ポルシェ・カイエン

なぜわが家はカイエン E-ハイブリッドの購入を決めたのか?その決め手は?

ティプトロニックとハイブリッドシステム

さらに付け加えると、カイエンのATであるティプトロニックと、このハイブリッドシステムの相性が素晴らしい。もともと、この新型カイエンの8ATのティプトロニックを私はとても高く評価しており、そのスムーズさとギアチェンジの速さは最新のBMWのATに匹敵すると思っている。

そのATが、このハイブリッドモデルではさらに活きてくるのだ。カイエン E-ハイブリッドのモーターは、変速機を利用するタイプのものだ。たとえば、わが家にある日産ノート e-power NISMOなどは変速機を持たず、ギアは1速しかないような状態で変速という概念が無い。

しかし、カイエンの場合は8ATのティプトロニックを介してモーターは動力をタイヤに伝える。そのためモーター駆動状態であっても、1速、2速…とギアは変わっていくのだ。その際、ただでさえ変速ショックの少ないティプトロニックが、もっと滑らかになる。変速はもう全く分からない。これは瞬時に出力を制御できるモーターだから為せる技だろう。

本当に滑らかな変速で、街中でとても快適だ。

一方で、アクセルを踏み込み、モーター駆動にプラスしてエンジンがかかった時など、少しはショックがありそうなものだが、この急激なトルク変動をティプトロニックは巧みに吸収する。エンジンの回転数が少し上がり、ティプトロニックは絶妙にトルクを調整し駆動力を伝える。

このエンジン、ティプトロニック、モーターの三者が協調する制御がとても滑らかなのだ。そのため、エンジンがかかった、止まったなどは、意識してタコメーターなどを見ない限り、普通に運転に集中していたらまず気づかないレベルだ。

そして、最後に決め手となったのは、カイエンハイブリッドが持つ走りのパフォーマンスだ。最高速こそSに負けるものの、0-100km/h加速ではSを上回り、パワーは462PS、トルクは圧巻の700Nmを1000rpmから発生する。しかも価格はSより124万円も安い。

街中ではE-Powerモードで大人しく走り、スポーツ、スポーツプラスモードに変えると、カイエンは豹変する。この変わりようは最近のポルシェの中でもなかなか振り幅が大きい。

今まで燃費向上のために働いていたモーターは、パフォーマンス向上のためのアシストへと役割を変える。3LのV6ターボエンジンの音は澄んだ音色になり、回転上昇とともにモーターのアシストで、まるで2段目のターボがアシストしてくれているような感覚になる。

Sと比べて顕著に違うと思った点は、その中回転域のトルクの厚みだ。3000〜5000回転あたりの加速感は、かなり力強く、正直速いと感じる。パワーというよりもトルクの出方がとてもスポーティーに感じさせてくれるのだ。一方でエンジン音や高回転の回転フィーリングなどはSの方が優れているのも事実だ。

この感覚はE-ハイブリッドというより、『E-ターボ』みたいな表現の方がよく合うかもしれない。ポルシェのハイブリッドは、燃費よりもパフォーマンス向上のためのハイブリッドだと、聞いてはいたが、なるほど、このパフォーマンスなら納得である。918や919の流れはカイエンといえども健在だった。

次に重量が300kgほど増えているところのネガを見つけてやろうと、少し踏み込みながら、車線変更をしてみる。同クラスのSUVで、この車線変更、この挙動をすれば少しドライバーは不安に感じるだろうなという動きをあえてやってみる。しかし、「えっ?!」というくらい何事もなくスッと平行移動をしたかのような動きで車線変更は終わり、まだまだ余裕がありますよ、と言わんばかりの余裕さだ。

助手席で同乗してもらってるHさんも、

こういう動きを他メーカーのSUVでしたら少し不安を感じますよ。でもカイエンはどうも無いでしょ。

と。

確かに。しかも普通のカイエンよりかなり重いのにもかかわらず、これだったら文句のつけようがない。もちろん、サーキットやタイトなワインディングだと、さすがに重量による差は感じると思うが、一般道を走る分には全くどころか、十二分以上に満足なハンドリングだった。

無理を言って計2回ほど、カイエンのハイブリッドモデルに試乗させてもらったのだが、これらの印象からついに購入を決心するに至った。このE-ハイブリッドの制御に完全に脱帽である。家族を乗せて街中、長距離移動メインで使うことを前提にしたわが家にとっては、最高のグレード選択だったと思っている。

次回は、納車されて以降の印象を中心に、バネサスとエアサスの違い、ポルシェコネクトアプリ、燃費、電費、充電環境などについても追々レポートしていきたいと思う。

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