フォルクスワーゲン・ゴルフR(ゴルフ7)に試乗。素のゴルフと何が違う?

ゴルフR(ゴルフ7)
レビュー・試乗記

フォルクスワーゲン・ゴルフ

わが家にあったクルマで、手放してとても後悔したクルマがある。今でも「あのクルマは本当によく出来たクルマだったよな~」と妻と話すこともある。

それはフォルクスワーゲンのゴルフだ。

当時、乗っていたのはゴルフ7前期のALLSTARという特別仕様車で、1.2のベースグレードを少し豪華にした仕様になる。

毎日の通勤から、買い物、家族旅行に至るまで万能な働きでとても良くできたクルマだった。これぞコンパクトハッチバックの『メートル原器』ともいうべき性能で、エンジンのトルク、ハンドリング、ブレーキ、剛性、乗り心地、全てが満点と言っていい。

同クラス・同時期の国産車で、毎回のように『ゴルフを越えた!追いついた!』と自動車評論家が声高にレビューしているクルマにも乗ったが、個人的にはまだまだゴルフとは大きな差があると思った。それくらい、ゴルフというのは基本性能を妥協なく磨いたクルマだと思う。

ゴルフRのエンブレム

ゴルフR

今回、そのゴルフの最上級グレード、いや最強のゴルフであるゴルフR(ゴルフ7前期)に試乗させていただいた。

私が乗っていたゴルフに比べるとパワーは倍ほどある。最高出力は280ps/5100-6500rpm、最大トルク:38.7kgm(380Nm)/1800-5100rpmにも達する。これをハルデックスカップリングを採用した第5世代の4MOTIONで駆動するそうだ。

ハルデックスカップリングというと、昔からFFベースの車両に多く、フロントが滑ってから初めてリアに少し駆動が伝わる「なんちゃって四駆」のイメージがあったが、この世代のもは0:100まで可変に制御し、滑りを予知して事前に後輪にも伝えるようになっているとのこと。

ゴルフRのシート

エンジンをかけると比較的静かに始動し、普通のゴルフよりはやや勇ましい感じがするかな、という程度。走り出しはいたって普通。路面のザラつき具合は、ベースのゴルフよりはハッキリと伝えてくる。

ベースのゴルフはもっと滑るように走るが、こちらはタイヤの接地感が強く、力強く踏みしめて走る感じだ。

とはいえ、スピードが乗ってしまうと、そんな意識は無くなり、とても快適な普通のコンパクトカーに乗っている感じだ。唯一違うのは、排気音がそれなりに勇ましく、ボーという音がハッキリ聞こえる。

個人的には全く不快ではなく、むしろ好ましいが、静かさを期待して買った奥様などは嫌がるかもしれない。

ワインディングでの印象

ノーマルモードでカーブを曲がると、接地感はベースのゴルフより1段、2段、上だ。フロントの入りも良く、ズレなく曲がっていく様はスポーツカーそのもの。

以前、少しだけ体験したことがあるゴルフ7のGTIにとても良く似ている乗り味だ。

アクセルを踏み足していくと、急にゴルフRはその能力の片鱗を見せる。3000rpmを少し越えた辺りから、一気にトルクが盛り上がる。ベースのゴルフはフラットトルク型だが、ゴルフRは、ターボの過給によるトルク感の盛り上がりが凄い。

グッと身体がシートに押し付けられる感覚があり、ベースのゴルフでは決して味わえないトルク感だ。

ゴルフR(ゴルフ7)

やっぱ速いなぁ」と感想を漏らしながら、カーブをいくつも抜けていくが、ここまではそんなに『楽しい』クルマという印象は無い。

高性能なGTカーを運転している感じで、とりわけ感情に訴えかけてくる要素が少ないのだ。

レースモードでこそ本領発揮

途中でノーマルから一つ上のレースモードに変更してみる。サスペンションはグッと締まり、途端にシャシーのフィーリングが変わった。あたかも車高が低くなったかのような感覚で、路面にタイヤが吸い付くようなフィーリングだ。

これは結構、わかりやすい変化で、誰でもその変化を感じられるレベルだと思う。

6速DSGのシフト制御は高めの回転を維持し、ここからがゴルフRの本領発揮である。

こちらもシートポジションを整え、シフトをマニュアル操作に切り替える。

2速から3速へと、パドルを操作する。「ボンッ!」という音とともに変速は一瞬で終わり、思わず笑みが溢れる。これはかなり変速が速い。さすがはフォルクスワーゲン。デュアルクラッチ・トランスミッションの老舗なだけある。

某スーパーカーのシフトよりも全然優秀だ。素晴らしいレスポンスと、変速の音で、ドライバーの気持ちを駆り立てる。もちろん、不快な変速ショックなどない。シフトダウンの回転合わせも惚れ惚れする。

ゴルフRのタコメーター

タコメーターの針を12時前後に留め、パドルシフトを操作して上りコーナーを駆け抜ける。このくらいの回転数だと、ターボの過給も常に効いていて、とても扱いやすい。

パワー感もありすぎて、アクセルを踏めないというようなこともなく、日本の小規模な峠でも全然回して楽しめる。

四駆の安定感も素晴らしい。安心して冬の低温ドライ路面のコーナーでも踏んでいける。コーナーの出口が見えれば、ドライバーはもう踏んでいけばいい。あとは4MOTIONがよろしくやってくれる。

このレースモードでの運転はかなり楽しかった。もっと運転していたいという気にさせてくれるものだった。ノーマルモードの実直な運転フィーリングとは大きく違う。ゴルフRはこの『レースモード』にこそ、その真骨頂があると思う。

ゴルフR(ゴルフ7)

言うなれば、ゴルフRはミニ『カレラ4』

後で妻とも話したが、妻のクルマの好み的に、ゴルフRのようなクルマはドンピシャかもしれない。全天候型GTとしての性能に加え、高い快適性と安心感、そして運転の楽しさすら併せ持つ。これはもはや、ミニ『カレラ4』である。

もし、お手頃な価格でカレラ4のような(同じとはいわないが)運転フィーリングを味わいたいなら、ゴルフRはかなりオススメだ。四駆制御、エンジン、足回り、DSGの変速、ボデイ剛性、どこをとっても決して恥ずかしくない出来である。

さすがはゴルフ。これこそが一流の工業製品。真面目に手を抜かず走りの基本性能を究極まで高めた一級品、その最強グレードはぜひ一度試されるべきだと思う。

Hiro

Minaの夫です。 ファッションやステータスシンボルのためにクルマは乗りません。運転して楽しく、工業製品として優れ、作り手の意思が感じられるようなクルマを好...

プロフィール

このブログが気に入ったらフォローしてね!

コメントを閉じる
  • コメント ( 2 )

  • トラックバックは利用できません。

  1. inainaibar

    以前母親が6代目のゴルフ(1.2L)に乗ってまして、何回か運転させてもらった事があります。Rでもありませんでしたしそんなに期待せずに運転したのですが、正直かなり驚きました。え、これが1.2Lか・・・国産の同じクラスの車でこんなにしっかりした乗り味の車に出会った事がないなぁと。更に驚いたのは高速道路で移動した際の高速安定性です。本当にスーッと張り付くような走りで、価格が倍くらいする国産車より全然良かったです。Rもいつか乗ってみたいなぁ。ポルシェは言わずもがな。

    • HiroHiro

      inainaibarさん、こんにちは。

      これが1.2Lか・・・国産の同じクラスの車でこんなにしっかりした乗り味の車に出会った事がないなぁと

      まさに、私も同じことを思いました。まだまだ国産とは明らかな差があるように感じますね。
      Rはとても良かったです。ぜひ機会があれば乗ってみてください。もちろん、ポルシェも!