マカンターボ エレクトリック試乗レビュー|SUVであることを忘れる、もはや911並のフィーリング

マカン ターボ エレクトリック
レビュー・試乗記

マカン、マカン4に続いて最上位グレードへ

これまでこのブログでは、ベースのマカンマカン4の試乗レビューを書いてきた。
どちらも高評価だ。本当によくできたクルマだと今でも思う。ただ、あの2台に共通していたのは、パワーが控えめで、EVというよりガソリンエンジン車の延長線上にあるセッティングだったことだ。初めてEVに乗る方でも違和感がない。それがマカンとマカン4の美点だった。

マカン ターボ エレクトリック

今回、マカンターボ エレクトリックを丸一日借りることができた。

街中、ワインディング、高速道路と一通り走らせている。率直に言えば、あの2台とは別のクルマだ。
同じマカンという名前で括るのが申し訳なくなるほど、性格が違うのである。

走り出した瞬間に分かる、圧倒的な軽さ

乗り込んで右足をアクセルに乗せた瞬間、まず感じたのは軽さだった。

EVについて「軽い」と言うと、そんなわけがないとお叱りを受けることがよくある。
しかし、そういう彼らはほとんどEVを所有したこともなく、街中や一般道でしっかりと乗った経験もない。確かに物理的には重量があるので、そう反論したい気持ちはわからなくもないが、EVの場合、圧倒的に重心点が低く、かつモーターは1回転目から最大トルクという特性を考えると、一切、一般道では重さのネガなどは感じないのだ。

滑らかで、そして軽快。マカンもマカン4も重さを感じさせないクルマだったが、ターボはそれをさらに上回る。マカンエレクトリックの車両重量は2.4トンを超えているはずだ。それなのに、数字と体感が全く結びつかない。何がそうさせているのか、走り出してしばらくは不思議でならなかった。

アクセルの突きが実にいい。数ミリ踏むだけで思った通りに前へ出るが、レスポンスが良すぎて扱いにくいということは一切ない。右足に少し意識を向けるだけでクルマが前に進む、そんな感覚だ。タイヤのひと転がり目からトルクを感じる走り方で、ストップアンドゴーも、交差点を曲がってからの加速も、すべてシームレスにつながっていく。これは明確にマカン、マカン4とは違うセッティングだと思う。

マカン ターボ エレクトリック

余談だが、乗ったのは外気温36度から37度という猛暑日だった。エアコンが実によく効く。タイカンよりも、わが家のテスラ モデル3よりも効いている印象を持った。日本の夏を考えれば、ここは嬉しい点だ。

ワインディングでSUVであることを忘れる

街中を抜けてワインディングに差し掛かると、このクルマの本性が見えてきた。
とにかくよく曲がる。SUVに乗っていることを本当に忘れる。私が真っ先に思い出したのは911ダカールだった。911をオフロード仕様に仕立てた限定車で、車高が非常に高いモデルである。当然マカンのほうがさらに背は高いのだが、あの独特の身のこなしによく似たフィーリングを感じた。

ライントレース性は正確無比と言っていい。感覚としては1600kgから1700kg程度のクルマを転がしているような軽さで、S字で切り返しても揺り戻しが全くと言っていいほど出ない。バッテリーという重量物を床下に積むEVならではのメリットが、ここで一気に効いてくるのだ。上りの山道でこれについてこられるエンジン車は、走り屋のチューニングカーでも、ほとんど存在しないのではないか。加速は圧倒的で、アクセルのレスポンスは電光石火。もちろん変速など存在しない。一般道のワインディングでは、ガソリンエンジン車がどれだけ頑張っても運動性能で勝つのは難しいだろう。もはやシャシーのレベルが違いすぎる、というのが私の結論だ。

私の感覚では、981ボクスターGTSで飛ばし気味に走ったときとほぼ同じ速度域でコーナーも曲がれてしまう。ロールもしっかり抑えられ、コーナーでの不安が一切ない。大げさではなく、もはや911なのではないかと心底思った。

エアサスの最大のメリットは乗り心地ではない

エアサスと聞くと、柔らかそう、ふにゃふにゃしていそう、壊れそう、といったイメージを持つ方が多いと思う。
だが私が考えるポルシェのエアサスの最大のメリットは、乗り心地の良さではない。もちろん乗り心地もいい。ノーマルサスペンションが悪いわけではないが、エアサス装着車はもう一段階上質である。それでも本命は別のところにある。走行中に車高を変えられること、これに尽きる。

スポーツやスポーツプラスを選ぶと車高がかなり下がる。車高が下がるということは、重心点も下がるということだ。ノーマルサスペンションのマカンには物理的にできない芸当である。高速道路でも同じで、速度が上がると自動的に車高が下がっていく。スピードを出すほど路面に張り付くような感覚のクルマは多いが、ポルシェのエアサス車は物理的にも車体が下がって張り付くのだ。

いろいろなポルシェのSUVに乗せていただいた経験から、ひとつだけ声を大にして言いたいことがある。
足回りのオプションだけは、絶対に上位を選んだほうがいい。ノーマルサスよりPASM、PASMよりエアサス、最新のカイエンエレクトリックならその上にアクティブライドがある。他のオプションを削ってでもここにお金をかけたほうが、結果的に満足度は高くなるはずだ。

ターボだけが別物である理由

数字も確認しておきたい。
最高出力584PS(430kW)、オーバーブースト時には639PS(470kW)を発生する。最大トルクは1130N・mと4桁に達している。0-100km/h加速は3.3秒、最高速度は260km/h。一充電走行可能距離は最大591kmで、私がメーター内で確認したバッテリー100%時の航続距離は433kmだった。充電スポットの多い現在の日本の環境なら、これだけあれば十分すぎる。

マカン、マカン4との違いをこれほど大きく感じた理由を調べてみて、腑に落ちた点がある。ターボはモーターが異なり、リアアクスル周りの構造が全く別物だという。エアサスのチューニングも別物とのことだ。同じ名前を名乗っていても走りの土台そのものが違う。道理であそこまでスポーティーに走れるわけである。

マカン ターボ エレクトリックのブレーキ

ブレーキにも触れておきたい。ポルシェのEVなのでペダルは踏むものの、減速のほとんどは回生が担っている。一般道なら9割方は回生だけで済んでいる感覚だ。パッドがディスクを掴むのは最後に止まる場面くらいだが、それでもよく効く。かっちりしたペダルフィーリングで十分な減速Gを立ち上げられるし、コントロール性も申し分ない。

一方、乗り心地には少し気になる点もあった。エアサスなので基本は快適なのだが、タイヤの空気圧が高めのような、パンと張った感触が残る。自分で運転している分には全く問題ない。ただ、妻が運転して私が助手席に座ったときには、コツコツとした当たりや、わずかな跳ね感を覚えた。ここは空気圧とホイールのインチサイズの組み合わせでかなり変わる部分だろう。

ターボナイトのエンブレム

ターボナイトのエンブレム

1台ですべてを賄いたい人にこそ勧めたい

最後に高速道路も走らせてみた。
安定感は抜群である。現代のポルシェらしく、高速安定性はピカイチと言っていい。かなり安心して距離を伸ばせる。街中からワインディング、そして高速道路まで、これほどマルチに使えるポルシェもそうはない。ベースのマカンでは少し物足りないと感じていた方でも、ターボならポルシェらしさを満喫できるはずだ。

マカンというクルマは、私に言わせればSUVの枠から完全に外れている。スポーツカーだと思ってもらったほうが早い。歴代マカンがそうであったように、という前提はあるにせよ、EVになってシャシー性能が一段階上がったことで、ガソリンエンジンのマカンとは次元の違う場所に到達したと運動性能の面では感じている。

 

マカン ターボ エレクトリック

ただ、あまりにスポーティーであるがゆえの注意点もある。ポルシェの2ドアスポーツカー(911やケイマンなど)をお持ちの方からすると、あまりにスポーティなのでキャラクターが少し被って見えるかもしれない。そして2ドアと運動性能を比べてしまうと、さすがにケイマンやボクスター、911には敵わないため、せっかくの高性能な走りが見劣りして感じられる可能性も否定できない。

だからこのクルマが最も輝くのは、事情があってポルシェを1台しか持てないという方だと思う。
1台でスポーティーに走り、家族を乗せ、高速道路で長距離も走る。そんな1台を探しているなら、私はマカンターボ エレクトリックを勧める。最も多くの場面で使えるポルシェの1台、というのが今回の結論である。

Hiro

Minaの夫です。 ファッションやステータスシンボルのためにクルマは乗りません。 運転して楽しく、工業製品として優れ、作り手の意思が感じられるようなクルマを...

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