ポルシェ・タイカン

買って乗って分かったポルシェ タイカンの走りの素晴らしさ

妻がタイカンを買ってからはや1ヶ月半が経とうとしている。

たまに芦有ドライブウェイを走ったり、通勤、家族での移動に使う。今回は、タイカンの走りの魅力について語ろうと思う。EVとしての使い勝手は別の機会で詳しくレポートするとして。

わが家のタイカンはクロスツーリスモの4Sだ。通常時は490PSで最大出力は571PS。0-100kmは4.1秒。これでも十分すぎるパワーだが、なんと言ってもその走りのキモはシャシーセッティングにある。

街乗りの印象

まず走り出しはとても重厚かつスムーズ。パナメーラによく似ているものの、もっと雑味がなく、タイヤのひと転がり目からスムーズ。タイカンは電気自動車にはめずらしく2速ギアを採用しているが、街乗りでは変速することはまずない。そのため、電気自動車ならではの超絶スムーズな運転が楽しめる。

加速に息継ぎ感がなく、連続的に加速する。交差点でスピードを落として曲がり、再加速時のスムーズさは特筆すべき点だ。ギアがなく、瞬時にトルクが立ち上がるので、全く人間が予想する動きとの差が無い。

いや、人間の想像以上にスムーズ。

エンジンが無いので、静粛性が高いのは言うに及ばず。今回のタイカンにはスポーツエレクトリックサウンドを付けたので、ONにすると、なんとも言えない電動車らしいモーター音を車内外に響かせてくれる。これは、たまにあまりに静かで物足りないと感じる時などにはONにするととても良い。

スポーツエレクトリックサウンドは非常に良く出来ている。たとえば、加速時の音などはエンジン車なら負荷がかかるであろう場面では音が低く大きくなり、巡航時は比較的静かに。そして、減速時はエンジンブレーキの時のエンジン音のように段々と音が小さくなる。スポーツプラスなどモードを変えたときには、エンジン車のポルシェのモードを変えた時と同じように、一瞬、吹かしたような音もする。

また加速時や2速への変速時には、変速音も出してくれる。単なるお遊び的な単純な音ではないことを強くここで言っておきたい。

なので、とても街中でも楽しい。GT3の500PSは街中ではフラストレーションが溜まるだけで全く楽しくないが、タイカンの500PSは街乗りで使え、かつ楽しめる500PSだ。

発進、追い抜き、減速からの再加速、そのいずれもが右足の先に少し力をこめるだけだ。今まで乗ったどんな車よりもアクセル開度は少なくて済む。本当に楽で、かつコントローラブルなので、運転がとても楽しく感じる。EVの走りを味わうと、もうエンジン車に戻れなくなるとよく聞くが、まさにそんな感覚になるのがタイカンだ。

ワインディングでの印象

結論からいうと、めちゃくちゃ曲がる。ボディサイズや重量からは想像できないくらい異次元に曲がる。この個体はリアアクスルステアリングがついているが、それを差し引いてもよく曲がる。
重量が2.2トンもあるのに、あまりに余裕で曲がるのでどこまでタイヤが持つのかが心配になるくらいだ。

ステアリングの初期応答のフィーリングは718や992レベルにある。これは同時に所有して乗り比べている私が言うのだから間違いないと思ってもらっていいだろう。少なくとも、991や981世代よりは完全に上だ。

カーブの途中での安定感、コントロール性、安心感、どれをとっても言うこと無い。911やケイマン・ボクスター以外のポルシェの中ではマカンの運動性能も凄いが、フィーリング的にはそれ以上だ。Youtubeで清水和夫氏がダブルレーンチェンジのテストの時の速度はGT3よりもタイカンの方が速いというのも頷ける。

マカン、カイエン、パナメーラ、タイカン、これらポルシェの4ドアシリーズの中で圧倒的な運動性能とフィーリングの気持ちよさを持つのはダントツでタイカンだ。以前、サーキットでレビューした時に感じた「911によく似ている」というフィーリングは勘違いではなかったとあらためて思う。

高速道路での印象

もはや『のぞみ』である。料金所からスムーズに、なんの息継ぎ感を感じさせず、2速に入ったことも分からず、あっという間に巡航速度に達する。
思った以上にスピード感がなく、静かなままエンジンの回転振動のようなものもないので、気づいたらとんでもなく速度が上がっているということになりかねない。

超絶フラットで、バッテリーが床下に敷き詰められていることによる重心の低さはここで活きてくる。ほとんど左右に揺れることがない。PDCCはついていない個体だが、PDCCがあるかのようなフィーリングだ。
そして特筆すべきは空力の良さ。以前、試乗でタイカンに乗った時、これが空力の良さというものか、ということを初めて感じたことを思い出す。空気のレールに沿って走るかのような感覚で、911のダウンフォースのように下向きの空力効果というよりも、真っ直ぐ走るための空力効果をタイカンからは感じる。

なので、本当に高速安定性はすごい。991のGT3ツーリングや971パナメーラターボの安定感も次元が違ったが、タイカンはそれを超えている。それらよりも安心して、スピード感なく走れるポルシェだといえる。

総評

タイカンは残念ながら、リセールという面ではあまりよろしくない。なので、それが理由で敬遠する方も多いし、またEVだという理由でも敬遠する人も多い。
しかし、以前からこのブログで言っているように走りは紛れもなくポルシェだ。

『Soul, electrified. それは、電動化された魂。』

タイカンは発表された時、こんなキャッチフレーズで現れた。意図はまさに『ポルシェの魂』を宿した電動車ということなのだが、そのキャッチフレーズに偽りはない。誰がどう乗っても、ポルシェの走りを理解している人なら『これはポルシェだ』と分かるはずだ。
そのくらいポルシェらしい車に仕上がっている。そして、それに加えて、そのハイパワーを日常域で楽しめるようになっている。そこが魅力。

タイカンは買ってしっかりと乗れば、おそらくどんなポルシェよりも日常での満足感は高いと思う。少なくともわが家ではそうだ。これほど、便利で速く、かつ日常も楽しめるポルシェはタイカンがナンバーワンだ。
その性能やフィーリングの良さはリセールバリューの悪さをカバーする。それだけは言える。

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