メルセデス・ベンツ E200クーペに試乗|Sクーペとの違いやBMWのクーペとの違いなど

Eクラスクーペ(C238)
レビュー・試乗記

[TOC]

高級クーペ

私はEクラスのクーペというと、93年公開の映画「ザ・ファーム 法律事務所」にて、主人公のトム・クルーズが乗っていた300CEを思い出す。これはカブリオレではあるが、当時のメルセデスのミディアムクラス(W124の世代)の高級クーペであり、学生時代の私は強い憧れを持ったことを思い出す。

The Firm Mercedes-Benz 300CE

映画「The Firm」より

それから、ホンダのレジェンドクーペ(KA8)に乗ったり、最近ではR129のSL500AMG S63にも乗ったりしている。もともと高級ラグジュアリークーペは大好きで、定期的に欲しくなる衝動に駆られるカテゴリーのクルマだ。

E200 クーペ(C238)

今回、試乗したのは現行型Eクラスのクーペで、グレードはE200 クーペ スポーツになる。

実はこの先代のC207型、E250ブルーエフィシェンシーを購入検討していた時があり、試乗したこともあるのだが、当時の印象はあまり良くなかった。非常に薄くて固いシートに、低速でのトルク感の無さが自分の好みと合わなかった記憶がある。なので、今回はあえて期待を上げずに試乗したのだ。

実際に目にしてみると、とても優雅なクーペボディである。メルセデスの高級クーペらしく、Bピラーは存在しない。窓を全開にすると、流れるようなルーフラインと、ウィンドウの開放部の調和がとても美しい。

Eクラスクーペ(C238)

Bピラーが無いのでとても開放感がある

Eクラスクーペ(C238)の室内

Eクラスクーペ(C238)の後部座席

後部座席も十分な広さがある

長くて重いドアを開けて乗り込むと、シートの座り心地も良い。見た感じはやや薄めなスポーツシートに見えなくもないが、高級クーペに相応しい座面の厚みはある。ただ、Sクラスのクーペと比べるとさすがに分が悪い。あちらはもっと肉厚で、これでもかというくらいのボリュームがあるが、そこまでではない。

Eクラスなので、シート形状やデザインも含めてもう少しラグジュアリーなゆったりシートでも良いのでは、とも思う。機能面についてはベンチレーションこそないが、電動での可動部も多く、実用性に文句はない。

また、64色から選べる室内のアンビエントライト、さらには車内の香りを演出してくれるパフュームアトマイザーも装備されており、これはグローブボックス内にある香料のカートリッジを差し替えることで、好みの香り空間にできる機能である。

エンジン

エンジンはとても静かに始動。今回のクルマのエンジンは2リッター直4ターボで、184psを発生する。外で聞くエンジン音と、ステアリングに極わずかに伝わるザラザラとした微振動で、最初はとてもよく出来たディーゼルエンジンかと思ったが、これはガソリンエンジンである。

しかし、そんな印象も走り出してしまえば、吹き飛んでいく。アイドル回転以上では、エンジンの回転はスムーズで、とても下からトルクがある。1700kgを超えるボディを軽々と巡航スピードに乗せていく。このフィーリングはとても上質で、好感が持てる。ストップ・アンド・ゴーの多い街中でもこれだけ下からトルクがあれば走りやすいことだろう。

Eクラスクーペ(C238)のマフラー

Eクラスクーペ(C238)のメータパネル

エンジン音はいたって『普通』である。しかし、これはメルセデスへの最高の賛辞として言っている。あくまでエンジンは動力源に徹し、ドライバーに余計な意識を向けさせないというメルセデスの哲学を忠実に守っているエンジンのひとつと思ってよいだろう。

ドライバーは速度計さえ見ていればよく、エンジンの回転数やギア比などはどうでもよい。ドライブトレーンは黒子に徹し、確実に乗員を運ぶという仕事をしてくれるエンジンだ。

低速域ではとてもパワフルに感じるエンジンだが、ある程度の速度からの中間加速の力強さなどはあまり期待しない方が良い。もちろん、普通に走る分には何ら問題ないが、スポーティークーペとしての動力性能を期待するなら、E300やE400、さらにはE450などをオススメする。

乗り心地

乗り心地に関しても、常に一定のクオリティの乗り心地を味あわせてくれる。発進して、加速、そして舗装の綺麗な箇所も凹凸の多い箇所もあまり乗り心地に落差がない。

車格が違うので比べるのは少し酷だが、最近乗ったBMWの440iクーペについて言うと、走り出しや路面の整った場所での乗り心地はE200に勝っているように思うが、凹凸の多い箇所での振動や音は、舗装状態の良い路面での乗り心地が素晴らしく良いだけに逆にやや目立つ印象を受けた。

つまり、状況による乗り心地の落差が大きいのはBMWで、メルセデスは特別に素晴らしい乗り心地というわけではないが、どんな場面でも一定のクオリティを維持してくれているように感じた。

なお、この車両は純正のランフラットタイヤから、通常のタイヤ(ナンカン・NS-25)に変えられているが、オーナーさんに聞くと乗り心地は向上し、グリップ、静かさともに申し分ないとのことだった。

Eクラスクーペ(C238)のタイヤ

コンフォートモードでカーブを曲がると、どこからどう見てもメルセデスらしい挙動である。ステアリングの遊びが大きく、このままカーブ入ると怖いのでは?と一瞬思うのだが、カーブに入ってしまうと、全くそんなことはない。シッカリと4輪はアスファルトを捉え、素直なハンドリング特性で思った通りに曲がっていく。

少々スピードを出しても、ビクともしない。誰が乗っても安心してステアリングを握っていられるこの辺りの味付けはさすがであるとしか言いようがない。本当に素晴らしい。

新型国産車が出ると毎回のように「欧州車を超えたかも!」という試乗記事が出るが、走りに関しては私はまだまだ相当な差があると言いたい。そして、その快適なフィーリングは助手席でも感じられるようで、オーナーさんに横に乗っていてもらっていたが、少々ハイペースでも身体が大きく振られることもなく快適だ、とのことだった。

このスポーツモードは絶品である

次に、スポーツ、スポーツプラスモードにして走ってみる。すると、今までのフィーリングが嘘のように変わる。誤解を恐れずに言うと、『メルセデスがBMWになる』と表現したい。

もちろん、ポルシェのようなハンドリングになるわけでもないし、エンジンレスポンスが劇的に向上するわけでもなく、排気音が爆音になるわけでもない。おそらく、タイムを計測したところで、大した差はないだろう。

Eクラスクーペ(C238)

しかし、ステアリングの特性は大きく変わる。コンフォートモードでのステアリングの切り始めは、メルセデスらしくややダルな感触だが、これが見違えるようにシャキッとする。ステアリングを切ったら、切った分だけフロントが動き、ステアリングの操作から車体が動き始めるまでの時間がとても短くなる。

あれ?このサスは電子制御でしたっけ?」とオーナーさんに確認するが、「普通のサスのはず」とのこと。後で確認すると、このE200にはエアサスでも電子制御機能もない標準の「AGILITY CONTROLサスペンション」が装備されていた。

しかし、スポーツやスポーツプラスにすると、明らかにステアリング特性が変わる。サスペンションは電子制御ではないので、おそらくステアリングアシストのパラメーターが変わることで、この動きを作っていると思うのだが、その制御が素晴らしい。ここまでステアリングアシストの制御で上手く表現できるのはさすがである。

Eクラスクーペ(C238)

そして、四気筒エンジンによる軽い鼻先が相まって、ワインディングを気持ちよく、かつ快適に駆け抜けていく。もちろん、スポーツカーのようなビビッドなハンドリングとは言えないが、多くの人にとって『ちょうど良い』反応スピードと回頭性だ。私が感じるこのクルマの最大の魅力はここにあると言って良い。

総評

わかりやすい高級感に、誰が乗っても失望しない乗り心地、そしてハンドリング。特別、尖った点はないが、実用車としての最高の性能を持ったクルマだ。上位車種であるSクーペに比べると、さすがに乗り味の重厚感という点での違いこそあるが、快適性、静粛性、乗り心地ともに十分に満足できるレベルである。

またBMWと比べると、440iクーペの方がスポーティーはさすがに強いが、乗り心地の総合バランスの良さではE200が上のように思う。しかし、840iにはさすがに総合的に負けるといったところだろうか。

Eクラスクーペ(C238)

おそらく、このE200に関して言うと、街中では気軽に乗れて、週末はデートカーとして使いつつ、かつ、ワインディングでも軽快な気持ちよさを味わいたいという用途に最適ではないだろうか。一方で、ワインディングでの楽しさよりも、さらに高速での伸びやパワー感が欲しい場合、また、もっと重厚な乗り味が欲しいなら、E300以上、もしくはSクーペということになると思う。

私も最近は一台、高級クーペが欲しいと思っている。今のところ、BMWの4クーペ、もしくはR231のSLあたりで良いタマが無いかと検討していたが、今回、このEクラスクーペも候補に加えたいと考えている。

Hiro

Minaの夫です。 ファッションやステータスシンボルのためにクルマは乗りません。運転して楽しく、工業製品として優れ、作り手の意思が感じられるようなクルマを好...

プロフィール

このブログが気に入ったらフォローしてね!

コメントを閉じる
  • コメント ( 2 )

  • トラックバックは利用できません。

  1. mami

    おお~

    メルセデスのクーペは美しいですよね
    メルセデスは、「優秀で万能な執事」ですからね。
    出しゃばらず、かといって、気が利かないわけじゃない。

    運転していて「ご主人のおっしゃるとおりに、しかも快適に」といつも車に言われている気がします。

    ただ
    私のような素人は、フロントだけ見たら、どれがどれだか分からず、
    後を見て、「Eクラスだったか~」
    となってしまいます 苦笑

    私はちなみにc43カブリオレに乗っていて、
    この子はサイズも乗り心地も、加速も満点でした( *´艸`)
    雪道もへっちゃら
    機会があれば、もう一度乗りたいくらいです。

    • HiroHiro

      mamiさん、こんにちは。

      メルセデスは、「優秀で万能な執事」です

      その表現、とても共感できます!
      どこをどう走っていてとても安心感がありますよね。

      C43カブリオレは相当オールマイティーな感じなんでしょうね。
      オープンにもできて、加速も良くて、そして雪道もw
      雪道が走れるオープンはなかなか無いですからね!

      1