限定1500台の特別なポルシェ 911 Spirit 70が3341万円で発売に

911 Spirit 70
ポルシェ・911

ここ数年、ポルシェのヘリテージモデルの発売が続いている。

今回、ポルシェが新たに発表したのは限定モデル「911 Spirit 70」だ。これは1970年代のライフスタイルを現代に蘇らせた特別なカブリオレ。世界限定1500台のこのモデルは、ポルシェの「ヘリテージデザイン」シリーズの第3弾として登場し、最新のハイブリッドテクノロジーと70年代のデザイン要素を融合させている。今回はその立ち位置や、特徴についてまとめてみた。

「ヘリテージデザイン」シリーズとしての位置づけ

911 Spirit 70は、ポルシェが展開する「ヘリテージデザイン」戦略の一環として開発された第3弾のモデルだ。この戦略では、ポルシェの歴史的なデザイン要素を現代のクルマに取り入れることで、ブランドの遺産を視覚的に表現している。

第1弾は2020年に発表された1950~60年代風の「Targa 4S Heritage Design Edition」、第2弾は2022年に登場した1960~70年代初頭をテーマにした「911 Sport Classic」(1250台限定)だった。

そして今回の911 Spirit 70は「アイコン・オブ・クール」シリーズの第3弾として、1970年代~80年代初頭の雰囲気を現代に再現している。

911 Spirit 70

70年代を象徴する個性的なエクステリア

911 Spirit 70の最大の特徴は、その外装デザインに散りばめられた1970年代モチーフの数々だ。

まず目を引くのは、本モデル専用色として新開発された「オリーブ・ネオ (Olive Neo)」というボディカラー。この深みのある濃緑色は、70年代特有の嫌味なムードを漂わせている。対照色として用いられているのは、グレーがかったゴールドの「ブロンズィット (Bronzite)」で、前後バンパー下部やホイールに施されている。

911 Spirit 70

ボンネット上には3本の黒い縦ストライプが艶消し仕上げで入る。これは1970年代当時に高速走行時の被視認性向上のためスポーツドライバーが車に貼っていた「セーフティストライプ」を現代に復刻した意匠とのこと。ボディ側面には黒のサイドデカール(Porscheロゴと丸型ゼッケン風グラフィック)も装備され、「70」番ナンバーがこのクルマのアイデンティティを強調している。

細部にもこだわりが光る。フロントフード最先端のポルシェクレストは1963年当時のヴィンテージデザインに近いものが採用され、リアには「PORSCHE」エンブレムと「911 Spirit 70」のバッジに金メッキ加工が施されている。

911 Spirit 70

「パシャ柄」が復活したインテリア

室内に足を踏み入れると、そこには1970年代のテイストが随所に息づいている。

最大の見どころは、「パシャ(Pasha)柄」と呼ばれる象徴的な市松模様のファブリックがシートや内装に復活したことだ。ブラックとオリーブ色のチェック模様で構成されたこのグラフィックパターンは、一種サイケデリックな3D効果を生み出している。

このパシャ柄は1970年代末から80年代初頭の928や911で採用された伝説的な内装デザインだ。911 Spirit 70では18ウェイ調整式のスポーツシートプラスのセンターパネルはもちろん、ドアトリムの一部やグローブボックスの内側に至るまでパシャ柄生地で張り替えられている。

911 Spirit 70

シートやダッシュボード、それ以外の内装部分は上質なクラブレザー(本革、バサルトブラック)仕立てとなっており、各所にオリーブ・ネオ色のコントラストステッチがアクセントとして追加されている。メーターパネルもレトロな演出が施され、デジタルディスプレイながら往年のアナログ計器を思わせる伝統のグリーンの文字盤デザインが採用されている。

911 Spirit 70

最新ハイブリッド技術が生み出す走行性能

911 Spirit 70のメカニズム面のハイライトは、992後期のGTSモデルと同じTハイブリッド搭載モデルであることだ。ポルシェはこれを「効率的なパフォーマンスハイブリッド」と称しており、エンジンと一体化した電動ターボチャージャー(eターボ)と400Vの高圧バッテリー、トランスミッション一体型の電気モーターを組み合わせている。

911 Spirit 70 主要スペック
ベース車両 992型911カレラGTSカブリオレ
エンジン 3.6L水平対向6気筒ツインターボ+電動ターボ+モーター
システム最高出力 398kW(541馬力)
最大トルク 610Nm
トランスミッション 8速PDK(電動モーター内蔵)
駆動方式 後輪駆動(RWD)
生産台数 世界限定1500台
価格 3341万円

駆動方式は当時の911と同じく後輪駆動(RR)を採用し、伝統のドライビングフィールを残している。電動モーターは主にエンジンの過給とパワーアシストを担うため、後輪駆動の操縦感を損なうことなく、ターボラグの少ないスムーズな加速を目指している。

往年の930ターボ(初代911ターボ)は急激なターボ効果でじゃじゃ馬的な挙動で知られたが、Spirit 70では最新ハイブリッド技術により扱いやすさと洗練性が大幅に向上。加速性能は0-100km/h 3.1秒、最高速度は時速312km/hに達する。

911 Spirit 70

コレクターズアイテムとしての価値

911 Spirit 70は、限定モデルならではのアイテムも用意される。特製クロノグラフ腕時計(文字盤にブラックの「パシャ」柄を採用)をはじめ、1970年代の雰囲気を纏ったアパレルやアクセサリーのライフスタイルコレクションも展開されている。

911 Spirit 70

さらに発表に合わせてApple Vision Pro向けの専用ARアプリまで用意されたようだ。このアプリではユーザーが1970年代風のバーチャル空間に入り込み、911 Spirit 70の好みの仕様をデザインしつつ、その時代のアイコニックなデザイン解説を楽しむことができる。

欧州では2025年4月からデリバリー開始予定で、他地域でも順次導入される。1500台という限られた生産台数、個性的なデザイン、そして911初のハイブリッドシステム搭載モデルという技術的意義を考えると、911 Spirit 70もポルシェコレクターにとっては魅力的な一台となるだろう。

Hiro

Minaの夫です。 ファッションやステータスシンボルのためにクルマは乗りません。運転して楽しく、工業製品として優れ、作り手の意思が感じられるようなクルマを好...

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