ポルシェは911だけが販売台数を伸ばした|ポルシェの1〜9月の販売実績データを読む
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ポルシェが2026年1〜9月の世界の出庫台数を発表した。全体が減るなかで、911だけが数字を伸ばした。
全体は16%減、911だけが12%増
減ったモデルが並ぶなかで、911だけが増えている。
世界の出庫は178,532台で、前年の212,509台から16%減った。そのなかで911は42,217台と、前年より12%増えた。モデル別の数字は次のとおりだ。
| モデル | 2026年1〜9月 | 前年比 |
|---|---|---|
| カイエン | 59,586台 | ▲2% |
| マカン | 51,025台 | ▲21% |
| 911 | 42,217台 | +12% |
| パナメーラ | 13,714台 | ▲35% |
| タイカン | 8,699台 | ▲31% |
| 718 | 3,291台 | ▲79% |
| 合計 | 178,532台 | ▲16% |
タイカンは8,699台だった。911はその約5倍にあたる。718の79%減は、昨年10月に生産を終えたことによるもので、事情がまったく違う。ガソリンの718についてはこちらの記事に書いた。この表だけを見ると「911が人気で、タイカンは不人気」と読みたくなる。私の読み方は少し違う。
公式は「価値重視」、私は「売り方を変えた」と見る

以前乗っていた992.1カレラT
ポルシェは、911の需要が引き続き非常に強いと説明している。
販売・マーケティング担当取締役のベッカー氏は、投資家向け説明会(Capital Markets Day)で示した「value over volume」、つまり台数より価値を重んじる方針を挙げた。さらに、GTS、Turbo、GTといった上位グレードの比率が高く、特に911でその傾向が強いという。お客様は意図して最も特別な仕様を選んでいる、というのがポルシェの説明である。
私はこれを、利益率の高い高価格の上位モデルを積極的に売るようになった結果だと見ている。お客様の好みが急に変わったのではない。売る側の力の入れ方が変わったのだ。911の上に噂される新しいフラッグシップについても、超高性能か超高級かを考えた記事で同じ流れに触れた。
以前、ポルシェは「100人のお客様で100台の需要があったら、99台までしか売らない」とよく言っていた。生産枠を少し絞り気味にして、欲しい人が少し待つくらいにする。それがポルシェの売り方だったと思う。ところが最近の911の売り方を見ていると、生産枠を結構広げてきている印象を受ける。これは数字で確かめた話ではなく、ブログ読者さんの声やSNSの情報から調べた私の印象である。絞らずに作れば台数が増えるのは当然だろう。
EVが伸びないから、911の上位モデルを売る

ポルシェ タイカン
なぜ今、911なのか。前提にあるのはEVの伸び悩みだと思う。
タイカンは前年から31%減った。ポルシェが力を入れてきたEVのスポーツカーが思うように売れなければ、その分をどこかで埋める必要がある。そこで、確実に売れて利益も大きい911の上位モデルに力を入れた。911が伸びたのは、EVの不振を埋める動きと見ると筋が通るのではないか。タイカンが売れない理由とリセールについては以前の記事にまとめた。電動カイエンは、6月末に引き渡しが始まってから7,002台出ている。だが、新型なので出だしが良いだけだと私は見ている。
中国も合わせて見ておきたい。中国は33%減ったが、ポルシェは短期の台数より長期のブランドを優先すると説明している。全体を見れば台数を追っていない。それなのに911だけは増えている。911は「絞らずに売るモデル」に変わったと言えるのかもしれない。
Euro 7の前に、GT/RS系を売り切るという面
もう一つ、規制の動きも関係していると私は見ている。
Euro 7とは、EUが定めた欧州の新しい排ガス規制である。乗用車には2026年11月29日から新しい型式に、2027年11月29日からはすべての新しいクルマに適用される。GT系、特にRS系のエンジンは、規制が本格的に始まる前に売り切ろうとしている面もあるのではないか。これはあくまで私の推測だ。
まとめると、911の伸びは人気が急に高まった結果というより、売り方を変えた結果だと私は見ている。生産枠を絞らず、利益の大きい上位モデルを積極的に売り、規制の前に売れるものを売る。その流れのなかで「99台までしか売らない」という昔の流儀がどう変わっていくのか、これからも注目していきたい。
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