ノーマル911 vs GT3、公道でどちらが楽しいか|「楽しさの総量」で考える私の答え

ポルシェ911 GT3(997)のリアエンブレム | 車, エンブレム, PORSCHE, 911, 991
レビュー・試乗記

読者からの質問が、この記事の出発点

このブログには、開設以来5,000件を超えるコメントが寄せられてきた。
その中には、ポルシェオーナーやポルシェに憧れる方々の率直な声が詰まっている。

今回はその中で、過去にいただいたコメントの中から、一つのテーマを取り上げてみたい。

改めて考えさせられたのは、ポルシェ911 GT3の購入を検討されている方へのアドバイス へ寄せられた、けいさんからの質問だ。「国道やバイパス道路レベルの60〜70km/h走行が主の公道においても、ノーマルの911の方が楽しめるでしょうか?」。これは多くの購入検討者が抱える、本質的な問いではないかと思う。

私は991.2 GT3ツーリングを所有していた経験がある。今は718スパイダーRSや981ボクスターGTS、964カレラ2などを乗り継いでいるが、「公道で楽しいのはどちらか」と問われたら、私の答えは明確にノーマルの911だ。ただし、これには但し書きが必要となる。場所を選べば、GT3も間違いなく楽しい。今回はそのあたりを、私自身の体感を交えて整理してみたい。

ポルシェGT3 | 車, 建物, 石碑, 空, 駐車場, 屋外, PORSCHE, 911, 991

市街地では、GT3は苦痛でしかない

都内や市街地でGT3に乗ると、率直に言って苦痛である。

ここで言う苦痛とは、乗り心地が悪いとか、クラッチが重いとか、そういう話ではない。クルマの性能をほとんど発揮できないフラストレーションのことだ。GT3はあのエンジン音を聞きたくても、聞こえる回転域まで回す前に、とんでもないスピードに達してしまう。せっかくのエンジンが、街中では「持て余す塊」になってしまうのだ。

足回りも同じである。ガッチリ締まったサスペンションのコーナリング性能を確かめたくても、信号と制限速度の連続する市街地では、その入口にも立てない。私が991.2 GT3ツーリングで近所を走っていた頃、「このクルマで何をやっているのだろう?」と感じる瞬間が確かにあった。GT3に乗っている自分を見てほしいという自己満足だけなら、それはそれで成立する。しかしポルシェの本当の良さを味わうという意味では、市街地のGT3はほぼ何も伝えてこないと言っていい。

ポルシェ911GT3ツーリング | 車, 山, 空, 雲, 道路, 屋外, 展望台, 駐車場, PORSCHE, 911, 991

条件が整ったワインディングでは、GT3の楽しさは別格

一方、舞台が変われば話はまったく逆になる。

早朝の交通量が少ないワインディングロード。路面状況が良く、視界も開けている。そんな条件が揃ったときにGT3でエンジンを回し、思い描いた通りのラインでコーナーを抜けられた瞬間、アドレナリンの上がり方はノーマルの911とは比較にならない。ステアリングからの情報量、足回りが路面を捉える感触、エンジン音が空気を震わせる感じ、そのどれもがノーマルとは別世界となる。

これがGT3というクルマの本質ではないかと思う。GT3はあくまで刹那的な楽しさのクルマだ。条件が整ったときの楽しさのピーク値、その絶対的な高さでは、ノーマルの911には絶対に出せない領域へと連れて行ってくれる。私が991.2 GT3ツーリングを手放したあとも、あの一瞬の感覚は今でもはっきり覚えているくらいだ。

車, 道路, 木, 森, 公道, 自然の中, PORSCHE, 911, 991

ノーマル911は「ずっと楽しい」という強さを持つ

では、ノーマルの911はどうか。

こちらは、街中の交差点からワインディングロードまで、まんべんなく楽しい。エンジンをかけて駐車場を出る瞬間から、停車するまでの全行程で、何かしらの気持ち良さがある。大きなピークはないが、楽しさのベースラインがずっと高い位置にあり続ける。だから乗っていてストレスがほとんどない。「いくら乗っていても乗れる」、そんな感覚に近い。

これは私が964カレラ2を所有していて強く感じることでもある。古い空冷の911だが、街中の信号待ちで止まっているときも、流れに乗って走っているときも、峠でアクセルを踏み込んだときも、それぞれの場面に応じた楽しさがある。クルマがドライバーを置いてけぼりにしないのだ。最新のノーマル911も性格は違えど、この「日常から非日常まで一台で完結する」という思想は受け継がれていると感じる。

ポルシェ911 | 車, 道路, 駐車場, PORSCHE, 911, 992

楽しさの総量で考えると、グラフの形が違うだけ

こうして整理してみると、面白いことに気付く。

GT3とノーマル911、楽しさの総量で見れば、実はそれほど変わらないのかもしれない。ノーマル911は平坦で高めのグラフ、GT3は数箇所に鋭いピークを持つ山型のグラフ。形はまったく違うが、面積で見れば似たような大きさになる。コメントへの私の答えは、こうなる。「60〜70km/hが主の使い方なら、間違いなくノーマルの方が楽しい。だがGT3には、ノーマルでは絶対に到達できない一瞬の高みがある」。

GT3とノーマル911の楽しさのグラフ

結局のところ、自分がクルマに何を求めるかで答えは変わる。日々の通勤からドライブまで一台で楽しみたいならノーマルの911が圧倒的に優れている。月に数回でいいから、刹那的な絶頂を味わいたいならGT3こそが正解となる。
ポルシェというメーカーは、見事にこの両方の正解を用意してくれている。なので、ポルシェの場合は上位グレードだからといって全てを包含するわけではないということを覚えておいてほしい。また下位グレードだからといって楽しさが足りないとかそういう話ではないということなのだ。

Hiro

Minaの夫です。 ファッションやステータスシンボルのためにクルマは乗りません。 運転して楽しく、工業製品として優れ、作り手の意思が感じられるようなクルマを...

プロフィール

このブログが気に入ったらフォローしてね!

コメントを閉じる
  • コメント ( 0 )

  • トラックバックは利用できません。

  1. この記事へのコメントはありません。