ポルシェ スパイダーRS納車!これこそGT3の民主化を実現したストリート最強マシン
公開日:2025.06.10

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レーシングイエローが映える!スパイダーRSとの初対面
ついに待ちに待った718スパイダーRSが納車された。初めて対面したこのレーシングイエローは、本当に映える色だと感じる。最近の言葉で表現するなら、まさに「映える」色の代表格だろう。どんな景色にも負けない存在感を放っている。
今回のカラーリングでは、黄色という膨張色をあえて黒で抑え込むデザインを採用した。PCCBを黒く塗装し、ホイールも黒のままにすることで、黒の割合を多くすることで黄色が持つしつこさとのバランスを取っている。内装にも黄色のステッチを全面的に採用し、ハンドルの付け根部分にはコラムレザーオプションで黄色のステッチを入れた。この統一感は偶然の産物ではない。
実は、スパイダーRSには元々触れない黄色の部分が存在する。
ステアリングのセンターマークやメーターの針が黄色なのだ。これらの要素に合わせて内装を黄色で統一し、それに呼応して外装も黄色に決断にしたという経緯もある。つまり、このクルマ自体が持つ黄色のアクセントから発想を得たカラーコーディネートなのである。
街中でも楽しめる!GT3エンジンの新たな魅力
納車後400キロほど慣らし運転を行った中で、まず驚かされたのはエンジンの始動音だ。ディーラーから出る際のコールドスタート時の音は、今まで乗ってきたポルシェの中でも最高クラスの迫力を誇る。981や991GT3ツーリングも相当な音量だったが、スパイダーRSはさらに上を行く。この音だけで、ただ者ではないクルマだと確信できる。
PDKはクリープのないタイプで、アクセルを軽く踏んでゆっくり走り出すGT3系と同じ仕様だ。最初はクリープがないことに戸惑うかもしれないが、すぐに慣れる。街中での乗り心地は予想以上に良好だった。確かに足は硬い。フェアレディZニスモよりも明らかに硬いセッティングだが、振動収束性が優秀なため不快感は皆無だ。
まっすぐ走っている限りでは、RSという名前から想像するほどガチガチな接地感はない。
以前乗っていた718ケイマンTとそれほど変わらない印象で、高速道路での巡行時は普通の718と遜色ない快適性を保っている。981のボクスターGTSと比較しても違和感をほぼ感じないレベルだ。これは日常使いを考える上で非常に重要なポイントである。
どんな速度域でも響く!GT3エンジンの官能的サウンド
このクルマの最大の特徴は、どんな速度域、どのギアでも素晴らしい音を聞かせてくれることだ。
屋根を閉じた完全クローズ状態でも十分に魅力的な音が響く。ただし、981や986、987のような一般エンジンの心地よい音とはまた異なる。スパイダーRSはGT3のカップカーエンジンそのものを搭載しているため、レーシングエンジン特有の野性味あふれる音質を奏でる。
高速道路で7速巡行している際は比較的静かだが、そこからアクセルを踏み込むと7速のままですらグワーンという迫力ある音が響き渡る。吸気音とエンジン音が絶妙に組み合わさり、どんな速度域からでも気持ちの良いサウンドを楽しめる。これはGT3ツーリングにも981にもなかった特徴だ。シフトダウン時の音はさらに魅力的で、4000回転程度の慣らし運転範囲内でも十分に楽しめる。
興味深いのは、スポーツエグゾーストをオンにする必要がほとんどないことだ。むしろオンにすると低音が強すぎて、「ここまでは不要」と感じることが多かった。標準状態でちょうど良いバランスの音量と音質を実現している。
PDKの進化とオープンエアの魔法
PDKの性能はGT4RSと同等で、まさに電光石火の変速を実現している。
5速から4速、3速、2速と連続してシフトダウンする際の操作感は格別だ。操作した瞬間に切り替わり、派手なブリッピングで回転を合わせながらリズミカルに変速する様子は、聴いているだけでも気持ちが良い。マニュアルがないことを惜しむ声もあるが、スパイダーRSやGT4RSにおいては、このPDKのためにお金を払う価値があると断言できる。GT3のPDKよりも明らかに優秀だ。
屋根の開閉作業は一人でも十分可能だ。操作自体は難しくなく、特別な力も必要ない。唯一コツが必要なのは、最後に幌を丸めてエンジン上部のトランクスペースに収納する工程だ。丸め方が悪いとトランクが完全に閉まらず、わずかに浮いた状態になってしまう。しかし、コツさえ掴めば3〜4分程度で完了する。
屋根を開けてワインディングを走ると、このクルマの真の実力が現れる。まっすぐ走っている時はRSらしさを感じにくいが、屋根を開けて山道を攻めると一変する。剛性感が格段に向上したような感覚になり、これぞGT系の足回りという気持ちの良いハンドリングを披露してくれる。路面をしっかりと捉える感覚は素晴らしく、今まで乗ってきた2ドア系ポルシェの中でも1位2位を争う楽しさだ。
3つの音を楽しむ贅沢と日常使いの両立
スパイダーRSには「日よけモード」という独特な機能がある。リアガラスのみを取り外し、屋根は残した状態にできるのだ。この状態では後方からの音が最もダイレクトに伝わってくる。つまり、クローズ状態、日よけモード、フルオープンの3種類の音を1台で楽しめるという贅沢な仕様になっている。
足回りの硬さも絶妙なバランスを保っている。開発陣のインタビューでも語られているように、GT4RSよりもストリート寄りにチューニングされたダンパーとスプリングにより、一般道での使い勝手が大幅に向上している。これまでのGT3系では足の硬さもさることながら、低速域でのトルク不足や、ギア比の高さによる回転域の制限が問題だったが、スパイダーRSは根本的に異なるアプローチを取っている。
ギア比が非常に低く設定されているため、街中でも気持ちよく回せるのだ。回転を上げてもそれほど速度が出過ぎないため、楽しめる。交差点での減速からの再加速も自然で、GT3エンジンの低回転トルク不足を全く感じさせない。私が所有している981ボクスターGTSの良さすらも包含しているような印象を受ける。
GT3の民主化を実現した究極のストリートスポーツ
スパイダーRSの魅力をまとめると、低いギア比によりどんな速度域・どのギアでも楽しめるエンジン特性、ストリートにフォーカスした乗り心地、そして3種類の音を楽しめるオープントップ機構に集約される。これらの要素が組み合わさることで、従来のGT3では実現できなかった日常使いとスポーツ性能の両立を達成している。
GT3に憧れて購入したものの、結果的に短期間で手放してしまう人は少なくない。
そうした経験を持つ人にこそ、このスパイダーRSを体験してほしい。このクルマはまさに「GT3の民主化」を実現した存在だ。レーシングエンジンの魅力を日常的に楽しめる稀有なマシンとして、ポルシェの新たな可能性を示している。
技術的な妥協を排しながらも実用性を確保したスパイダーRSは、ポルシェが目指すスポーツカーの理想形の一つと言えるだろう。GT3の血統を受け継ぎながら、より多くの人が日常的に楽しめるクルマに仕上がっている。これこそが真の意味での「民主化」なのかもしれない。
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