ガソリンの718は、もう戻らない|私が718のEV化に賛成する理由

ポルシェ 718ボクスター EV プロトタイプ
ポルシェ・ボクスター

718は電気だけに。10月7日の投資家向け説明会で公式に

718は、電気だけのクルマになる。ポルシェ自身がそう決めたのだ。

10月7日、ポルシェAGはヴァイザッハ開発センターで投資家向け説明会(Capital Markets Day)を開き、2035年に向けた新戦略「Sportwagenschmiede ’35」を発表した。公式リリースによれば、製品ラインアップの拡充は完全電動の718ボクスターとケイマンから始まるという。718について書かれたのは「all-electric」だけで、ガソリン版の記載はない。

InsideEVsは、噂だけでなくポルシェ自身の以前の発言にも終止符を打ったと報じた。デビューは来年2027年で、初の通年生産となる2028年に販売を支える見込みとなる。同時に、派生モデル約20%削減と9,000人の削減も示された。ミヒャエル・ライタースCEOは「911は決して電動にならない」とも語っており、911は電動化せず、718は電気に振り切るということだろう。

「上位の718にはガソリンを残す」はなぜ消えたのか

ほんの1年前まで、話は違っていた。

718の電動化が初めて発表されたのは2022年だ。計画は遅れを重ね、ガソリンの現行718は2025年10月に生産を終えた。2025年9月19日、当時のオリバー・ブルーメCEOのもとで発表された製品戦略の再編では、投資家向けスライドに「新しい718の上位にガソリンの派生モデル」と書かれていた。海外メディアは、スパイダーRSやGT4 RSのような上位モデルがガソリンで続くと読んだのである。

今回、その話は消えた。広報責任者のマティアス・ラウター氏はMotor1に対し、ガソリンの718の復活は正式に承認されていたわけではないと説明している。それでも、ガソリンのボクスターとケイマンが戻ってこないことに変わりはない。理由について、ポルシェの明確な説明は見当たらないのが現状だ。2026年2月にはBloombergが、ライタースCEOが開発の遅れとコスト増を理由に電動718そのものの中止も検討していると報じていた。あくまで推測だが、電気とガソリンの2本立てを続ける余裕はなかったのかもしれない。

電池はエンジンがあった場所に。Car and Driverの同乗記

ポルシェ 718ボクスター EV プロトタイプ(サイド)

photo by Porsche(via Car and Driver)

では、電気の718はどんなクルマになるのか。

Car and Driverのケイレブ・ミラー記者は、ヴァイザッハのテストトラックでプロトタイプの助手席に乗り、「驚くほど見慣れた感覚だった」と書いた。電池は床下ではなく、ガソリンの718でエンジンがあった座席の真後ろに積まれ、ボディ構造にも組み込まれる。ポルシェはこれを「E-Core」と呼び、ミッドシップの走りの性格を残すためだとしている。後輪側にかかる重量の割合は、ガソリンのボクスターが59.8%、718 EVが55.2%である。

床下に電池がないぶん着座位置は低い。記者は、その低さと全体のプロポーションがガソリンのボクスターに驚くほどそっくりだと書いている。後輪駆動のプロトタイプはコーナーにすっと向きを変え、フラットに曲がった。重くなる可能性は高いが、ハンドリングへの目立った悪影響は感じず、縁石に乗ってもサスペンションは比較的しなやかだったという。800VシステムにE-Shiftも載るが、出力や航続距離、価格は未発表である。

このレイアウトは、2024年12月の記事「次期718EVの開発状況」で、当時の研究開発責任者シュタイナー氏の発言として紹介した「コア」レイアウトそのものだ。数字の上でも姿勢の上でも、718らしさを残そうとしていると感じる。

ガソリンで作り直しても、もう同じ718にはならない

率直に言うと、私は今、718をEVだけにする判断に賛成だ。

ユーロ7など非常に厳しい環境規制や騒音規制が始まる中で、ガソリンエンジンを作っても、どうせ静かでおとなしいものしか作れないだろう。エンジンのマッピングも燃費を稼ぐために、低速で非常に不自然なものになると私は予測している。それならば、はるかに運動性能の高いEVで作ってほしいのだ。

ミッドシップの良さとは、重量配分の数字なのか、エンジンの音と軽さなのか。E-Coreは、後軸55.2%と低い着座位置という数字の方を守ろうとしている。一方で音は、規制の中で作る新しいガソリンエンジンでも戻ってこない、というのが私の見立てである。どちらにしても、新しいガソリンの718で音は取り戻せない。ならば運動性能で勝るEVで、と考えるのが自然ではないか。

2025年2月の記事「ポルシェ718ケイマンEV:2026年登場予定の電動スポーツカーの最新情報」で、私は「タイカンですらあれだけの運動性能とドライビング・プレジャーをもたらしてくれるのだから、よりコンパクトな718のEVは、相当に運転が楽しいだろう」と書いた。登場時期の予想こそ外れたが、タイカン ターボGTの俊敏性を知る今も、その期待は変わらない。

スパイダーRSは最後の1台ではない。残すなら981GTSと987スパイダー

718スパイダーRS

わが家の718スパイダーRS

手元の718スパイダーRSは、まだしばらく手放さない。

GT3のエンジンを積み、PCCBを備えたこのオープンは、ガソリン718の頂点と呼んでいい。私が最も気に入っているクルマの一つで、非常にいいクルマだ。それでも、最後まで残すクルマにはならないと思う。

ガソリンのボクスター/ケイマン系として最後まで残したいのは、運転の中毒性が高い981ボクスターGTSと987ボクスタースパイダーの方だ。6速MTの981GTSも、スポーツエグゾーストを付けた987スパイダーも、自然吸気の音と軽さが持ち味である。

ポルシェ 981ボクスターGTS

981ボクスターGTS

987ボクスタースパイダー

987ボクスタースパイダー

718 EVは、ミッドシップらしい重量配分と低い着座位置、そして高い運動性能を求める人に向いているだろう。逆に、エンジンの音を味わいたいなら、ガソリンの718が手に入るうちに向き合っておく方がいいかもしれない。ポルシェには、E-Coreが守ろうとするミッドシップの走りを、EVならではの運動性能で磨き上げてほしい。

Hiro

Minaの夫です。 ファッションやステータスシンボルのためにクルマは乗りません。 運転して楽しく、工業製品として優れ、作り手の意思が感じられるようなクルマを...

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