高速道路でのアルファード

場所を高速に移して、高速道路での挙動を確かめてみる。走行車線を走る速度域では、ずば抜けて快適だ。特に交通量の多い状況の阪神高速などでの快適さは素晴らしい。

クルマが「もっとリラックスしてください」「もっとダラケてください」と言っているような感覚に陥る。

ポルシェだと、どんな状況でも常にハンドルは両手でしっかりと持ってしまうが、アルファードは気づくと、ハンドルの一番下の部分に軽く手を添えてるような運転スタイルになるのだ。これには自分でも驚く。

普段は絶対にそんな運転スタイルはしないのだが、なぜか、アルファードにはそうさせてしまう力があるようだ。

帰り道、高速でかなり渋滞していたのだが、まったくストレスは感じない。とても快適な移動空間で、本当に素晴らしい乗り物だと思った。

追越車線で少しペースを上げても、直進安定性はかなり良い方だと思う。ちゃんと真っ直ぐ走るクルマで、ステアリングの微調整が必要なんてことはまったくない。タイヤノイズもかなり抑えられており、快適そのもの。少し飛ばし気味に高速カーブに侵入してしまっても、難なくこなしてはくれるし、「お、意外とよく走るなぁ」というのが感想だ。

しかし、落ち着いて分析すると、ボディのしっかり感やタイヤの接地感などは希薄だ。ビシッと走るというタイプのクルマではない。しかし、それなのになぜ安定して感じるのだろう？と考えると、それは、車外のノイズやステアリングに伝わる情報を上手く遮断しているから安定しているように人間には感じるのではないかと思う。

高速域でのエンジンパワーは、十分で普通に走る分には特に困ることはないだろう。ただし、新東名の120km/h区間の追越車線をリードして走るような状況などは、ちょっと意識的にアクセルを踏み続けないと空力的に減速しやすいように思う。

あと、高速で気になった点がある。それはブレーキだ。正直、プアだと思う。この重量の物体を止めるなら、もっと高性能なブレーキが欲しい。踏んでも、減速の立ち上がりが遅く、摩擦の少ないパッドのブレーキで走っているような印象だ。

もし、高速で目の前に事故が起きて、フルブレーキングしながら避けるみたいな状況を想像すると、ちょっと怖い。大勢の家族や仲間を乗せるクルマだからこそ、ブレーキにはもっとコストをかけてほしいものだ。

アルファードの後部座席

ここまでドライバーの立場で走りについて語ってきたが、アルファードなので、後部座席の紹介もしてみようと思う。このエグゼクティブラウンジは、2列目が二人がけの豪華シートになるが、これが本当に素晴らしい。

足元の広さは十分以上。オットマンもあり、シートも大きく、大人の男性でも十分に余裕がある。リクライニングもかなり倒すことができ、飛行機のビジネスクラスとまでは言わないが、新幹線のグリーン車よりも快適だ。

2列目シート。このシートはとても良い。

テレビも天井に装備されており、シートベンチレーション、ヒーターも当然ながら完備。手元のスイッチでシートポジションは自在に動かせる。カップホルダーの位置も良く、これは本当に快適だ。もし、アルファードを買うことがあれば、絶対に後ろに座りたい。そう思わせる装備の数々だ。

ちなみに三列目も全然座れる。2列目を標準的な位置にしても十分に余裕があり、コンパクトカーの後部座席よりも快適ではないかと思うくらいだ。

肘掛け部分に操作スイッチが備わる

十分な足元スペース。オットマンを使うと楽。

2列目座席に備わるテーブル

後部座席用モニター

3列目シート

総評

街中、ワインディング、高速と試乗したが、アルファードは日本の道路環境では、最高の乗り物だと思う。トヨタは日本の標準的な道路環境の速度域に焦点を合わせ、ドンピシャでチューニングしてきているように思う。「楽しさ」の快適性ではなく、「おもてなし」の快適性とでも言おうか、それを突き詰めたクルマだ。

今回、アルファードに乗ってみて、一つ感じたことがある。それは、少し前にメルセデスのGLSに試乗した際、GLSに期待していたのは、このアルファードの乗り心地だったのではないかと思うのだ。低速域でのゆったり、しっとりとした上質さ、高級感を期待していたのだと今になって思ったのだ。

今回のアルファードは、そのくらい上質で高級な乗り心地を提供してくれる。大げさではなく、日本の街中の速度域ではSクラス以上ではないかと思う。

もし、走りは二の次で、とにかく楽で快適、そして後部座席に座る乗員も楽しめるクルマとなると、このアルファードは最強のクルマの一つだろう。アルファード。売れてる理由がよく分かった今日このごろである。