先日、現行型の718スパイダーの試乗記事を書いたところだが、今回はその先代にあたる981型のスパイダーの試乗記になる。

以前から、周囲に981スパイダーを持っている方は何人かいらっしゃったので、何度も見たことがあるし、よく知っているクルマという認識だった。また、わが家にある981型のボクスターGTSとも兄弟車であることから、とても身近に感じていた車種だった。

そのためか、逆にブログでわざわざ取り上げることもなく、今まできてしまい、今回が初めてのレビュー記事となる。

981型 ボクスター スパイダー

今回、試乗したのはとても美しいサファイアブルーの981型のボクスター スパイダーだ。981ボクスタースパイダーの多くは白が圧倒的に多く、たまに黒系があるくらいで、他の色はとても少ない。

サファイアブルーの個体となると、かなり希少な1台。

この色は当時のポルシェの公式動画でも、テニスプレイヤーのシャラポワ選手が乗っている動画があり、その印象が強かったので、個人的には『シャラポワブルー』と呼ぶほどに好きな色だ。

エンジン音やフィーリング

エンジンの始動音は981のボクスターGTSとよく似ている。かなり大きめの始動音でエンジンは吠え、やる気にさせてくれる。シフトレバーはショートストロークのもので、手首を軽くかえすだけで入るところは、最近のポルシェのマニュアル車と同じだ。

一速に繋いで走り出すと、981のGTSよりトルクフルだが、とは言え718スパイダーのマニュアル車ほどの楽ちんさではない。一般的なポルシェのマニュアルと同じような操作感だ。低速でユルユルと走り出しても、背中からもう既に快音が聞こえてくる。

歌うように滑らかで軽快なフィーリングの自然吸気エンジンは、981や991.1時代の特徴のひとつ。もう、40km/hで楽しい。笑みが溢れる。

718スパイダーの硬質でパワフルな回転フィーリングのエンジンに比べる、この981型はもっとフワーっと回るフィーリングのエンジンだ。スピードを上げて、スポーツプラスモードにし、エンジンレスポンスを最大化、PADMのエンジンマウントをギュッと締める。

981スパイダーはもともとPASMの設定がなく専用のスポーツサスペンションなので、モードによる減衰力の変化は無いが、ボディ全体が引き締まるような感覚になる。

スポーツエグゾーストからの排気音は回転に従いその音量と音域を上げていく。そして、3000rpmを超えたあたりからだろうか、音質や音量は981のGTSにとても良く似ているが、ここからの音圧が違う。

GTSより400cc多いエンジンは、もっとパワフルな排気音を背中から絞り出す。その時の音といえば、気持ちいいなんてもんじゃない。

昔、妻と一緒に981スパイダーが駐車場から発進して全開加速する音を間近で聞いたことがあるのだが、妻は今でも「あの音が私が知っているポルシェで一番の快音」と事あるごとにいう。私もその意見には賛同で、もしポルシェの限定車等を除くレギュラーモデルの快音ランキングがあれば、間違いなくTOP3、いや、個人的には1位と言っていい。

そのくらいの快音である。

このエンジンは、もともと911（991）のカレラSやGTSに搭載されているエンジンで400ps、GTSだと430psまで出せるポテンシャルを持つエンジンなのだ。しかし、スパイダーに搭載された時点でその出力は375ps（276kW）/6700rpmに抑えられている。

そのためか、最後の高回転域では少し回転の伸びが鈍くなるように感じる場面もある。これはカレラと同型のエンジンを積む981のGTSでも同じことが言えるのだが、このクルマの性格上、サーキットではなくワインディングロードが主戦場。そのため中回転域から高回転域のゾーンで楽しむ用途が多いので、ここはそれほど問題にならないのも事実である。

バブリング音について

あと、アクセルオフでの「ボボボボッ！」というバブリング音についても記しておきたい。これは981の中でもGTSとスパイダーでどちらがバブリング音が大きいか？という論争がよくあるのだが、今回、かなり慎重に比較したので、その論争に終止符を打ちたい。

バブリング音に関して言うと、GTSの勝ちである。音量はどちらもかなり爆音で、ほぼ同じか、GTSがたまに出す爆竹のような破裂音の分、ややGTSが大きいと思う。

そして、スパイダーは中回転以降ではバブリング音を頻繁に出すが、低回転域ではあまり出ない。

ここがGTSと違う点で、GTSは低回転域でも遠慮なく出す制御になっている。なので、バブリング音の音量こそ大差はないものの、バブリング音が出る頻度、回数が違うと思っていただくと良い。