メルセデス・ベンツSL500(R129)を半年間所有した夫の総評は?

レビュー・試乗記

964カレラ2がやってきた

この前の金曜日に、ようやく空冷ポルシェ(964カレラ2)がわが家にやってきた。仕様や実際乗った感じのレビューについては、追ってまたブログで紹介しようと思う。実はこの空冷ポルシェがやってきたことで、今までわが家にあったメルセデス・ベンツSL500(R129)とはお別れすることになった。

SL500(R129)

というわけで、今回は名車と呼ばれるSL500(以下、R129)を約9ヶ月所有した夫の感想を紹介したい。

メルセデス・ベンツ SL500 (R129) 総評

購入後の走行距離は、約4000km。ロングツーリングから、日常の足、通勤、ワインディングと、夫は様々なシチュエーションでこのR129を運転した。(私は3回くらいだけ運転した)その中で、このSL500について夫が特に印象に残っている部分や総評は以下の通り。

①柔らかいのに粘るサスペンション

初めてこのクルマに乗った時、夫は「なんて柔らかい足なんだ」という印象を受けたそう。普段ポルシェに乗る機会が多いので余計にそう感じたとはいえ、それを差し置いても「柔らかい部類だと思う」と夫は言っていた。具体的には、

高級ホテルのロビーや廊下などに敷いてある厚めのカーペットの上を歩くような感覚

という表現が近く、まるで道路に一枚カーペットが敷かれているような感じだそうだ。といっても、国産高級セダンのようにただ柔らかくフワフワとした乗り心地では決して無い。柔らかいのに、ダンピングはしっかり効いていて、フラットな乗り心地だったという。

夫はこのR129に乗ってロングツーリングやワインディングロードに出かけていたが、ワインディングなどを走る前は正直「こんなに柔らかくて果たして大丈夫か?」と思っていたそう。ところが、実際はどうだったか。

「最初は不安やったけど、いざコーナーに飛び込むと、比較的ロールは許しながらも、接地感、グリップ感が途端に出てくるんや。グッと路面を掴み、外側のタイヤに適度な荷重をかけながら、破綻なくこなしてしまう。あと、普段の運転ではハンドルの遊びが多く頼りない感じがするのに、路面に落ちている障害物を避けるために急ハンドルを切った時にはちゃんと俊敏に動くし、その後は何事もなかったかのように元のラインに戻る。
いつも思うけど、ここが、メルセデスの凄いところやと思う。」

夫がいつも思う「メルセデス・ベンツの凄いところ」とは、

「柔らかく、しなやかなのに、いざとなればちゃんと曲がり、ちゃんと走り、ちゃんと止まる。」

ところだそう。よく「メルセデス・ベンツや欧州車は安全だ」と言われるけれど、それはボディの固さからくる衝突安全性だけではなく、「運動性能の高さによるアクティブ・セーフティの能力があるからこそ、危険回避の確率が高く、より安全だということだ」と夫は力説していた。

②重厚感とドア

R129は「昔ながらのメルセデスの味を受け継いだ最終世代だ」と言われているが、本当にそうなのか、夫に聞いてみた。

そうやと思うわ。ドアの重みは重厚やし、現代のSクラスクーペやSLなどとは全く違う。ドアの閉まり音も『ガシャ!』っという感じで金属音の比重が大きい。トランクや操作系の各種スイッチ、全てにおいて重厚で「ON/OFF」がハッキリしていて、「こうあるべき」という作り手の意思すら感じられる気がしたわ。
運転している時も、その重厚感が「安心感」「安定感」に繋がってると思う。高速道路での安定感は言うまでもないし、追越し車線をリードするくらいの速度なら何も起きひん。20~30年前のクルマとは思えない安定性や。まさに長距離グランドツアラーとして最適なクルマやと思う

と大絶賛していた。

SL500(R129)

③M119エンジン V8の咆哮

わが家のR129は中期型で、SOHC(Single OverHead Camshaft)になる前のM119型。1980年代にデビューし、高い安全性と走行性能を与えられ、オーバークオリティと評された名車「W124」のE500/500Eにも使用されたエンジン「V型8気筒DOHC4,973cc」が搭載されている。

夫はこのM119エンジンについてこんな風に言っていた。

ほんまに名機やと思う。320ps(235kW)/5600rpm、48.0kg・m(470.7N・m)/3900rpmやから、今の時代の基準からすると「5LのV8にしては控えめなスペック」なんやけど、素性は非常にええんや。

このエンジンをツインターボで武装したものが、1989年のルマン24時間優勝車のザウバーC9や、1991年のMercedes-Benz C11にも使われてたんやで。

と。

…ザ、ザウバー!?…C11?(*_*)(こんなところに初耳ワードをぶっこんできたか!)

少し調べてみたところ「C11は、1987年、スイスのペーター・ザウバー率いるザウバーチームにより、WSPCへの参戦を目的にグループC規定で製作されたレーシングマシンで、1989年のル・マン24時間レースでは決勝レース中に最高速度400km/hを記録した」そうだ。

…時速400kmって…(;゚Д゚)

「でもこのエンジンは、街中でその素性を主張することは一切なくて、粛々と仕事をこなしている感じなんや。でもいざアクセルを深く踏むと、瞬時にトルクが立ち上がる。このピックアップの良さは最近のターボ化されたV8では味わえへんわ。現に、今のパナメーラターボと乗り比べると、2速や3速でグッと踏んだ時のトルクの立ち上がりの早さは、NAだけあってSL500(R129)の方が明らかに早いと感じる。

とのこと。さすがはNA。現在のターボは、ずいぶんとターボラグが解消されていると言われているが、やはりNAには敵わないのかなぁ。

エンジン音に関してやけど、ワインディングを走る時、中~高回転まで踏み込むと、やっとV8らしい咆哮を聴かせてくれるんや。絶対的な音量は静かなんやけど、ビート感と緻密なメカニカルノイズはすごい気持ちが良いし、クルマのエンジン音の良し悪しは音量だけではないということを改めて教えてくれたクルマやわ。

とのこと。なんだか、聞けば聞くほど名車だったんだなぁ。

④ハードトップ、オープン、ソフトトップと3つの味を楽しめる

このR129には、標準でハードトップが付属されている。このハードトップはかなり大きい上に非常に重く、約34Kgほどあるので、一人で脱着するのは困難。わが家も毎回、夫婦2人で両側を持ち、やっとこさ脱着していた。(Youtubeには一人でやる方法を紹介している人もいるが、絶対やめたほうがいいと思う。確実、ボディに傷つけると思う)

ハードトップ装着時

このハードトップを装着した状態では、完全なるクーペスタイルを楽しむことができる。静粛性も上がり、なんと言っても、ボディがしっかりする。もともとSLは非常に堅牢なボディを持っているクルマだが、現代のボクスターなどのオープン2シーターと比べると、やはり多少のボディの緩さを感じてしまう。

メルセデス・ベンツSL500(R129)

それが、ハードトップを装着することで「走りの質感も1段階上がる感じがする」と夫は言う。夫は個人的には、R129はこのハードトップを装着した姿が一番好きだそうだ。

オープン時

一方、ハードトップを外してオープンにすると、開放感あふれるクルマに早変わりする。もとから風の巻き込みは少ない方だが(私もオープンで運転したことがあるけど、特に気にならなかった)オプションのウインドディフレクターを付ければ、さらに巻き込みは少なくなり、快適性が劇的に増す。

981ボクスターは比較的風の巻き込みが多い車種だと思うけれど、

ボクスターに比べると、R129は1/3から1/4くらいの巻き込み量とちゃうかな。

と夫は言う。

SL500(R129)

「でも、オープンで走ると、余計にボディのゆるさを感じるんじゃないの?」と聞いてみたところ、

「オープンで走ると、逆にボディの緩さが気にならなくなるし、むしろ路面の衝撃をうまくいなしてくれる緩衝材になってくれているように感じたわ。滑らかでスピードを出さなくても気持ちが良いし、淡々とクルージングするような運転スタイルに最適や。

とのことだった。

ソフトトップ装着時

ソフトトップもこれまた非常に良くできていて、ちゃちい(関西弁で安っぽい)感じは一切しなかったとのこと。金属製のしっかりした太い骨組みに厚手の幌が取り付けられていて、高速でもバタつきなどはほとんど感じなかったそうだ。

SL500(R129)

当時のカーグラフィック誌で「月面着陸より高度な技術」と称された12個の油圧シリンダーが、約30秒ほどで全自動で開閉してくれる。
ハードトップほどの静粛性や耐候性は無いけれど、ソフトトップだからといって不快に感じることは全く無く、ロングツーリングでもなんら不満は無かったとのこと。

⑤最善か無か

R129を一言で言うなら、”The best or nothing”、日本語で「最善か無か」と訳されているメルセデスの哲学を色濃く残したモデルやと思う。

と夫は言う。

あらゆる装置、装備、機構がコストの塊で、今では考えられないような高度な機構を多く持ってるわ。複雑な油圧ソフトトップの全自動開閉システムから、エア制御のドアロック機構、重厚なドア、高精度なバランスを持つ純正ホイール、メインフレームに直接溶接されたサブフレーム…挙げればキリがないけど、コストは二の次で「最善」を尽くしていることがよく窺えるクルマや

とのこと。

総評は?

というわけで、夫の総評は以下の通り。

今回、所有したことで、コストがかかっているとはどういうことなのか、といったことが非常によくわかり、自分自身のクルマに対する価値感や視野すら広がったように感じます。R129は今では個体数もかなり少なくなり、海外での値段の高騰もあり、海外流出が止まらないSLですが、メルセデス好きな方にはぜひ一度、所有してもらいたい名車です。

なるほどなー。こんな名車が海外にどんどん流出しているとはもったいない。今回のR129についても、次も大事に乗ってくれるオーナーさんと出会えるといいなぁと思う。

Mina

ポルシェブログ「ポルシェがわが家にやってきた」管理人、3児の母。数年前までは、車に全く興味が無かったが、夫がポルシェを買ってきたことをきっかけにポルシェの素...

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Hiro

Minaの夫です。 ファッションやステータスシンボルのためにクルマは乗りません。運転して楽しく、工業製品として優れ、作り手の意思が感じられるようなクルマを好...

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  • コメント ( 2 )

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  1. もうすぐカイエン納車

    そう言えば、上記のSLを元に開発された500Eはポルシェ製だそうですね。
    ※開発やチューニングもポルシェ担当だったそうです。

    • MinaMina

      もうすぐカイエン納車さん
      コメント頂き有難うございます!

      >そう言えば、上記のSLを元に開発された500Eはポルシェ製だそうですね。
      >※開発やチューニングもポルシェ担当だったそうです。

      そうなのですね!きっとすごい名車なのでしょうね…
      いつか乗ってみたいです。

      それにしても、「もうすぐカイエン納車」というペンネームが気になって仕方ありません…w