ポルシェにまつわる豆知識

【ポルシェって壊れやすいの?】7台のポルシェを購入し所有した経験から語る真実は?

ブログによくご質問をいただくのが「ポルシェの不具合」についてなのだが、夫がその件に関する記事を書いてくれた。よろしければぜひご覧ください。

7台のポルシェを所有してみて

今まで自分で購入したポルシェはここ5年半で7台になる。981ボクスターGTS、970パナメーラ、971パナメーラターボ、991GT3ツーリングパッケージ、964カレラ2、9YAカイエンE-ハイブリッド、992カレラカブリオレだ。

これらに乗る中で、今までどんな故障や不具合があったのかについてまとめてみることにした。

なお、故障や不具合と言っても、国産車に慣れている方からすればそれは不具合だと思われるようなことも、輸入車の世界では単なる仕様であったり、消耗品の劣化であったりすることも多く『故障・不具合』と言っても、人によって認識が違うことがあるので難しい。

そこで、今回、客観的に以下の分類に事象を分けてみることにした。

  1. 走行には影響のない故障
  2. 走行に影響はあるが走行可能な故障
  3. 外装・内装の不具合や異音等
  4. 走行不可になる故障
  5. その他、故障ではないが国産車ではあまりみられない事象

走行には影響のない故障について

これについては5件ある。

1件目は981パナメーラターボの購入直後くらいに、走行中にPSM故障、ACC(アダプティブクルーズコントロール)のエラーが出たが、エンジンの再始動で治ったという事象だ。これはその後も2回ほどあったように記憶しているが、いずれも再始動でエラーは出なくなりその後は全く事象は起きなかった。

2件目はこれも981パナメーラターボで、極稀にエンジン始動時にエンジンがかからない(始動に失敗する感じ)事象でワーニングが出る不具合だ。ただし、再始動させると二回目には必ずかかるので走行には影響はなく、その後も特に問題ないが、これはその後、数回経験したことがある。

確実に再現はできないのだが、シートが自動で調整されている途中でエンジンを始動しようとすると、事象が起こる確率が高かったように記憶している。ディーラーにも問い合わせたところ、「次に事象が起こったら入庫してください」と言われ、次に起こったら持っていこうと思っていた頃から起きなくなり、後半は全く起きなくなった。

3件目はGT3ツーリングパッケージで、シフトノブのギア数が書かれたアルミ部分が浮いてきて取れそうになった。これは保証で無償交換してくれた。GT3ツーリングパッケージのシフトノブはエクスクルーシブパーツ(特注パーツ)らしく、注文してから届くまで3ヶ月以上かかったが、シフトが新品になって少し嬉しかった。

4件目はカイエンのE-ハイブリッドで、ナビのオンラインアップデートが失敗し、ナビの起動時に毎回エラーが出るというものだ。これは今も出ており、ディーラーに一度入庫したものの完治せず、今も継続調査ということになっている。

5件目は992で、ポルシェコネクトアプリと車両の通信が上手くいかない問題だ。ポルシェコネクトアプリというのは、車両のガソリン、オイル量、走行距離、燃費、空気圧、そして現在位置などが分かり、遠隔で車両のロックなどができるスマホアプリだ。

このアプリ上には、カイエンは問題なく表示されるのに、992はエラーになって表示されないことが多々あった。

ポルシェコネクトのサポートセンターにメールで問い合わせ、何度も聞かれる同じような質問に苛立ちを隠しながら、状況を説明し、担当部署の方に確認しますというところまで持っていった矢先に正常に動作するようになった。

その後、しばらくは正常動作していたが。たまに見ると、また同じ不具合で表示されなくなることがあった。ちなみにこの記事の執筆時点で確認すると、また見れなくなっているようだ。まぁ、特に困らないし問い合わせるのも面倒なので、今は放置している。

走行に影響はあるが走行可能な故障

964カレラ2で、走行時に異臭がし、エンジンルーム内のオルタネーターベルトが摩耗し、滑っていたことで熱でベルトが溶け焦げ臭い匂いを発生していたという事象がある。これはそのまま走り続けていると発電できず、いずれ走行不能になっていたかもしれないが、匂いですぐに分かったので、ベルトを交換してもらうことで解決した。

こちらも964カレラ2での事象。ABSチェックランプがエンジンを始動すると最近、点くようになった。前からたまに点く時があったが、最近ではその頻度が高まってきたので、近日中に入庫予定だ。

外装・内装の不具合や異音等

1件目はボクスターGTSの購入直後だったが、運転席側の窓と幌の隙間から空気が漏れ、高速走行時に風切り音のような音がするというものだった。これはディーラーに確認してもらい、窓の閉まり具合を調整してもらうことで改善した。

その際、これは高速域でないと再現しにくい事象だったのでディーラーが取り合ってくれるのか心配であったが、ディーラーの担当者は「ポルシェはそういう速い速度で走るクルマですから、当然確認します」と言われ、「さすが、ポルシェ!」と感心したことを覚えている。

2件目はテールランプやヘッドライトの曇りだ。これは大雨の走行後や洗車後によく見られ、うちのポルシェは程度の差こそあれ全て多少は曇る。なので、これは私はそもそも気にしていない。それによって、ランプ内が明確に汚れるわけでもないし、明るさが落ちるわけでもなく、しばらくすると曇りはなくなるからだ。

ただ、これはポルシェ関連のSNS等を見ていると、多くの方がとても不満に思われているようだ。

3件目は室内の異音だ。これはポルシェあるあるの一つ。ボクスターは左後ろの幌の付け根辺りがかすかにキシミ音(チリチリという音)を出すし、最新の992でさえ助手席のサンバイザー辺りからキシミ音がする。

991GT3は助手席あたりから、少しキシミ音が聞こえることがあったりなかったりだが、もともと遮音など考えられていないクルマなので他の音にかき消されてしまう。カイエンはルームランプ付近からたまにチリチリ音がある。

空冷の964カレラ2にいたっては、もっとあちこちから音がするので、逆に気にならない。

いずれも、運転に集中していれば耳に入ってこないくらいの音のレベルではあるが、国産車に慣れている方や異音に神経質な方なら気になると思う。今のところ、運転に集中できないくらいの音がし始めたら、ディーラーに持っていこうと思っているが、運転している途中に忘れるレベルなので放置している。

あと、私のクルマではないが、弟が以前乗っていたパナメーラスポーツツーリスモで確かピラーの中に製造時のボルトのような物がなぜか混入していて、それが走行中に音を立てていたという事象があった。

これは相当気になったそうなので、ディーラーに持ち込み対応してもらったようだ。

走行不可になる故障

これは今のところ無い。強いてあげれば、964カレラ2でバッテリー上がりを経験したくらいだが、964でのバッテリー上がりは不具合というより『仕様』みたいなものなので、気にしていない。

その他、故障ではないが国産車ではあまりみられない事象

これは3点ある。オイルの減り、ブレーキの鳴き、そして冬場の寒い時に低速でハンドルを切ると異音が出るという事象だ。
いずれも国産車だとあまり聞かない事象で、知らない人は故障だ、不具合だとクレームをあげがちであるが、これは正真正銘、ポルシェの『仕様』である。

まず、オイルの減りについては、981ボクスターGTSで走行1万キロくらいの時に、油量低下のワーニングが出てオイルを補充した。これは単に補充するだけで解決し、その後は一切出ておらず、現在45000kmを超えた現在の状態では全くオイルは減らなくなっている。

また、971パナメーラターボでもオイルの減りは経験しており、ボクスターよりパナメーラの方がオイルの減りは早く、記憶では2万キロ近くまでは1、2回ほどオイル低下のワーニングが出て、その度に補充したことを覚えている。

しかし、その後はこのクルマもオイルの消費量は徐々に減り、クルマを手放すまでワーニングは出なかった。なお、最近のポルシェの取説では0.8L/1,000 kmまでのオイル消費であれば異常ではないので、心配はいらない。

ブレーキの鳴きについても、ポルシェは基本的に鳴くと思ったほうが良い。特に高価なオプションのPCCB(カーボンセラミックブレーキ)は鋳鉄ブレーキよりも鳴きやすく、取説にもその旨が書いてある。なお、ポルシェのブレーキの鳴きについてはこちらの記事に詳しいので参考にされたい。

3点目は寒い冬の朝などに、駐車場からクルマを出す際、ハンドルを大きく切って走り出すと「ボリボリ」「ゴリゴリ」という音がすることがよくある。これも国産車では考えにくい事象で、ポルシェやAMGなどでよく起きる現象だ。

これは簡単に言うと次の2つの理由で起きる。ポルシェは走行性能を高めるためアッカーマン・ステアリング・ジオメトリーではなくパラレル・ステアリング・ジオメトリーを採用しているからであり、かつ、高性能サマータイヤを履いているからだ。

高性能サマータイヤは7℃以下ではかなりゴムが硬くなり、ドイツでは7℃以下ではサマータイヤでの走行は禁止されているくらいだ。そのサマータイヤが温まっていない状態の冬の朝などは、ゴムが硬化しているためパラレル・ステアリング・ジオメトリーの影響で外輪と内輪の回転差が生じて、ゴムが引きづられ異音がするのだ。

なので、これも異常ではない。このポルシェ車の超低速時のゴリゴリ音については詳しくはこちらを参考にされたい。

ポルシェを所有して分かったこと

以上が私が経験してきた事象になる。これ以外には私は経験は無いが、ボクスター・ケイマンなどではPDM(電子制御エンジンマウント)のトラブルや、マカンではPTM(ポルシェトラクションマネージメント。四駆の制御)もSNS等ではチラホラ聞く。

私の経験から言うと、ポルシェの故障は走行に影響するようなものや、致命的なものは少ない。一方で電子制御系やインフォテイメント系のトラブル、そして内装の異音系が多いメーカーというのが印象だ。

もし、初めてのポルシェを買う方にアドバイスするとすれば、高いクルマだからといって『高級車』というつもりで乗らないことだ。これは私が何度も言っていることだが、あくまでポルシェは『高級』なのではなく、走行性能が『高性能』だから高価なクルマなのだ。

もし、異音もせず、ブレーキも鳴かないクルマをお探しなら、国産高級クーペやセダンを買われたほうが必ず満足されるだろう。