718スパイダーRSから981ボクスターGTSに乗り換えてみて感じたこと
公開日:2025.07.03

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718スパイダーRSの納車から1500キロのならし運転を終え、久しぶりに愛してやまない981型のボクスターGTSに乗り換えた。
スパイダーRSのあまりの乗りやすさに「もう981はいらないのでは?」と頭をよぎっていたが、実際に乗り比べてみると全く異なる個性を持つクルマだった。
同じボクスター系でありながら、これほど違いがあるとは正直驚いた。例えるなら、それは焼肉をタレで食べるか、塩で食べるか、のような、根本的な味付けの違いがそこにはあった。
フルバケットシートが教えてくれた正しい運転姿勢
981に乗り込んだ瞬間、最も衝撃的だったのはシートの違いだった。スポーツシートプラスを装着した981は、これまで十分スポーティだと思っていた。しかし、スパイダーRSのフルバケットシートに慣れた身体には「ソファーじゃないか」と思うほど柔らかく感じられた。
特に驚いたのは背もたれの角度だ。以前は普通だと思っていた角度が、今では「こんなに寝かせて運転していたのか」と感じるほど違和感があった。結局、フルバケット並みに背もたれを立てて調整し直すことになった。この影響はテスラなど他のクルマにも及んでおり、保存していたシート設定を見直すきっかけにもなった。
フルバケットシートの素晴らしさは、骨盤が立った正しい姿勢を作り出すことにある。頭の重さがまっすぐ背骨に伝わり、クルマが揺れても変に筋肉を使わない。頭が背骨に乗っかっているだけのような自然な状態で、疲労が格段に少なくなる。
さらに、スポーツ走行でハンドルを押すように回す際、背中でしっかりと背もたれが支えてくれるため、Gがかかってもステアリングがぶれない。運転の安定性が飛躍的に向上するのだ。この感覚を味わってしまうと、他のシートでは物足りなさを感じてしまう。
乗り心地の違いが示す設計思想の差
次に印象的だったのは乗り心地の柔らかさだった。スパイダーRSも決して乗り心地が悪いわけではない。かなり硬いが足がよく動くため、不快な揺れはほとんどない。しかし981に乗り換えると、驚くほど柔らかく感じる。「ロードスターにでも乗っているのか」と思うほどだった。
ただし、これは決して劣っているという意味ではない。
味付けが全く違うのだ。981はある程度の柔らかさとボディのしなやかさで、ドライバーの操作を一旦クルマが吸収してから路面に伝える包容力を持っている。一方、スパイダーRSはドライバーの操作がダイレクトに路面に伝わる特性を持つ。
巡航時や前車追従時など、一定の速度で走る場面では981の方が楽に感じる。しかし、マイペースで走れる道路では、スパイダーRSのダイレクト感が感動的で楽しい。981も同様にマイペースで走る時は楽しいが、サスペンションをしならせながら走る楽しさがある。楽しさの種類が根本的に異なるのだ。
音の個性が語る二つのキャラクター
エンジン音の違いも興味深い。排気音と吸気音、どちらを重視するかで2台の個性が分かれる。
スパイダーRSはGT3エンジン特有の吸気音とメカニカルノイズが支配的だ。エンジンが真後ろにあり、エアインテークも耳のすぐそばにあるため、運転している本人には圧倒的に大きな音として聞こえる。
一方、外で聞くと981の方が排気音は大きいのではないかと思う。実際、家族は981だと音で帰宅が分かるが、スパイダーRSではそこまで分からないと言う。運転している本人の感覚とは逆なのが面白い。街中で3000-4000回転程度で走っている分には、981のスポーツエグゾーストオンの方がうるさく感じる。
音質も全く違う。
GT3エンジンを積むスパイダーRSは重低音気味で、9000回転まで回せば甲高い音になるが、普通に走っていると低音寄りだ。981は少し高い音で、排気音の気持ちいいクワーンという音が続く。排気音を楽しみたいなら981、吸気音やメカニカルノイズ、超高回転域の音を聞きたいならスパイダーRSという住み分けができる。
上位モデルが下位を包含しないポルシェの哲学
当初は被るかもしれないと考えていた2台だが、乗り比べてみると全く異なる個性を持っていた。特に我が家の981がマニュアルということもあり、余計に被るところが少ないのだろう。PDK同士だったら重複する部分が多かったかもしれない。
スパイダーRSはボクスター系の最上位モデルだが、981を完全に包括する存在ではない。これはポルシェのどのグレードにも言えることで、上位だからといって下位モデルの特徴を全て包含するメーカーではない。各グレードには各グレードの特徴と面白さがある。これが他のメーカーと大きく違うところだ。
最後に、久しぶりに981で山道を攻めて走ってみたが、柔らかいながらもよく走り、よく曲がる。ゆっくり走っても楽しく、本気でムチを入れればそれに対応してくれる懐の深さがある。981には981にしかない魅力が確実に存在する。
結果として、一時は売却も考えた981だが、やっぱり手元に残すことに決めた。同じボクスターでも味付けが全く違う。
この2台の関係性を理解することで、ポルシェというブランドの奥深さを改めて実感することができた。
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