ポルシェ・カイエン

新型ポルシェ・カイエンS クーペ試乗レビュー:V8の魅力と走行性能の進化

新型カイエンS クーペ

先日、ポルシェの新型カイエンSに試乗した。今回はそのレビューをしてみたい。このブログの記事は相変わらず「プロモーションを含みません」ので、安心して読んでほしい。

わが家では以前、カイエンE-ハイブリッドに乗っていた。今回はその経験を踏まえ、新旧モデルの比較も交えてみようと思う。

今回の新型カイエンはマイナーチェンジの範疇に入る。
外観の変更は目立たないが、フロント周りやリアのテールランプデザインは変化している。元オーナーの私でも遠目では旧モデルとの区別は難しい。

ついにフルデジタル化。真ん中のタコメーターのデザインはどこかで見たことあるような、無いような・・・

だが、内装の変化は一目瞭然だ。

シフトレバーがセンターコンソールからステアリング横に移動し、メーターもアナログからデジタルへと変わり、タイカンを彷彿とさせる。
この変更は個人的には好きだ。カイエンのように実用車としても使うクルマの場合、シフトレバーはステアリングから手を離さずにスマートに操作できるこの方式の方が良いと思う。

ここにシフトレバーがある。タイカンと同じ。

新型カイエンのセンターコンソール

今回試乗したのはクーペモデルで、アークティックグレーのボディカラーが印象的だった。乗り込むと、シフトレバーの位置変更により、センターコンソールが何か物足りない感じはする。

そのためか、センターコンソールの適度なゴチャゴチャ感がなくなったことで、先代モデルに比べ内装の高級感がやや減少したように感じるのも正直なところである。

新型カイエンのV8エンジンとハンドリング

今回からついにポルシェもキーをひねってエンジンをかける方式から、スタートボタン方式に変更してしまった。少しそこは個人的には残念だが、エンジンを始動すると、その音に心奪われる。

音量規制が厳しくなる中、このカイエンSの始動音は特筆すべきものだ。

音量もさることながら、音質の良さにテンションが上がる。このサウンドチューニングは、音量規制の中でのポルシェの一つの答えと言えるだろう。これなら、今後出てくる992の後期も期待できそうだ。

新型カイエンのV8エンジン

このカイエンクーペSにはPDCC、リアアクスルステアリング、エアサスペンションが搭載されており、走りに関するオプションはフル装備と言って良い。

走り出しからタイヤの転がり感はまろやかで、誰もがそのタイヤのひと転がり目から違いを感じるだろう。乗り心地は確実に先代モデル以上だ。V8エンジンは変なターボラグやトルク変動もほとんどなく、扱いやすい。ティプトロニックとの相性も抜群で、下手な高級サルーン以上の快適性がある。

21インチ RS Spyder Design ホイール

スポーツやスポーツプラスモードでは、新開発のエアサスペンションによって低く安定した走行が可能になる。ワインディングでもその性能を存分に発揮する。途中、横に乗っていただいていたディーラーの担当者が「ここでブレーキを少し強く踏んでみてください」と言うのだ。

少し下り坂だったが、安全を確認して少しブレーキを強く踏んでみると、ノーズダイブがほとんどない。あれだけ車高が高く、重い車体でありながら素晴らしい制御が可能だ。これには驚いた。聞くと、こういう制御が、今回のエアサスの特徴だそうだ。

カーブの際の軽快感や、車体が小さく感じるセッティングも印象的だった。バンプのある路面でも振動は一発で収束し、サスペンションの優秀さが際立つ。

最高に車高を上げた状態

車高を最も下げた状態。指2本というのはなんと911のPASMスポーツと同じ!

最も車高を下げた状態。めちゃくちゃ低い!
エアサスはこれが魅力。乗り心地もそうだけど、重心がかなり低くなるので、スポーティーに走る人にもオススメ。

運転の楽しさの次元

以前のカイエンもワインディングではよく走るし、楽しかったが、その「楽しさ」のレベルがもはや今回はマカンに近いレベルになってきているというのが、新型の特徴だ。次から次へとカーブが来るのが楽しく、SUVなのに、全くカーブに身構える必要がないので、どんどん積極的に走ろうという気になる。まだまだ、あと2往復くらいしたいと思わせるカイエンは初めてだった。

リアアクスルステアリングも効果的で、Uターン時の小回りが驚くほど良い。以前、パナメーラターボで装着していたリアアクスルよりもさらに小回りが効くように感じる。

今回のカイエンで私がとても気に入ったポイントは、何よりも排気音が心地良い。もちろん、スポーツエグゾーストのおかげだろうと思うが、爆音ではなく、本当に心地の良い音が奏でられている。これなら下品さもないし、長時間聞いていても、あまり疲れないのではないだろうか。

新型カイエンの魅力

この試乗で、新型カイエンの魅力を十分に感じた。特にSのV8エンジンは、音だけでなく扱いやすさも素晴らしい。カイエンターボGTのV8エンジンのデチューン版と聞いて、その価値を強く実感した。

HDマトリックスLEDヘッドライト。これと今回のエアサスの優れた制御技術は現時点でポルシェだけが持つ技術だそうだ。

新型カイエンの購入を検討するなら、E-ハイブリッドとの選択は難しい。ハイブリッドのレスポンスと速さも魅力的だが、V8の魅力も大きい。PDCCはカイエンのような車種には特に効果が顕著で、必須のオプションだ。

ポルシェはモデルチェンジのたびに期待を超える。新型カイエンは乗り心地、スポーティーさ、運転の楽しさの点で他のSUVとは一線を画す。車内快適装備やラゲッジスペース、7人乗りのユーティリティを重視するなら他社が良いが、そうでなければカイエンが最良の選択だと思う。