レビュー・試乗記

【ポルシェ マカンに試乗】カイエンオーナーが乗るとどう感じるのか?

夫が、お知り合いの方のポルシェマカンターボを試乗させて頂いたということで、試乗レポートを書いてくれた。よろしければぜひ、ご覧ください。

ポルシェ マカン ターボの乗り心地

このブログではいろんなポルシェの試乗記事を書いているが、その中でなぜかマカンだけは数が少なく、弟が買ったマカンターボの記事しかない。

あれからかなり年月も経ち、私のポルシェ経験値を上がったので、あらためてマカンのレビューをしたいと思っていたところ、運良くマカンターボに試乗する機会に恵まれたので、そのレビューをしてみたい。

今回、試乗したマカンは2015年式のマカンターボになる。マカンというモデルは現時点ではまだフルモデルチェンジは行っていないので、2015年式とはいえ現行型となり、ただしマイナーチェンジは何度かしているので、これは前期型となる。

ターボにだけ許されるスクエアマフラー

エンジンは現行の2.9Lのものではなく、3.6LのV6ツインターボで400PS、トルクは550N⋅mを発生する。このクルマはスポーツエグゾーストシステムは装備されていないが、それでもエンジン音、排気音は勇ましく、SUVの中ではなかなかの迫力だ。

最高速が266km/h、0-100km/hが4.6秒を誇るだけあり、走り出してからの動力性能に不満は一切ない。低速トルクは十分以上。発進からの滑り出しは上質で、PDKのシフトショックも最低限のもの。

このクルマにはPASM付きのエアサスペンションが装着されていたが、これがとても良い。前回のマカンターボのレビューでも書いたが、マカンターボのエアサスペンションは個人的にとても好みのセッティングだ。

しっかりとタイヤの転がり感の上質さ、ラグジュアリーさを残しつつも、しっかりと接地感があり、そして、とてもフラット感も強い。ひとたびスポーツやスポーツプラスにすると、スポーツカーそのものの足回りに豹変する。

20インチRSスパイダーデザインホイール

現行カイエンの足と比較すると、ラグジュアリー性はカイエンの方が強い。ただし、誤解してほしくないのが、マカンがスポーティーでラグジュアリーさが少ないという意味ではない。

カイエンの乗り心地が良すぎるのだ。

マカンの足はヒタっと地面に吸い付くような感覚がありながらも芯がとても太く、ちょっとやそっとの横Gでふらついたり、不安定になることは決してない。荒れた路面を通過するとゴツゴツと音はするが、その衝撃はとても小さく、完全にカドは取れている。

強いてカイエンとの違いを言えば、このゴツゴツと不整地を超えた時の音と振動がマカンの方がやや大きいと感じるくらいだろうか。

しかし、これはあくまで比較論の話。普通にマカンに乗っていれば、全く乗り心地の不満などほとんどの人は感じないと思う。

マカンで峠道を走ってみる

芦有のコーナーを曲がってみると、『もっと車高の低いスポーツカーに乗っているような感じ』というのが第一印象だ。

カイエンは『車高の高いSUVだけど、かなりスポーティーに走れる』というクルマに感じるが、それをもっとコンパクトにして、車高の低いクルマを運転している感じがする。

感覚的な話で言うとゴルフ7くらいのサイズの全幅1800mm少しくらい、全高が1500mmあるかないかくらいのクルマを運転しているような感覚になる。

それだけマカンの運動神経は素晴らしく、全幅1925mm、全高が1610mmとは到底感じない運動神経だ。コーナリングの安心感、スピードなどはパナメーラやカイエンよりも、911やケイマン・ボクスターの方に近い。

S字コーナーの切り返しなども、スッ、スッと荷重移動が終わり、何事もなく気持ちよくコーナーを駆け抜ける。

ポルシェトルクベクタリングプラスが装着されている個体だそうだが、その恩恵もあるのだろう。笑うくらいよく曲がる。運転に集中している状態では、全くSUVであることなど意識しない。グイグイ切り込むようにコーナーで曲がる。

普通にスポーツカーを運転しているような感覚になり、スピードを緩め、我に返った時に「あ、これはSUVなんだ」とあらためて思う、そんな感じなのだ。

いろんな高性能車をここで運転しているが、当然マカンより速いクルマは他にもある。でも、その挙動がこれほど美しく、ドライバーに分かりやすく、かつ基本に忠実に動くクルマはなかなかない。

やっぱりそこが『ポルシェ』なんだと強く感じる。

他メーカーはこれが出来ているクルマがなかなかないのだ。人間の感性にまで訴えかける運転のしやすさ、挙動の素直さみたいなのがあるからポルシェは運転が楽しいのだと私は思う。

マカンのエンジン、トランスミッション

エンジンがパワフルなのは言うまでもなく、加速力も申し分ない。0-100km/hが4.6秒というカタログ値通りの動力性能といったところだ。スポーツやスポーツプラスモードにするとバブリング音の演出も心地よく、その気にさせてくれる。

そして、特筆すべきはトランスミッション、PDKだ。カイエンとマカンの差で大きなポイントの一つがトランスミッションにある。カイエンは通常のトルコンAT系のティプトロニックSであり、マカンはデュアルクラッチトランスミッション方式のPDKなのだ。

これは以前、聞いたところによると、カイエンは本格的なオフロードや牽引などの用途も考慮されているため、あえてティプトロニックSを用いているそうだ。

現行カイエンのティプトロニックSも素晴らしいトランスミッションだが、やはりスポーティーな走行においてはPDKには敵わない。このマカンターボに搭載されているPDKも素晴らしいレスポンス、まさに電光石火の変速だ。

しかも、変速時の音が素晴らしい。911などのPDKと同じように、「バシュン!バシュン!」と快音を響かせながらシフトアップ、そしてシフトダウンでは「ブオン!」とひと吠えしながら回転数をキッチリと合わせてくれる。

本当にこれは運転していて気持ちがいい。おそらくクルマ好きなら誰でもこれを体験すると、思わず笑顔が溢れるだろう。

マカン ≒ ( 911 + カイエン ) ÷ 2

今回、あえてゆっくり走ったり、少しスポーティーに走らせたりしながら、マカンを堪能してみたのだが、これはカイエンとは似て非なるものだ。クルマの方向性は結構違う。

試乗後、マカンはどういう人にオススメか?ということを考えてみたのだが、駐車場枠や予算を考慮しない前提で言うと、もし911やケイマン・ボクスターを持ち、2台目のポルシェとしてマカンを買うなら、それは待ったほうがいいかもしれない。

なぜなら、マカンはスポーティーさの濃度が高いので、911などと少し被るところがあるんじゃないかと思うのだ。

なので、2台目のポルシェを選ぶならこの場合は、カイエンの方が良いように思う。

一方で、911やケイマン・ボクスターが欲しいが、家族も乗せないといけないし、1台しか所有できないという制約があるなら、カイエンよりもマカンだと思う。そのくらいマカンはスポーティーさを持っており、週末にワインディングを一人で走るような用途に使っても十分に満足させてくれると思う。もしマカンを数式で表現するならこうだ。

マカン ≒ ( 911 + カイエン ) ÷ 2

今回、試乗してみて私なりにマカンというクルマの魅力はパワーにあるのではない。今回はマカンターボなので、パワーという魅力も当然大いにあったが、このクルマの本質的な魅力はそこではない。

もし、直線の加速が速く、瞬間的な速さ、刹那さを持つSUVが欲しい人は他メーカーの方が良いと思う。それよりも、この卓越したシャシーバランスと素晴らしい足回りのセッテイングが分かるオトナなクルマ好きには、ぜひマカンは乗って欲しい。

このマカンというクルマ、本当に”絶品”である。そう思わせるクルマだった。