タイカンはなぜ売れないのか|ターボGTオーナーが考える、故障ではなく「リセール崩壊」という本当の理由

タイカン4Sクロスツーリスモ
ポルシェの買い方

タイカン失速の数字と、Xで語られた「故障説」

タイカンの失速が、いよいよ数字ではっきりしてきた。

2026年10月3日、Yahoo Financeは「ポルシェ、EV販売と中国の失速でガソリン車回帰に賭ける」と報じている。上半期はマカンEVが40%減、タイカンが25%減で、伸びたのは911だけである。HSBCも「BEV普及の鈍化に不意を突かれた」とコメントした。ポルシェ公式の数字でも、タイカンの世界販売は2年続けて減り、2025年は16,339台まで落ち込んだのだ。公式は理由を主に「電動化の普及の減速」と説明している。

この記事を引用したXのポストに、私は目を留めた。

10月4日、ある海外のアカウントが「タイカンはデザインの傑作だったが欠陥や問題が多く、オーナーはたびたびディーラーに通った。だから多くのポルシェ乗りが手放した。ポルシェはそれを『ポルシェの客はEVを望まない』と誤解している」と書いたのである。要するに、故障が多いから売れなかったという見立てだろう。2台のタイカンがあるわが家から見ると、この「故障説」には半分しか同意できないと感じる。

わが家の2台のタイカンで起きた不具合と保証対応

タイカン ターボGTとクロスツーリスモ 4S

ターボGTと妻のクロスツーリスモ4S

正直に書けば、わが家のタイカンも無傷ではなかった。

私のタイカン ターボGT ヴァイザッハパッケージでは、左リアサスペンションのエラーが出たことがある。急速充電ユニットの故障も経験した。妻の4Sクロスツーリスモは35,000km以上を走っているが、こちらは普通充電ユニットとバッテリー制御モジュールが故障している。2台で合わせて4件だ。充電ユニットはEVの充電を担う要の部分である。そこ自体が壊れて充電がうまくできなくなったのだから、気持ちのいいものではなかったと言っていい。

ただし、いずれも保証ですぐに直った。ディーラーに預ければきちんと修理されて戻り、財布が痛むこともなかったのである。この8月にはタイカンをフェリーに積んで北海道へ渡り、EVでの長旅を楽しんだばかりだ。不具合があったのは事実と言える。それでも、手放す理由になるほどのものではなかったと断言できる。

EVへの偏見と様子見、そして「実績作り」販売とリセール崩壊

では、タイカンはなぜ売れなかったのか。

一つは、EVに乗ったことがない人があまりに多かったことだと思う。航続距離は足りるのか、充電は面倒ではないか、バッテリーはすぐに劣化するのではないか。乗る前から抱かれたそうした偏見が、様子見の空気を広げたのだ。実際にアクセルを踏めば、モーターの滑らかで力強い加速に驚くはずである。だが、その最初の一歩を踏み出す人は少なかった。

もう一つ、私はこちらのほうが本質的な理由ではないかと考えている。ディーラーの販売の現場では、GT3や限定車を買うための「実績作り」としてタイカンが売られた、と言われてきた。その結果、必要としていない人の手にまでタイカンが渡っていったのだろう。そうした人たちが早々に手放せば、中古車市場に出回る台数が増え、相場は崩れていく。リセールが悪すぎて、みんな新車で買わなくなったのである。

米国の中古相場データ(iSeeCars)では、タイカンは5年で約55%価値が下がり、残価はおよそ45%になる計算だ。しかも米国では10月、普段は値引きをしないはずのポルシェが、マカンEVに実勢平均3,600ドルの値引きと最大4,500ドル相当の特典を出している。タイカン自体の話ではないが、EVでは値引きに頼り始めたというブランド全体の兆候であり、中古相場をさらに押し下げる方向に働くだろう。

乗った人ほど評価が高いからこそ惜しい、中古タイカンが向いている人

だからこそ、私は惜しいと思うのだ。

EVへの偏見を持たずにちゃんと乗るポルシェ好きからは、タイカンはとても高く評価されている。
私の周りでも、走りの評価は群を抜いて高い。床下に敷き詰められたバッテリーが重心を下げ、前後のモーターが瞬時にトルクを配分するので、コーナーの入口でノーズがすっと内側を向くのだ。私のターボGT ヴァイザッハパッケージは、峠での俊敏性ならGT3をも凌ぐと感じる。991.2 GT3ツーリングや718スパイダーRSの所有経験から言っても、大げさな評価ではないだろう。

中古のタイカンは、リセールを気にせず、走りそのものを楽しみたい人にこそ向いていると思う。新車で買った人が背負った値落ちのぶん、ポルシェのEVの走りに手が届きやすくなっているのは皮肉な話である。

自宅で充電でき、保証が残っている個体を選べば、万一の不具合も心配しすぎる必要はない。ポルシェには、本当に必要としている人にタイカンをきちんと届ける売り方を望みたい。乗れば分かるクルマだからこそ、正当に評価される日が来てほしいのだ。

Hiro

Minaの夫です。 ファッションやステータスシンボルのためにクルマは乗りません。 運転して楽しく、工業製品として優れ、作り手の意思が感じられるようなクルマを...

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