ポルシェというのは、車種こそ少ないもののとても多くのグレードがある。
911だけでも、クーペのベースグレードにはじまり、Sモデル、GTSモデル、四駆の4モデル、4Sモデル、4GTSモデル、ターボ、ターボS、GT3、GT3RS、GT2RSそして、さらにカブリオレがあり、タルガがあるので、かなりの数になるのだ。
これらを全て試乗することは不可能だし、ディーラーの営業マンですら全ては経験できないので、その違いを明確に自分の言葉で説明出来る人はなかなか居ない。
そういう私も全てのモデルは体験できていないので、偉そうなことは言えないが、ブログをやっているので一般の人よりは数多くのポルシェを体験しているし、細かいオプションの有無の違いなども経験しているつもりだ。
今回、あくまでも参考情報にはなるが、用途別、シチュエーション別にどのグレードや車種がよりオススメかを、私の過去の経験をもとにまとめてみようと思う。
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基本的にポルシェはどのグレードでも無改造でサーキットを十分に走れる。ポルシェも「ニュルブルクリンクでレースを終えた後、ショッピングに向かえるスポーツカーは他にありません」と言っているように、もともとサーキットでの使用も考慮して作られているのだ。
普通に走行会に参加するようなレベルであれば、一日に数本走ったところで、エンジンはもちろん、油温も水温も全く問題ない。ビックリするくらい何事もなく安定するし、ブレーキも全然へこたれない。
そんな中でより適したモデルとなると、やはりGT系のモデルになると思う。GT3やGT3RS、GT2RSなどだ。ちなみに、GT3を所有していた経験からいうと、本気でサーキットを走るなら、通常のGT3よりもRS系のモデルをオススメする。
通常のGT3でも十分に速いし、まず素人ではなかなか乗りこなせないほど上級者向けのクルマではあるが、高速コーナーなどでは「ここでRSの羽があったらなぁ」、とか、「もう少し軽量ならなぁ」と欲が出てきてしまうのだ。
なので、本気で走りたいならRS系をオススメする。
私はあえて、オープン系のモデル、ボクスターやカブリオレ、スパイダーをオススメしたい。クーペの方が剛性感があっていいのでは?という声があることは百も承知だが、日本の峠道のようにタイトコーナーが多い状況では、ボディ剛性云々よりも屋根が無いことによる低重心さが、気持ちよさを生むこともある。
現にポルシェのドライビングスクールで某有名レーシングドライバー(インストラクター)に聞いた話だが、718のGT4とスパイダーを比べた時に、タイトなカーブの多いコースシチュエーションでは、実はスパイダーの方が速いそうだ。
理由は、屋根が軽量な分、重心が低くて動きが俊敏だとのこと。
また、屋根が開くことの開放感、非日常性は何事も変えられないドライビングプレジャーがある。郊外の誰もいないワインディングロードを走るなら、オープン系モデルをオススメする。
ここでいう長距離ツーリングとは、1日に500kmほど走っても疲れにくいかどうかという基準で考えてみたい。そう考えると、長距離ツーリングに必要な要素として求められるのは、1.余裕のあるパワー、2.どんな天候でも安心して走れる性能、3.高速安定性や乗り心地の良さ、が上げられると思う。
そう考えると、基本的にGT系以外の車種なら向いているので、どれを買っても不満は無いと思う。その中でもあえて、より適切なグレードを挙げると、GTS系や4駆系が向いているのではないだろうか。
圧倒的なトルクや、中回転のパワーで余裕を持って走りたいなら、ターボ系(ターボ系は4駆)が良いと思うし、GTS系は「グランド・ツーリング・スポーツ」を名乗るだけあり、本当の意味での『ツーリングパッケージ』だと思う。
パワーもありつつ、装備やオプションも充実、そしてGT3ほどのハードさや、神経を使う必要もないので、長距離向きな高性能グレードだ。なので、理想を言えばカレラ4GTSなどは最高だと思う。
一方で、どちらかというとエンジンを回し気味に走るのが好きな人ならば、もう少しアンダーパワーのSモデルや素モデルなどでもいいと思う。
デートカーに必要な要素としては、何と言っても助手席の快適性が重要だろう。
街を走る爆音スーパーカーをよく見てほしい。運転席の男性はドヤ顔で楽しそうだが、助手席の女性の表情はたいがい不機嫌そうな顔か、興味無さそうな顔でスマホをいじっているかだ。
そうなのだ。男性がデートで良いと思うクルマ、つまり音が大きくて、車高が低くて格好いい、は女性が思ういいクルマとは大きくズレているのだ。
そう考えると、ポルシェよりも、レクサスやメルセデスなどのラグジュアリーなクーペやセダンなどの方が、向いていると思う。しかし、その中でもあえて、ポルシェの中から選ぶとすると、ターボ系やタルガなどが良いのではないかと思う。
特にターボSは頂点に君臨するだけあって、911のオプション全部入り仕様。豪華な18wayのシートに身を委ね、ゆったりと流すこともできるし、踏めばGT3すら凌駕する加速性能を持つ。それに出足のしっとり感、芳醇なトルクがとても濃密な動き出しは感動モノ。これぞいいクルマといった動きをしてくれるのだ。
また、タルガはタルガバーが格好良く、どんなカフェに横付けしても、どんなホテルのエントランスに付けても絵になる美しさを持つ。しかも、足回りは専用設計で、とてもラグジュアリーな味付けだ。
911の中ではターボ系に次いで、快適さを味わえるグレードではないかと思う。
あと、その他のグレードでデートカーとして使いたいなら、PASMはあった方がよい。速度が出てしまえばPASM無しとあまり差はないが、低速ではPASMがあった方が乗り心地が良い。さらにいうと、PDCCがついていればもっと良い。
ターボSなどには標準だが、これがあると無いとではロール量が全然違い、常に車体はフラットに保たれるので、快適性が大きく増す。
街乗りの足として使うなら、低速トルクの厚みがあり、少しのアクセル操作で加速できるモデルが最も運転しやすいと思う。
いろいろ私が乗った中で、ノーマルモードで街中を走ることを前提とするなら、NAエンジン搭載モデルならS系、ターボエンジン搭載モデルなら素のモデルをオススメする。
たとえば、991の前期(NA)ならSモデル、992なら素モデルが良いと思う。理由は、NAエンジンはターボに比べるとトルクは細いので、できるだけ大排気量の方が街中などは走りやすい。一方でターボエンジンの素モデルはパワーこそSに負けるが、低回転でのターボの効きが素早く、街中ではむしろ走りやすい印象だからだ。
このターボエンジンの街中の走りやすさについては、911でもカイエンでもパナメーラでも同じように下のグレードの方が街中は走りやすいので、まず間違いないだろう。
都内にお住まいのポルシェ乗りの方などは、こういう使い方が多いのではないだろうか。平日は忙しく、移動はもっぱら社用車を利用。でも週末は大好きなポルシェでドライブをしたいが、家族サービスの時間もあるので、箱根に足を伸ばすほどの時間は無い。
乗るとしたら、早朝や深夜に空いた都内や、首都高を流して大黒などに行く程度。
そんな用途であれば、乗車時間も短いので、思いきって少々スパルタンなモデルや、高性能モデルでも良いのではないだろうか。
たとえば、GT3系や、スパイダー、GT4などのグレードは特別感も高く、週末だけの非日常を体験するには最適だと思う。
もちろん一般道ではその性能のごく一部しか味わえないので、もったいないといえば、もったいないのだが、それも一つの非日常の贅沢な時間と捉えればよい。また、これらの車種は街中での注目度も高く、所有欲も満たしてくれることだろう。
以上が、私が個人的に思うオススメの用途別・シチュエーション別のオススメになる。もちろん、人の好みや感じ方にもよるし、さらに細かいシチュエーションや用途を挙げだすと、別の結論になることもあるだろう。
なので、あくまで参考情報として利用されたい。
フェリー・ポルシェは昔、「911は、アフリカのサファリからル・マン、劇場への道、そしてニューヨークの街並みまでドライブできる唯一無二の車です』との言葉を残している。
つまり、ポルシェはとても守備範囲の広いクルマであり、かつ、そのレベルを非常に高いところで実現しているクルマなのだ。この考え方は今でも受け継がれており、GT3といえども街中を走れるし、素モデルでも十分にサーキットを楽しめる。
なので、あまり神経質に考えすぎず、自分はこういう用途で使う頻度が高いから、それならこの辺りのグレードの方がベターなのかなぁ、程度で考えてもらえれば幸いである。