ポルシェ718の4リッターエンジンはGT3と同じ系統なのか?GTS4.0やスパイダー、GT4のエンジンを紐解く
公開日:2025.05.28

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ポルシェオーナーの間でよく議論される話題がある。
718 GTS 4.0、スパイダー、GT4に搭載される4.0L水平対向6気筒NAエンジンは、果たしてGT3のエンジンと同じ系統なのか?
いくつかの動画などでは、同じ系統だと主張する意見もあり、私もこのことで質問を受けることがたまにある。今回、この疑問に対して、調査したところ明確な答えが見えてきた。
結論から述べると、718 GTS 4.0、スパイダー、GT4のエンジンとGT3のエンジンは同じ系統ではない。むしろ718の4.0Lエンジンは、独自の進化を遂げた優れたパワーユニットであり、その技術的背景には興味深い開発ストーリーが隠されているのだ。
エンジンコードが物語る真実
ポルシェのエンジンを理解する上で、エンジンコードは重要な手がかりとなる。718 GTS 4.0、スパイダー、GT4に搭載されるエンジンのコードは9A2 EVOだ。一方、GT3のエンジンコードは9A1である。この違いは単なる記号の差ではない。全く異なるアーキテクチャーを示している。
9A2 EVOエンジンのルーツを辿ると、911カレラ(992)の3.0Lターボエンジンにたどり着く。つまり718の4.0Lエンジンは、ターボエンジンをベースに自然吸気仕様として新たに開発されたパワーユニットなのだ。対してGT3の9A1エンジンは、レーシングカーのDNAを受け継ぐ専用設計のエンジンである。この系譜の違いこそが、両エンジンの本質的な差異を表している。
技術仕様から見る相違点と共通点
ボア×ストロークを見ると、両エンジンとも102×81.5mmと同じ数値を示している。
排気量も718側が3995cc、GT3が3996ccとほぼ同等だ。しかし、この表面的な類似が同じエンジンであることを意味するわけではない。
最も顕著な違いは回転リミットに現れる。718 GTS 4.0の回転上限は7,800rpm(スパイダー、GT4は8000rpm)だが、GT3は9,000rpmまで回る。この差は単なる設定の違いではなく、エンジン内部の設計思想が根本的に異なることを示している。パワー出力も718 GTS 4.0の400PS(スパイダー、GT4は420PS)に対し、GT3は500PS以上を発生する。さらに718には燃費向上のための気筒休止機能が搭載されているが、GT3にはこの機能はない。
992ターボエンジンとの意外な関係性
興味深いことに、718の4.0Lエンジンは992世代の911ターボエンジンと深いつながりを持っている。両者は同じ9A2 EVOエンジンファミリーに属し、基本的なアーキテクチャを共有している。これは偶然ではない。ポルシェのモジュラー戦略の成果である。
具体的には、エンジンブロックやクランクケースの基本構造が共通している。718の4.0L NAエンジンは、実質的に992の3.0Lターボエンジンからターボチャージャーを取り除き、排気量を拡大した「自然吸気版の兄弟エンジン」と表現できる。この設計により、ポルシェは効率的にラインナップ全体でエンジンの共通化を図りながら、各モデルの特性に応じた最適化を実現している。
同じ生産ラインで製造可能な設計となっていることも、この関係性を裏付けている。開発コストの削減、品質管理の統一、生産効率の向上といったメリットを享受しながら、718独自の魅力的なエンジン特性を実現しているのだ。
718の4.0Lエンジンが持つ独自の魅力
GT3のエンジンと同じ系統でないからといって、718の4.0Lエンジンの価値が下がるわけではない。むしろ、このエンジンには独自の魅力がある。911カレラのターボエンジンをベースとしながら、自然吸気エンジンとして新たに生まれ変わったエンジンなのだ。
7,800rpmまでの滑らかな回転上昇、400hpの十分なパワー、そして何より自然吸気エンジン特有のリニアなレスポンス。これらの特性は、ミッドシップレイアウトと相まって、718独特の運動性能を生み出している。街中での快適性やワインディングロードでのスポーツドライビングにおいて、このエンジンの魅力は十分に発揮される。GT3とは異なる方向性でありながら、同等に魅力的なキャラクターを持っている。
さらに気筒休止機能の搭載により、日常使いでの燃費性能も考慮されている。サーキット専用マシンのようなGT3とは異なり、普段使いからスポーツ走行まで幅広くカバーできる懐の深さも718エンジンの特徴だ。この実用性とスポーツ性のバランスこそが、718の4.0Lエンジンが持つ真の価値といえるだろう。
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コメント ( 1 )
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こんにちは
GT4のエンジンですが毎年エンジンが壊れる私からみるとかなりの不良品です。
これまで壊れた経緯から鑑みるに
1回目 時々峠で8000rpmまで回す
ブローバイからオイルが入ってピストンとバルブがクラッシュする
2回目 オイルが燃えないのかと思い発進時にも8000rpm近くまで回し、時々峠で8000rpmまで回す
エンジンに入るオイル量は減ったがラッシュアジャスターが壊れる
3回目 リミットを6000rpmに変えてみる
オイル切れでカムを齧ってしまう
4回目 6000でも回しすぎと指摘されたのでリミットを4000rpmに変えてみる
同じくカムが齧ってしまう。
音的にはラッシュアジャスターかどこかも壊れていると思うが、ポルシェ本国の回答待ち(今ここです)
どう考えてオイルが柔らかすぎるので油膜が切れてしまっているのかと思います
冬の外気温が8度くらいでも渋滞に入ると油温も水温も100-110度くらいには上がってしまうエンジンですし。
おそらくこのエンジンで日本での走行テストは行ってないのではないかと推測しています。
他のドイツメーカーは日本の特殊な気象を理解して走行テストをしてますが、ポルシェのGT系がテスト走行しているという
話は聞いたことがないので。
私が知る限り10台以上が壊れてエンジン交換していますし、あまり走らない方が保証切れて壊れてショップに
持ち込んであけてみると・・・
ショップではなんじゃコレ状態だそうです。