超高性能か、超高級か|911の上に噂されるポルシェ新フラッグシップを考える

ポルシェ 911 GT1
ポルシェ・911

公式は「検討」まで、名前もエンジンも噂の段階

911の上に、新しいポルシェが立つかもしれない。

3月20日の記事で、私はCEOのマイケル・レイタースが年次記者会見で語った方針を取り上げた。より高いマージンのセグメントで成長するため、製品ポートフォリオの拡大を検討するという内容だ。対象は911と718という現行の2ドアスポーツカーの上、そしてカイエンの上である。背景には、2025年度の営業利益が56.4億ユーロから4.13億ユーロへ落ち込み、営業利益率が1.1%にとどまった現実があった。ポルシェが新しい稼ぎ頭を探すのは自然な流れだ。

それから半年。9月下旬、Handelsblattの報道を起点にMotor1やRobb Report、Carscoopsが続報を伝えた。社内呼称とされる「S1」、フラット8、約50万ユーロという言葉が並ぶ。10月7日の投資家向けイベントでプレビューされる可能性にも触れている。ただし、どれも未確認だ。ポルシェ広報はRobb Reportに「将来の製品について憶測やコメントはできない」と答えている。公式に決まっているのは、10月7日にStrategy 2035の詳細が示される予定であることまでなのだ。

限定の技術ショーケースと「常設の上」は別物だ

911が常に頂点だったわけではない。

1985年の959、1997年の911 GT1、2003年のカレラGT、2014年の918スパイダー。ポルシェは折に触れて、911の上に特別な一台を置いてきた。959は1987年から88年にかけて292台、カレラGTは2006年までに1,270台が作られている。ル・マン用に開発されたV10を積むカレラGTも、887hpのプラグイン・ハイブリッドを持つ918も、レースで鍛えた技術を公道へ移すための少量のショーケースだった。その技術は、やがて量産のポルシェへ還元されていくことになる。

ポルシェ 959

photo by Porsche Newsroom

とはいえ、限定だからコレクション用だったと片付けるのは乱暴だろう。ポルシェ自身、959は日常使用性も目指したクルマだと説明している。カレラGTも、レーシングドライバーでなくても走らせられるよう調律されたという。限定であっても、走らせる思想は貫かれていたのである。だから噂の新型がこの系譜に連なる期間限定の技術の塊なら、私は素直に歓迎したい。気がかりなのは、それが911の上に常に居座るレギュラーモデルになる場合だ。

ポルシェ カレラGT

photo by Porsche Newsroom

Race on Sunday, Drive on Monday

日曜にレースをして、月曜はそのクルマで出かける。

以前こちらの記事で、私は「Race on Sunday, Drive on Monday」という言葉を紹介した。1950年代、多くの356ドライバーが掲げていたモットーである。ニュルブルクリンクを走った直後に、そのまま買い物へ行けるスポーツカー。ポルシェは超高性能のクルマであって、超高級のクルマではないと私が考える理由は、この言葉に集約されている。どれほど速くても、日々走らせてこそ意味を持つのがポルシェなのだ。

ポルシェ 918スパイダー

photo by Porsche Newsroom

超高性能を普段の道でも楽しめることに、ポルシェの価値があると私は思う。ところが、報道上の約50万ユーロという噂を前提にすると話は変わってくる。飛び石や駐車場のドアパンチを気にして、ガレージに眠るコレクションになりやすいのではないか。それは356のドライバーたちが描いた姿とは、ずいぶん遠いと感じる。

株主の方を向くポルシェへの小さな不安

最近のポルシェを見ていると、少し心配になる。

限定のクルマの発表が続き、その多くは走りの中身より、内装の豪華さや特別な仕立てを売りにしているように映る。業績のためなら手段を選ばなくなってきたのではないか。私には、ポルシェが株主の方ばかりを見ているように見えてしまうのだ。もちろん、営業利益が9割以上落ちた会社が収益を立て直そうとするのは当然である。Strategy 2035の柱の一つ「ブランドと顧客」でも、スポーツカーDNAや走る歓びにさらに集中すると公式に説明されている。

911には専用のパフォーマンス・ハイブリッドを用い、完全電動の911は作らないとも明言された。その言葉は心強い。911の走りを守る意思が読み取れるからだ。ただ、高く売れる上位モデルを常設することと、走る歓びに集中することは、必ずしも同じ方向を向かない。10月7日に何が語られるにせよ、新しい頂点は買い物にもサーキットにも連れ出せるクルマであってほしい。ポルシェがポルシェであり続けるために、私はそれを願っている。

Hiro

Minaの夫です。 ファッションやステータスシンボルのためにクルマは乗りません。 運転して楽しく、工業製品として優れ、作り手の意思が感じられるようなクルマを...

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