窓を開け、場所をワインディングに移し、スポーツモードでエンジンを少し回してみる。クーン!というV6らしい粒の揃ったいい音が聞こえる。低中回転域ではそこまで聴かせる感じではないが、高回転に差し掛かる頃から音はとても良くなる。同じエンジンを積むパナメーラ4Sよりは高音域が少ない感じで、中音域が強めな感じに聞こえる。

エンジンパワーは0-100km/hが5秒というカタログ値通りのパワー感かなと思う。今でこそ3秒台を叩き出すクルマが増えてきているので少し感覚が麻痺しているが、一昔前なら圧倒的なハイパフォーマンスカーだ。これで遅いとか、パワーがなくて困るということは無いと思うし、高速道路でブチ抜かれた、と落胆することはまず無いと思う。

トルクの出方も自然で、回っている時はターボであることはまず意識しないだろう。一方で、前述の通り、キックダウンからの加速時などは、少しトルクの出方が唐突な感じがする。これはその道路状況やシチュエーションによって、吉にも凶にもなるので、一概に良し悪しは言えない。

ハンドリングについては、カイエンの場合、車高とモードの組み合わせパターンが多いので、一概に言うのは難しいのだが、最もスポーティーなスポーツプラスモードでワインディングを走ると、やはり『SUV離れ』した運動神経であることは、誰にでも分かると思う。ロールは最小限になり、グッとボディ全体が締まった感じになるのがドライバーにハッキリと分かる。

ポルシェの中でも、今回のカイエンS クーペはモードによる違いがハッキリしている方だと思う。

特にドライバーが意識しなくても、ハンドルを操作するだけでコーナーでしっかりと荷重をかけ思った通りに曲がっていってくれる。もし一人で乗れば、普通にワインディングを楽しめるクルマだと思う。やはりこんな場面では、SUVであっても「ポルシェ」であることに違いはない。

ではノーマルモードでワインディングを走るとどうなのか?と思われるかもしれないので、印象を述べると、他社のSUVのスポーツモードくらいの感覚で走れるという表現が適切かなと思う。スポーツプラスモードなどよりはロールも大きめで、ゆったりとした挙動だが、だからといってアンダーが酷いとか、そんなことは一切無い。

一般道をハイペースで流す程度のレベルなら十分に対応できるので、誰が乗っても速く走れると思う。

カイエンS クーペ、総評

以前、ポルシェを知った頃、私はカイエンは好きではなかった。ポルシェなのにSUV。ポルシェなのに背が高く、大きい。そんなのはポルシェじゃないし、SUVを買うのに、わざわざポルシェのSUVを選ぶ意味が分からないと思っていた。だから、ディーラーで試乗を勧められても、あまり乗り気になれず断っていた時代もあった。

しかし、それからボクスターをはじめ、GT3やパナメーラを実際に購入し、通勤からサーキットまでしっかりと走り込み、そして空冷ポルシェから、往年の名車に至るまで、いろんなポルシェを幸運にも経験させていただいている。

そんな経験をした上でカイエンに乗ると、これは『中途半端なクルマじゃないな』と感じるのだ。ただ単にSUVブームだから、儲かるから、という意味で作られた『ポルシェの皮を被ったフォルクスワーゲングループのクルマ』では無い。SUVという大柄なボディや重量という制約の中で、真剣に『ポルシェ』を作ったのだなということが、今になって良く分かるのだ。

だから、カイエンを購入するにしても、911でないことに後ろめたさを感じる必要は全く無いと思うし、逆に、カイエンを買うならSUVを買うと思って買わないでほしいとさえ思う。あくまで『ポルシェ』を買い、『ポルシェ』に乗るのだと思って、意識して乗って欲しいと思うのだ。

今回のカイエンS クーペは、とても良くできた『ポルシェ』だ。ポルシェのラインナップの中では最もラグジュアリーな部類に入るだろう、パナメーラもラグジュアリーな部類だが、それよりも更にラグジュアリーな性格だと思う。ポルシェの中で、GT3などのGT系がスポーティーの頂点なら、ラグジュアリー側の頂点はカイエン系だと思う。

そのくらい、乗り心地が良く、快適で安楽さを持つ。一方で、その中でもしっかりとしたハンドリング、どこまでも走りたくなる不思議なフィーリング、圧倒的なパフォーマンスと超がつくほどコントローラブルなブレーキなどは、まさに『ポルシェ』そのもの。

カイエン S クーペ、その美しいルーフラインと、低く身構えたシルエットが好みで、かつ、街乗りよりもSUV離れした高速域での加速感、パワー感、エンジンフィーリングなどを大事にする人に最適ではないだろうかと思う。

個人的な評価

ハンドリング:
(4.0 / 5)
直進安定性:
(5.0 / 5)
低速域の快適性:
(5.0 / 5)
高速域の快適性:
(5.0 / 5)
エンジンフィーリング:
(4.0 / 5)
エンジン音:
(3.9 / 5)
ブレーキ:
(4.8 / 5)
トランスミッション:
(4.3 / 5)
Average:
(4.5 / 5)

 

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