タイカンE-Shift、海外試乗が出揃った。プログラムで構成されるギアは「しくじる楽しさ」まで連れてくるか
公開日:2026.10.06
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あの査定の日から、評価が出揃った
妻がタイカンの乗り換えを思いとどまった話には、ちょっとした続きがある。
経緯は妻の記事に書かれているとおりで、下取り査定の現実を前に、43,000kmを超えた4Sクロスツーリスモに乗り続けると決めた。同じ日、私は「E-Shiftとアクティブライド付きのタイカンGTSが欲しくなっている」とXにつぶやいていたのである。あれから数週間、欧米のメディアから試乗記が次々に届き、評価の輪郭がようやく見えてきた。
おおむね好意的だと言っていい。Auto Expressは「surprisingly convincing」と書き、プログラムであることを忘れさせるほどだと評した。evoも説得力を認めつつ、全開時の音はややゲームっぽいと付け加えている。Car and Driverは、実機の2速への切り替わりが約55mphで仮想2速の上端と同期している点に触れた。8回の変速のうち1回だけが本物という仕掛けは、乗り手にも違和感なく伝わっているようだ。

photo by Porsche Newsroom
速さは削られるのか
意見が分かれているのは、加速への影響だ。
ポルシェ公式は、変速の瞬間に駆動トルクを絞ってすぐに戻すため、全体の加速性能は変わらないとしている。Car and Driverもこの説明に沿い、加速を阻害しないと伝えた。一方のInsideEVsは、途切れないEVの加速をあえて断つ機能だと位置づけ、その一瞬の途切れの分だけわずかに遅くなるというニュアンスで書いている。
どちらが正しいかは、計測データが揃うまで断定できないだろう。私には、この差が数字よりも受け取り方の違いに見える。公道でコンマ数秒を感じ取れる人はまずいないはずだ。速さの議論の外側に置かれた機能だという一点では、どの媒体も一致しているのである。

photo by Porsche Newsroom
価格と、冷静な留保
お金の話も整理しておきたい。
日本でのオプション価格は、ポルシェの公式発表ベースで14万5000円。タイカン ターボGTには標準で備わる。英国についてはevoが、GTSやターボSで約750ポンドの追加になると報じた。またInsideEVsは、スポーツクロノやエレクトリック・スポーツ・サウンドなどが前提になると書いており、仕様の組み方しだいで実際の負担は変わってきそうだ。
気になったのはCar and Driverの一文である。仕上がりは良いが、めずらしさが冷めれば多用しなくなるかもしれない、と率直に書いている。さらにポルシェ側の早期見通しとして、装着率は50%未満だという。出来の良さと、使い続けるかどうかは別の話だ。この指摘には、私も頷くところがある。

photo by Porsche Newsroom
失敗できない変速機
981ボクスターGTSの6速MTで、シフトダウンをしくじったことは何度もある。
回転合わせが足りずにリアがぐっと沈み、背中にひやりとしたものが走る。だが、その小さな失敗があるからこそ、ブリッピングがぴたりと決まったときの気持ちよさが際立つのだ。718スパイダーRSはPDKだが、9,000rpmまで回るGT3ユニットのどこでパドルを引くかは自分しだいで、早すぎれば排気音が物足りなさを訴えてくる。
E-Shiftのマニュアルモードは自動でシフトアップせず、擬似レブリミッターに当てることができるという。つまり「引き遅れ」というミスは許してくれるわけだ。そこは素直に評価したい。けれどクラッチを滑らせる、回転を合わせ損ねる、ギアを入れ損ねるといった失敗は、構造上起こりえない。E-Shiftは、ミスのごく一部だけを許容しているのだ。
私自身はまだE-Shiftのを体験してない。最終的な判断は、自分の手で確かめてからにしたいと思う。ただ、内燃のポルシェから乗り換えて何かが物足りないと感じている人には、14万5000円は試す価値のある金額だろう。逆に、しくじりまで含めて変速を楽しみたいなら、MTのクルマを手放す理由はまだ見当たらない。
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