これぞポルシェの原点だ!ポルシェ356に試乗。911とも違う元祖の魅力

ポルシェ356
レビュー・試乗記

ポルシェ911との違いは?

途中で運転を代わってもらい、恐る恐る運転する。運転席に座り、一番印象に残っているのはハンドルだ。今の時代では考えられないくらい細く、大きい。とても細いので力が入りにくく、低速だと少し操作はし難い場面もあるが、慣れてしまえば問題ない。

ポルシェ356での運転風景

パーキングブレーキはハンドルの左下部分にあり、コラムシフトを操作するような動作で解除する。かなり軽めなクラッチを踏み、ゆっくり繋いでみると、意外と簡単に発進してくれるので少し拍子抜けしてしまったほどだ。

オーナーさんも「普通のクルマとほぼ同じ感覚で大丈夫ですよ」と言っておられたが、本当にその通りだった。

マニュアルのギアボックスは4速で、シフト自体は柔らかい感覚で各ギアに入っていく。かなりワイドなギア比構成で、かつ、パワーバンドがかなり高めなエンジンなので、2速で少し回しすぎかなと思って3速に入れると、回転が少し低すぎる。

芦有のワインディングような道を楽しむなら、3速を使う必要は無い。2速が丁度いいようだ。

ポルシェ356のシフトレバー

ストレートでやっと3速に入れ、巡航すると、本当にリズミカルな鼓動とかつ車内の雰囲気がマッチしていて、思わず笑顔になる。カーブの前でブレーキを踏み、2速に落とす。ブレーキは正直、少し頼りない。911と比べると、ここが一番の違いかもしれない。

ステアリングを切り、荷重が外側にかかりロールした姿勢に不安定さが一切ない。しっかりと路面を掴んでカーブを曲がっている感じがひしひしと伝わる。これぞポルシェだ。こんなに古いクルマでも、『ポルシェ味』はしっかりとするのだ。

この感覚は現代のクルマでもなかなか味わえない。なんとも言えないタイヤの接地感の高さからくる安心感。コーナリング中、スピードに呼応するようにステアリングの手応えがグッと増し、路面の状況、タイヤの状況がドライバーにしっかりと伝わってくる。

この特徴は現代のポルシェと全く同じ。

こんな半世紀以上も昔から、こんな素晴らしいセッテイングが出来ていたのかと思うと、ポルシェっていうメーカーは本当に恐ろしい。おそらく、当時の国産車などは足元にも及ばなかったに違いない。ポルシェの秘伝のタレはもうこの頃から醸成されていたのだ。

ポルシェっぽい乗り味はこの356でもしっかりと味わうことができたが、では911と同じような感じかと聞かれると、それは少し違う。

それはちょうど、現代の911とボクスター・ケイマンの乗り味が違うように、356と911は明確に違う。一言でいうと356の方が、普通の自動車っぽいという表現が正しいだろうか。もう少し補足すると「普通の自動車」というと面白みのないファミリーカーのようなイメージを持たれるかもしれないが、そういう意味ではない。あくまでも911と比べた時の話だ。

同じリアエンジンのクルマでありながら、911はもっと明確にリアに回転軸があり、立ち上がりのトラクションも強く、荷重のかけ方一つでどうにでも運転できる柔軟性と懐の深さがある。

それに比べると、356はそこまでのリアエンジンっぽさは薄く、あまり運転技術の差は出にくいように思う。もう少し敷居の低いスポーツカーと言ったら良いだろうか。

現代の911とボクスター・ケイマンのような関係とまで言うと言い過ぎだが、それに近い差はあるように思う。ボクスター・ケイマンのミッドシップレイアウトは、リアエンジンほど荷重を意識しなくても誰もがそれなりに早く走れる。そういう意味での違いに近いと思うのだ。

今回、356を初めて運転してみて、当時のポルシェのエンジニアリングの凄さをあらためて思い知った。今までも何度か古いポルシェは経験したが、乗れば乗るほど、さらに昔のポルシェはどうだったのか?という興味が湧いてくる。これが空冷ポルシェ沼なのだろう。

その沼に入ると出られなくなると言われるが、今回、あらためてその沼の深さを思い知らされた経験であった。

Hiro

Minaの夫です。 ファッションやステータスシンボルのためにクルマは乗りません。運転して楽しく、工業製品として優れ、作り手の意思が感じられるようなクルマを好...

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  • コメント ( 4 )

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  1. ウーパー

    Mina様

    「飛ばさなくても楽しい」クルマ。
    ホントにそうですよね!

    これで走っていると、不思議と飛ばそうとは思わないし、
    のんびりゆったりで満足します。
    平和な気分に浸れます。

    それと、ボディの堅牢さには私も驚きます。
    大昔の車なのにドアを閉めると964や993の空冷と同様の
    カキーンという音を初めて聞いた時には予想外のできご
    とに感心したものです。

    GT3なんかで飛ばした後にクルマを降りると、いっその
    こと最近の車はみんな手放して60年代か80年代の車に絞
    り込んでもっとシンプルに生活したいなとよく思います…
    って全然手放せなくてむしろ増えてるんですけどね、実
    際には(苦笑)

    • MinaMina

      ウーパーさん
      356,乗ってみたいです…

      >これで走っていると、不思議と飛ばそうとは思わないし、
      のんびりゆったりで満足します。
      平和な気分に浸れます。

      飛ばさなくても楽しいって、究極に楽しいクルマなんだろうなぁと思います。
      そしてそれだけしっかりしたクルマを、はるか昔に作っていたポルシェは、
      本当にすごいのだなぁと改めて思いました。

      >って全然手放せなくてむしろ増えてるんですけどね、実
      際には(苦笑)
      悩ましいですね(笑)

  2. Nak

    Minaさん、こんにちは。

    先日ある山で白の356SCに会いました。
    お年寄りのご夫婦が乗ってらっしゃったのですが、コンクールコンディションで大切にされてるんだな、と感じました。
    エンジンも拝見させてもらいましたが、4気筒1600ccも今の車のようにいろんな補器などついてないので実にシンプルでした。
    なんだかんだ古いクルマなので手がかかって、先日は退院して久しぶりのドライブとのことでしたが・・・
    思わずパーキングが出て行かれるのを追いかけて、ドライブレコーダーで録画してしまいました(^^;
    50年以上前の車にも関わらず結構キビキビ走っているのが印象的でしたね。

    今週末FSWにいらっしゃるんですね。
    ただ、噂にたがわず?今日時点でFSWは雨予報のようです。
    こんな状況でなければオフ会などもできたかもしれませんね。
    ご主人、ボクスターで2分5秒代であれば2分くらいで回れるかと。
    私はもう10年以上走っていませんが、343PSのM3で2分1秒代は出てましたので(^^;

    • MinaMina

      Nakさん
      こんにちは。その後、ポルシェライフはいかがでしょうか!?

      >先日ある山で白の356SCに会いました。
      おぉーそうなのですね!!
      私も、古いポルシェを、年を重ねて髪の毛が白くなっても夫婦で乗り続けてドライブに行くのが、
      夢です。
      すごく大切にメンテナンスされて、乗られているんだろうなぁと思いました。

      >今週末FSWにいらっしゃるんですね。
      今、まさに富士なのですが、台風のようです…^^;
      何度も赤旗になり、30分の走行枠2本でしたが、おそらくあわせて4,5周くらいしかできていんかあったと思います…

      昨年の走行会は、私は行っていないのですが晴れていたそうで
      (一昨年は私も同行したら大雪でした)
      次からは、私は同行しないようにしようと本当に思いました(笑)